69 / 152
第4章 同甘共苦
65
しおりを挟む初めて入った静先輩の部屋は外観通り立派で広かった。
でもその広い部屋に対して、物が少ない気がする。
僕の部屋も相当物が少ないことは自覚しているけれど、静先輩も他人のことを言えた立場じゃないと思う。
「静先輩の部屋も全然物ないじゃん。てか、うちより広い分余計すかすかに見える」
「いやいや、最低限テレビはあるし、それこそ部屋が少し広いだけだろ。そんなこと言ってないで飯作るぞ」
ちょっとした静先輩への対抗心はばっさり切り捨てられてしまった。
それにいつも僕が夕飯の前にお風呂に入ることを知ってるのに夕飯を先にするっていうことは、やっぱり昨日のことを気にしてるんだろう。
飯作るぞとか言われても、そのことに気づいちゃったから恥かしくて静先輩の顔とか見られない。
夕飯が出来るまで布団をかぶってあーとかうーとか唸ってたけど、今日の疲れも相まってだんだん眠くなってきたところで静先輩に引きずり出された。
「ほら夕食出来たぞ。ささっと食べて風呂入って寝な」
「んー」
そう言って夕飯もそこそこに済ませ、いざお風呂に入ろうとした時ちょっとしたハプニングがあった。
ご飯を食べても眠気は覚めずぼーっとしてるのを見て、入る前に静先輩が口うるさいぐらいに気をつけろよ、と言ってきた。
分かってるよと話半分に聞いていたのだが、案の定湯船に入ろうとして滑って危うく大惨事になるところだった。
もちろんリビングまで音は響き、静先輩が血相を変えてやってきたんだけど。
最初は興奮状態で大激怒だったんだ。
けど、ぽろっと「だったら一緒に入ってくれればよかったのに」と回ってない頭で言ってしまった後、今の自分たちの状況をようやく理解してなんでそうしなかったのかに気づいた時には、静先輩の視線は全裸の僕の体に釘付けだった。
「っ!」
「ぁ・・・・・・」
すぐに視線は外したみたいだったけど、ぼんっと音が出そうなぐらい一気に顔が真っ赤になってたし、どうやらちょっと鼻血も出てたみたい。
静先輩は僕の安全だけ確認すると、鼻を押さえたまますぐに出て行ってしまった。
僕も流石にちょっと怖かったから反省もしたし、長湯するとそのまま寝ちゃいそうだったから少し温まる程度で出ることにした。
もちろん出る時はかなり慎重に足元とか確認したよね。
そんなこんなでちょっとしたハプニングもありつつ、お風呂から出るとリビングや寝室とは別の部屋に静先輩が布団を敷いているところだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~
一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。
そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。
オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。
(ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります)
番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。
11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。
表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる