僕とあなたの地獄-しあわせ-

薔 薇埜(みずたで らの)

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第5章 落穽下石

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大学に着くまでに僕らの間で言葉が交わされることはなかった。
帝たちと話していた静先輩のこととか聞きたいことはあったけど、僕がそれどころじゃなかった。

外に出た瞬間、そこは見知った場所だった。
大学から遠くないこの場所に、あんなことのために好きに使えるような場所があったという事実が、急に恐ろしくなった。
知らない人に欲だけではなくあからさまな敵意を向けられあちこち触られて、それでも快楽に落ちていく自分の身体が怖くなった。

静先輩だけを感じたい。
静先輩以外は感じたくない。

そんなことを考えている間に徐々に車の揺れに刺激され続けて、大学に着く頃には完全に身体が出来上がっていた。
「ほら、着いたぞ」

「ん・・・、ぇ・・・・・・?」

「やっぱ俺らで遊んだらダメっすかね」
「まじで殺されるからやめとけ。・・・のことぐらい知ってるだろ」
先輩たちが何か言ってるのは聞こえるのに、何を言ってるのか理解出来ない。

体が暑い。
頭もぼーっとする。
もう何も考えられなかった。

「弥桜‼︎」

静先輩の声が聞こえるのに、顔を向けるのすら億劫で動けなかった。
「んふ・・・、ぁん・・・」
車から降りられない僕に、伸びてきた静先輩の手が触れる。
あの男たちとも先輩たちとも違う、自分の中で最も安心出来る感覚に、張り詰めていた糸が切れる音が遠くの方で聞こえた。

「ぅ・・・・・・っ」
服に擦れて辛いとか、動くのも億劫だとか、そんなことはどうでもよかった。
「弥桜、無事でよかった」
もう離さないと強く抱きしめられる。

自分の中でもうこの手以外に触れられるのは嫌だと思った。
怖かったし、気持ち悪かった。
安心して堰を切ったようにこぼれ落ちる涙に、静先輩がたくさん口付けてくれる。

その感覚がくすぐったくて気持ちよくて、元々ぼーっとしていた頭にさらに血が上って熱くなる。
「しずかせんぱい・・・、しずかせんぱい・・・」
もう遠慮する必要も我慢する必要もないんだと、ずっと勃ちっぱなしで痛いほど存在を主張しているソレを、ゆるゆると擦り付けるように腰を動かし始める。
「んっ、ふ・・・・・・触って、もっと、いっぱい・・・・・・」
もう周りなんか見えていなかった。
「っ、弥桜・・・・・・!?」

「あー、なんか散々弄られてたっぽいんで治りつかないらしいっすよ。今回は俺ら一切触ってませんからね」

「弥桜、もう少し我慢してくれ。ここで、その顔はダメだ」
早くもっと触って欲しいのに、静先輩は着ていたパーカーを僕にかけて深くフードを被せると、抱き上げて移動し始めた。
歩く振動が響く。
静先輩に触れてる箇所全部が熱を持って発火しそうだった。

「悪い、本当に助かった。詳しいことはまたあとで聞くから、今はこれで」
それどころじゃない僕たちの代わりに、結永先輩が返事をしてその場は解散した。

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