僕とあなたの地獄-しあわせ-

薔 薇埜(みずたで らの)

文字の大きさ
51 / 152
第3章 火宅之境

47

しおりを挟む

「ちゅっ・・・・・・っはぁ、はぁ・・・ぁ・・・」

じっくり時間を掛けて口内を余すことなく堪能されて、ようやく解放される。
その時には既に、目まぐるしい程の頭の混乱はどこかへ消え去り、許容範囲を超えた感覚に支配されつくしていた。

「可愛い・・・・・・、俺の弥桜」

一方静先輩は息一つ乱さずギラついた視線を向けて、一言それだけ呟いた。

まだキスの余韻で頭の中は曇ったままだけど、そんなぼーっとした思考でやっと解放されると気を抜いた瞬間、ぬるりとした感覚が首筋をじっとりと這った。
「ぁ、んっ・・・・・・、こんどは、なにっ」

その感覚はゆっくりと下がって行き、唇が鎖骨に触れ軽く皮膚を吸われると、ひと呼吸おいた後鋭い痛みに襲われた。
「ひぃっ!? ・・・いたぃ・・・いっ、たいって・・・んぁっ・・・・・・」
痛みに反応した体がガクガクと震える。

グサリとしっかり歯が皮膚を貫き通しているのを感じて、その時ようやく静先輩が牙が出るほど興奮しているということに気が付いた。

だからおかしかったんだ。
理性がなかったから、僕の声も届かないぐらいあんな無理やり・・・・・・。

「あぁ・・・ぁいっ・・・っ・・・」

牙が抜けるのも痛いし、何よりも沁みる。
牙が抜けても離れていかず、なお傷口を舐めるからびりびりとした痛みがジワリと広がっていく。

痛いし怖いしで、涙まで溢れてくる始末だ。

「ねぇ、静先輩っ・・・・・・」

必死に声を掛けても返事の一つも返ってこないし、相変わらず腕を押える力が強くて身動き一つ出来ず痛みには耐えるしかない。
こんな状況に、静先輩の気の済むまでこのままされるがままでいることしか出来ない、と早々に抜け出すことは諦めた。

抜け出すことは諦めたが、やっぱり傷が痛いことは痛い。
その痛みと必死に戦っているうちにすっかり意識から外れていたもう片方の手が、お腹を滑り下りズボンの上からすっかり熱の溜まった下肢をぞろりと撫で上げた。

「・・・ひゃあっ・・・・・・!!」
全く違うところからの、しかもこんなに直接的な刺激に、抑える余裕もなく大きな声が出てしまった。

「こんなに硬くして、そんなに感じたのか?」

僕の反応に気をよくしたのか首元から顔を上げると、揶揄うような口調で煽ってきた。
「っ・・・・・・!!」

そんな静先輩の言葉に、思わずその頭に思いっきり頭突きをかましてしまった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。 そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。 オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。 (ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります) 番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。 11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。 表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)

処理中です...