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第4章 同甘共苦
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しおりを挟む「弥桜っ、話を・・・・・・」
『もしもし弥桜くん? こんな時間にどうしたの?』
すぐに静先輩に捕まって腕を強く掴まれたせいで携帯を落としてしまったけれど、通話ボタンは押せていたようで数コールもしないうちに結永先輩が出てくれた。
スピーカーではないにしろ、静かなこの部屋では携帯越しに聞こえてくる結永先輩の声がやけに大きく聞こえる。
その声に静先輩は掴んでいる腕の力を少し弛めた。
「結永か? なんで今あいつに電話した?」
「ごめん、なさい。ぁ、でも、その・・・・・・」
静先輩じゃなく結永先輩に助けを求めたことに、より気を悪くして語気が一層強まる。
そのせいで更に萎縮してしまい、うまく言葉が出てこない。
そんな状態で静まり返った部屋に、さっきから放置していて返事もしていなかった携帯から声が響いてきた。
『・・・・・・もしかしなくても、静今そこにいるよな。聞こえてるんだろ、なんとなく状況の察しはつくけど、今からそっちに行くからそれまで大人しく待ってろよ』
来てくれると言う言葉に少しほっとするが、すぐさま詰め寄ってくる静先輩に身を強張らせる。
「どういうことだ、なんで結永が知ってるんだ」
『おい静、おとなしくしてろって。俺が行くまで少し頭冷やせ。・・・・・・はぁ、心配だから電話切るなよ』
電話を切る直前で、僕が何か言う前に結永先輩が遮ってくれた。
結永先輩の言葉に、今話をするのは無理だと理解したのか、静先輩は掴んでいた腕を離して数歩下がると、どかっとベッドの上に腰を下ろした。
「はぁー」
大きなため息とともに頭を抱え込む静先輩の動き一つに、びくりと反応して体を縮こまらせる。
完全に静先輩を怒らせていることは明らかで、この空気に耐えられなくて落としたままになっている通話中の携帯を拾い上げる。
「あ、あの・・・・・・」
『弥桜くん? 今そっち向かってるからもうすぐ着くんだけど、なんで静がそっちにいるのかだけ聞いてもいい?』
「僕発情期で・・・、わけわかんなくて、気づいたら静先輩がいて・・・・・・」
静先輩を怒らせたことはもちろん、元々の原因となった自分の体のことや手紙自体についても、なんにも頭の中が落ち着かなくて要領の得ない説明しかできない。
それでも僕と静先輩のことを一番そばで見てきた結永先輩は、それだけの説明で理解出来たようだ。
『あー、そういう・・・・・・。わかった。もうだいぶ落ち着いたんでしょ?』
「発情期は多分大丈夫、です」
目が覚めた時には、身体中が熱くなるような熱や、αが、静先輩が欲しくなるような疼きは無くなっていた。
その代わりに全身への嫌悪感と寒気を感じていた。
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