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第3章 火宅之境
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しおりを挟む「いっ!! ・・・・・・てぇ」
どストライクにヒットした衝撃で緩んだ腕の拘束から抜け出し、静先輩に背を向ける。
正直静先輩の言葉にはかなり焦った。
だからなりふり構わず動かせる所を思いっきり動かしたら、その結果自分の頭もズキズキと痛むことになったけど。
でも今はそんなことまで気にしていられない。
ちらりと自分の足の間に目を向ける。
そこは静先輩の言葉通り、目に見えてしっかりと存在を主張していた。
カッと頬が紅くなるのを感じて、立てた膝をぎゅっと閉じてそこから目をそらす。
「なんで・・・・・・」
自分の性癖は自覚しているつもりだ。
考え方が大きな原因で、不特定多数の相手に乱暴に扱われるのが、いい、んだ。
先輩たちの時は、何回も手を出してきて見慣れた顔もあったけど、毎回人数はまちまちで人も入れ代わり立ち代わり。
知らない人の方が多い日だってあった。
痛いし怖いし気持ち悪いけど、こればっかりはどうしようもないことだって、諦めてる。
だから、好きな人に触られたくらいのことで、反応するなんてことはないはずなんだ。
発情期の時のキスだって、すごく気持ちはよかったけど、身体までは反応しなかった。
「・・・・・・ごめん、匂いに引き摺られた。発情期を甘く見すぎてた」
静先輩はさっきの頭突きで正気に戻ったようで、後ろでどんな顔してるかは分からないけど僕に触れようとはしなかった。
発情期は今日で終わってるはずで、だから僕は全然気づいてなかった。
でも匂いが、とか何とか言ってた気がしなくもないから、僕には感じられなくても、静先輩には感じられてたんだ。
分かってた上で、一緒に寝ようとか言ってたわけで。
僕が、止められなかったら・・・・・・。
あのままどうなっていたか、分かったもんじゃない。
ゴムなんてこの家にはないし、静先輩のことだから責任取るとか何とか言って、本当にそのままヤっちゃいそうで、たまったもんじゃない。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・ああ、もう!!
そういうことじゃなくて!!!
こんなこと、気付きたくなかった。
どんな理由があれ、今回のことで分かってしまった。
自分の本当の性癖。
あんまり誰からとか人は関係なかったんだ。
未だにずきずきと痛む傷に、ゆっくり触れる。
「・・・っ・・・・・・」
かなり深くまで牙が入っていたようで、完全には止血しきっていなかった。
手のひらに血が付いたのが分かる。
本当に噛まれたのが首じゃなくてよかった。
気持ちの整理がつく前に逃げられなくなるところだった。
そう、逃げたいって思ってたのに。
大切だ好きだって言って、大事にすることは家族にしか許されない。
そうじゃないなら。
優しくとか丁寧にとかじゃなくて、無理やりにでも強引にでも、僕に手を出してくれればよかったんだ。
大切だなんだって、好きだなんだって、言ってるような人でも。
僕が好きになっちゃった人でも。
そうしてくれるのなら、彼の側にいられるってことがわかった。
誰だって好きな人の側にいられるのなら、側にいたいに決まってる。
そう出来る可能性があるのなら、縋ってしまいたくなるものだ。
少しだけ体の向きを変えて立てた膝の上に頭を置く。
そして、視線だけを静先輩の方へ向けると、顔が熱くなってくるのも無視して一言だけ呟いた。
「・・・・・・もっとひどくして」
その時静先輩がどんな顔してたかなんて、覚えていられるほどの余裕はなかった。
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