88 / 93
88
しおりを挟む
それから走り出した黎月の速いこと速いこと。急行列車に乗っているのと同じくらいのスピードで、景色が流れていく。
「なんだか不思議な感覚ですね」
「ね、ほんとに。酔わないって最高! 」
もう二度とあんな高級なだけの馬車とか乗りたくない、乗らない! ストリングとかいう概念はないのだろうか。
ドッ、ドッ、と小刻みに刻まれる黎月の足音が気持ちいい。
「こんな移動方法で通りすがりの人に通報されたりしない? 」
めちゃくちゃ今更だけど。
「通報ですか? まあ、物珍しいでしょうけど、通報まではいかないと思います」
「そうなんだ」
「ええ。実際獣騎士団とか、一部の荷運び業者、あとは緊急の書類配達員とかは獣魔で移動することがありますよ」
「へー、そうだったんだ」
書類配達員というのは、所謂郵便配達員だ。ただ本当に手紙や書類といった紙しか請け負っておらず、荷物は一切運ばない。その中でも公文書を運ぶ人は上級配達員であり、いろんなところで優先的に通してもらえるらしい。第二騎士団にも二、三回来たことがあった。
「ですがこれほど大きな獣魔、しかもフェンリルとくると、検問では止められるかもしれません」
「あ、そうだ。一応冒険者としてはグレートウルフ、スレイプニル、レンホンチョウ、ブラックサーペントってことで通してるから」
自分でもすっかり忘れてた。
「グレートウルフにしてはサイズが大きくないですか? 」
「ちょっと大きいグレートウルフって言えばなんとかなるよ」
「そういうものなのですか? 」
そういうものでなきゃ、こっちが困る。
頑張って勉強はしているが、魔獣にはまだ詳しくなく、グレートウルフ以外の言い訳が思いつかないのだ。
でも検問で止められるのはめんどいな、ちょっと手前で降りておくか。
黎月のインパクトのせいで存在感が薄まってたけど、白氷が横でずっと並走してるのも、まあまあ珍妙な光景だよね。
「あら、休憩所があるわよ」
「マッピングポイントですね」
「マッピング? 」
「移動中に立ち寄り登録をすることで、万が一なにかあったときに追跡ができるようにしておくものです」
「じゃあ寄っといた方がいいね」
紅羽が言っていた休憩所、マッピングポイントは茶屋に似た作りなっていて、入り口からちょっと離れたところで止まる。黎月が縮んだ瞬間ぎょっとしていた人もいたけど、特に何も聞いてこなかった。
「いらっしゃいませ、身分証をお願いします。あら、お嬢ちゃんと二人? 珍しいわね」
「ギルドカードでいいですか? 」
「ええ、もちろん。そちらの方は? 」
「あ、えっと。ギルドには登録してなくて・・・」
「お名前だけでも構いませんよ」
「セルラディーノ・イオ・エスモグーです」
「セルラディーノ・イオ・エスモグーですね。はい、完了しました。もし馬などがいたら、付属厩舎に一時的に繋いでおけるわ。あと、有料でシャワーの利用もできるから、もし必要ならもう一度ここに来てね」
「はい、ありがとうございます」
厩舎があるとは言ってたけど、果たして白氷が妥協するかどうか。
「っていうことだけど、どうする白氷? 」
「む、・・・正直いけ好かないのだがな。どうしてもというのなら厩舎とやらにいてやってもよかろう」
・・・すんごい不服そう。まあ暴れなきゃ大丈夫か。
ちなみにあのでっかいもふもふは紅羽と一緒に森の方に走っていった。まだまだ運動し足りないようで、狩りに行ったと思われる。私も稼ぎになるから正直ありがたい。
獲物を並べ出さないかだけが心配だ。
「なんだか不思議な感覚ですね」
「ね、ほんとに。酔わないって最高! 」
もう二度とあんな高級なだけの馬車とか乗りたくない、乗らない! ストリングとかいう概念はないのだろうか。
ドッ、ドッ、と小刻みに刻まれる黎月の足音が気持ちいい。
「こんな移動方法で通りすがりの人に通報されたりしない? 」
めちゃくちゃ今更だけど。
「通報ですか? まあ、物珍しいでしょうけど、通報まではいかないと思います」
「そうなんだ」
「ええ。実際獣騎士団とか、一部の荷運び業者、あとは緊急の書類配達員とかは獣魔で移動することがありますよ」
「へー、そうだったんだ」
書類配達員というのは、所謂郵便配達員だ。ただ本当に手紙や書類といった紙しか請け負っておらず、荷物は一切運ばない。その中でも公文書を運ぶ人は上級配達員であり、いろんなところで優先的に通してもらえるらしい。第二騎士団にも二、三回来たことがあった。
「ですがこれほど大きな獣魔、しかもフェンリルとくると、検問では止められるかもしれません」
「あ、そうだ。一応冒険者としてはグレートウルフ、スレイプニル、レンホンチョウ、ブラックサーペントってことで通してるから」
自分でもすっかり忘れてた。
「グレートウルフにしてはサイズが大きくないですか? 」
「ちょっと大きいグレートウルフって言えばなんとかなるよ」
「そういうものなのですか? 」
そういうものでなきゃ、こっちが困る。
頑張って勉強はしているが、魔獣にはまだ詳しくなく、グレートウルフ以外の言い訳が思いつかないのだ。
でも検問で止められるのはめんどいな、ちょっと手前で降りておくか。
黎月のインパクトのせいで存在感が薄まってたけど、白氷が横でずっと並走してるのも、まあまあ珍妙な光景だよね。
「あら、休憩所があるわよ」
「マッピングポイントですね」
「マッピング? 」
「移動中に立ち寄り登録をすることで、万が一なにかあったときに追跡ができるようにしておくものです」
「じゃあ寄っといた方がいいね」
紅羽が言っていた休憩所、マッピングポイントは茶屋に似た作りなっていて、入り口からちょっと離れたところで止まる。黎月が縮んだ瞬間ぎょっとしていた人もいたけど、特に何も聞いてこなかった。
「いらっしゃいませ、身分証をお願いします。あら、お嬢ちゃんと二人? 珍しいわね」
「ギルドカードでいいですか? 」
「ええ、もちろん。そちらの方は? 」
「あ、えっと。ギルドには登録してなくて・・・」
「お名前だけでも構いませんよ」
「セルラディーノ・イオ・エスモグーです」
「セルラディーノ・イオ・エスモグーですね。はい、完了しました。もし馬などがいたら、付属厩舎に一時的に繋いでおけるわ。あと、有料でシャワーの利用もできるから、もし必要ならもう一度ここに来てね」
「はい、ありがとうございます」
厩舎があるとは言ってたけど、果たして白氷が妥協するかどうか。
「っていうことだけど、どうする白氷? 」
「む、・・・正直いけ好かないのだがな。どうしてもというのなら厩舎とやらにいてやってもよかろう」
・・・すんごい不服そう。まあ暴れなきゃ大丈夫か。
ちなみにあのでっかいもふもふは紅羽と一緒に森の方に走っていった。まだまだ運動し足りないようで、狩りに行ったと思われる。私も稼ぎになるから正直ありがたい。
獲物を並べ出さないかだけが心配だ。
206
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~
ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。
絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。
彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。
営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。
「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」
転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。
だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。
ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。
周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。
「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」
戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。
現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。
「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」
これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる