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第七章:『闇乃宮五ノ闘戯場/黒雷武神ナルカミノミヤ』

【第55話】

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 第五闘戯場、箱庭異世界内。
『コワス……コロス クラウ……スベテ、スベテ』
 その核となった瘴怨刃サカサに残留していた微弱な死亜女ルイの思念と巨大魔力球ボディを構成する頭脳派五武神ナルカミノミヤの魔力の相互干渉変異により自我のようなものが芽吹きつつある天空の支配者・黒雷球。
『シロ、キライ シロ、キケン シロ、キライ シロ、キケン』
 その覚醒のきっかけとなった、本能的嫌悪感をもよおす白魔力塊について今後の自己防衛のためにその消失危機と言う恐怖の記憶を敢えて反復学習していたその時だった。

『デカブツ!! うるせえぞ!!』
『!?』
 そんな反復学習の最中、何の脈絡もなく自身(?)を罵倒する何かに気が付いた黒雷球。
 まさに先刻、自身を消滅させようとしたシロで全身を覆い、突撃して来る3つの高速飛翻体。
『……ピギャアアアアアア!!』
 これらを近づかせる事、すなわち、『死(消滅)』と瞬時に判断した黒雷球はすぐさま全身を震わせる。
『コクライランゲキ』
 再度、無差別攻撃として放たれる黒雷乱撃。
「今のは詠唱か!? あの口裂けパック〇ン、まさか……」
『ヴォルテックフィールド!!』
 戸惑う茜の横ですぐさま雷マョイガエレメント防壁生成する須田丸。
 探のエレメントプラス・ホワイトフレアを上乗せされたそれは一気に広がって巨大なオーロラとなって3人もろとも箱庭異世界の全てを覆い隠す。
「須田丸ナイスだ!!」
 自身の同ェレメント相殺効果&探の闇魔力無効化の騒擾効果でコクライランゲキを完封した須田丸にサムズアップする茜。
「茜さん!! あの技で一気に行くぞ」
「ああ、久方ぶりの二大氏族合体奥義だ!!」
 そのまま空中で身を寄せ合い、お互いの正面からがっしりと腰に手を回す探と茜。
「この構えは……」
『ダブルエレメントロケット!!』
 かつて2人がマヨイガの試練で最後のカミイクサとなった巨大怪鳥ゴブガミ戦で用いたあの合体奥義。
 火と風の二大マヨイガ神紋の巨大な魔力と言う動力源に神炎ホワイトフレアによる完全防御と風となり天を翔ける『空』と言う二大迷処七天賦奥義を上乗せ。
 かつて若き日に編み出した原理そのままでありながら、超進化したそれはマヨイガ二大氏族合体奥義と言う通り名に恥じぬ力で一気に天頂に君臨するそれめがけて急加速。

 合体奥義で須田丸の張ったオーロラシールドを突き抜けた2人はホワイトフレアで集中砲火を浴びせて来る雷を弾きつつ直進。
 そのまま黒雷球を内部に入り込んで崩壊させるべく威圧的な乱杭歯が幾重にも生えた口腔を恐れる事無く突き進む。

(サケラレヌシトメラレヌ……カクナルウエハ!!)
 ごく短時間の手合わせでありながら大嫌いなシロ、探のホワイトフレアの特性をある程度把握していた黒雷球消失と言う名の死と言う自身にとって最悪の結末を回避すべく必死で思考。
 相手は自身の魔力攻撃を無効化するとは言え、目の前でこちらに飛んでくるアレは内部にそれを操る本体(?)とでも言うべき使い手が入っている状態だ。
 ならば強力だが回避されるであろうダークレーザーで無理に迎撃するのではなく、敢えて乱杭歯の中に誘い込んで一気にすりつぶしてしまえば魔力無効化もクソも無くひき肉に出来てしまうのでは……。
 イチかバチかの策に出た黒雷球は大口を開けたまま自ら突っ込んでくるシロに向かって行く。

『させるか!! ダークホール!!』
『ウアッ!?』
 そんな中で自身の上下に出現する巨大な闇渦。
『閉じてろデカブツ!! ギガントアムド!!』
 続いてその穴から現れる超巨大鉄塊。
「須田丸君にヤミネコ!!」
『助太刀いたす、総大将殿!!』
『雲隠アニキの邪魔は俺がさせねえぞ!! 食らいやがれウドの大玉!!』
『ギガントラッシュ!!』
『オガガガガガガ!! ギャアアアアアアア!!』
 上下からリズミカルな猛速ピストンパンチを喰らわせて来る超巨大鉄拳になすすべも無く叩き潰される一方の黒雷球。
 物理物質ではなく魔力で構成されているボディであるが故に物理ダメージは微々たる物だが、それに上乗せされた 『シロ』 の魔力を中心部まで浸透する衝撃として叩きこまれ続けるのは流石にまずい。
 結合力の低下と共にばらばらに瓦解しそうな体をどうにか維持する黒雷球。
『ホワイトフレア……』
『ウインドブレイド……』
『アッ……』
 そんな状況下で抜き身の二刀流と身の丈程もある大野太刀を構えた2人。
『スラッンユ !!』
『イヤァァァァァァ!!』
 探と茜のツインホワイトフレア斬撃でトドメを刺された黒雷球は自身を維持する最後の魔力も失い、そのままバラバラの魔力塊となって蒸散消滅していく。

【第56話につづく】
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