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第5章 落穽下石
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しおりを挟む「静先輩、おはよう」
「静先輩、お腹すいた」
「静先輩、おやすみ」
「静先輩」
「静先輩」
「静先輩」
夏休みに入ってから既に1ヶ月ほど経っていて暦は9月に入っていた。
毎日毎日飽きもせず二人でくっついてて、何をするにも静先輩と一緒。
完全に静先輩に甘える癖がついていた。
当の静先輩も口では文句を言いながらも結局はあれこれしてくれるし、週に3,4日は泊まってくれていつしか一緒に寝てくれるようにもなってた。
ちなみに毎日来てくれるのに帰っちゃう日があるのは何でって聞いたら、弥桜の為だからって言って話をはぐらかされてしまった。
こうやって偶に僕に隠し事するけど、僕の為って言っとけばなんでも大丈夫とか思ってそう。
どうせ食い下がったところで教えてくれないから、早々に聞くのをやめちゃうからあんま強いことは言わないけど、こういうところが静先輩の悪いところだと思う。
「静先輩、買い物何時から行く?」
冷蔵庫の中身がそろそろ無くなりそうだから、今日は午後から買い出しに行く予定だった。
「俺、このあと用事があるから帰らなきゃいけないんだわ。商店街に食材買いに行くだけなら一人でももう大丈夫だろ?」
「うん」
毎日来てくれるとはいえ、ちょくちょく用事があると言って帰ってしまう日もある。
そういう時は一人でごろごろしてるか、用事があれば今日みたいに商店街まで出掛けたりする。
流石に1ヶ月も二人でいれば、他人の目なんかほとんど気にならない前の生活に戻ることが出来ていた。
外にも出られるようになって、商店街くらいだったら一人で買い物も出来るのだ。
まだ大きな街とかは家を出る前に尻込みしちゃって行けてないけど、多分そろそろ行けるようになってるかもしれない。
まだまだ怖いことに変わりはないけど、大学が始まってからとかこのままずっと静先輩に頼りきりってわけにもいかない。
そんな自分じゃ静先輩の隣にはいられない。
せめて外に出る時だけでも、それなりに自立出来るようにならないといけないって思って頑張るようにしてた。
「戻ってくる?」
「今日は無理だけど明日は朝早くから来れるから、それまでだよ」
一人で出かけたあとはどうも静先輩の顔を見ないと落ち着かない。
僕の知らないうちにどこか行ってしまいそうで、怖かった。
「大丈夫、ちゃんと来るから」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれた。
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