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第6章 一蓮托生
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しおりを挟む結局あの時の不安の正体は分からないまま、時間だけが過ぎていた。
あの日から静先輩は荷物を取りに帰ったきり、ずっとうちに泊まり込んでくれていた。
今までどんなに帰らないでと言っても僕の為だと言って週の半分は家に帰ってしまっていた静先輩が、この夏はほとんど帰らずずっと一緒にいてくれている。
自分が何か変わったというつもりはないし、静先輩の中で何があったのかは分からない。
僕としては元々離れたくないって思ってるからこの状況は願ったり叶ったりなんだけど、急に静先輩の態度が変わると何かがある気がしてそれも怖かった。
そんなこんなで気づけば静先輩との2回目の夏休みも半分が過ぎようとし、次の発情期が間近に迫ってきていた。
この時期が近づいてくると、どうしてもどんどん心が追い詰められていく。
静先輩と頑張っていろんなことを試してみたり、時には専門家の意見を求めて親にバレないように結永先輩づてに精神科を受診したこともある。
それでも今までの努力はあまり実らず、一向に良くなる兆しは見えていなかった。
そんな中静先輩がずっと隣にいると安心する反面、自分の状態が少しも良くならないことが余計重荷に感じるようになっていた。
静先輩は元々知っていたわけで、その上で大事にしてくれているし、実際に触れられて本当に静先輩が汚れるわけでもない。
静先輩は気にしないって言ってくれているし、過去のことはもうどうしようもないことなのはわかっているんだ。
それでもどうしても自分のしてしまったことが許せないし、受け入れることが出来ない。
ただでさえ静先輩にすら出来れば見られたくないし、触られるのも気が引ける。
だからもう二度と静先輩以外に見られることも、ましてや触られることなんか出来やしなかった。
それは自分自身も例外ではない。
自分でも抑えられないくらい日に日に嫌悪感が強くなってきて、当然常に近くにいる静先輩にもわかるわけで。
「弥桜、大丈夫だよ」
その度に静先輩が抱きしめて『大丈夫』と、その言葉を掛けてくれる。
元々ことある毎に大丈夫か、大丈夫だよ、と声を掛けてくれることはあった。
それがあの日から目に見えて増えて、毎日のように抱きしめて大丈夫だよと、宝物のように伝えてくれるようになった。
それがここ最近は更に回数が増えて、僕が少しでも気にしてるとわかるとすぐ飛んできて抱きしめてくれる。
きっと他人から見たらうざいくらいの回数になってるだろう。
結永先輩がたまに遊びに来た時も、おかしいって突っ込まれた。
そこで初めて自分たちの現状の異常さに気が付いて、だけど指摘されてもなお全くおかしいとは思えなかった。
静先輩に抱きしめられて大丈夫って言われるとすごく安心するし、だからこそ自分は大丈夫なんだってその瞬間は思えるようになっていた。
でもすぐにまた不安になっちゃうから全然改善したわけじゃないし、その度に自分からも静先輩に抱きついて大丈夫って言ってもらうようになっていた。
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