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第6章 一蓮托生
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しおりを挟む「しずか先輩、発情期やだ・・・・・・」
時間が経って、徐々に身体が熱くなってきて意識も朦朧としてきた。
静先輩と出会ってからの発情期は、以前の比にならないぐらい症状が重かった。
それは静先輩から離れていても関係なく、身体が覚えている静先輩の熱を無意識に求めているものだってわかってる。
だから抑制剤を飲んで一人で部屋に籠っていればなんとかなるようなことじゃなかった。
どうしても避けられない時間なんだ。
それに手の届くところにいる静先輩を求めずにはいられなくて余計辛いだけなのに、今の僕が静先輩から離れられるわけもなかった。
だから今回からはお互いに抑制剤を飲むことにして、少しでも気持ち的に何か楽になれるようにしたかった。
それでも抱きついて胸に顔を埋めて、これだけ近いところにいたら否応なくお互いのフェロモンには反応するし、抑制剤なんか意味をなしているのかわかったものじゃない。
「大丈夫だ。これは俺たちがお互いのことを大事なんだって、大好きなんだって、確認するための時間だから。安心しろ、何も嫌なことはない」
また大丈夫だって、静先輩の声に優しく包まれる。
お互いのことを大好きなんだって確認するための時間・・・・・・。
発情期のことをそういう風に考えたのは初めてだった。
初めて抱かれた時は知らない人たちだったし、静先輩と出会ってからは経験のない発情で考えてる余裕がなかったり、自傷癖をなんとかしようってことばっかりだったりで、自分にとって煩わしいもの嫌なものという意識しかなかった。
そんな発情期が、大好きだって確認するための時間だなんて。
今まで考えたこともなかった。
そんなこと言われたらもうこれ以上嫌だなんて言えない。
静先輩のことが大事なんだって、大好きなんだって、僕も確かめたい。
大好きなんだってもっともっと伝えたい。
「しずか先輩、大好き・・・・・・んちゅ」
自分からその首に手を回してキスをする。
静先輩の言葉は本当に全てが魔法だった。
あんなに嫌で嫌で仕方なかったこの時間が、ほんのちょっとだけだけどいいものなのかもしれないって、感じ始めてる。
「大丈夫だからな。大好きだよ、弥桜」
大好きだって口に出して言えるようになってから初めての発情期は、その間ずっとお互いにその言葉が途切れることはなかった。
そして過去一すっきりしているはずの翌朝。
確かに今までよりは多少なりとも気分は良かった。
静先輩に綺麗にしてもらってるから、別にヤりっぱなしで汚れたまんまってわけでもない。
けどそれでも、朝起きると必ず嫌悪感に襲われる。
多少良くなってるとはいえ、いきなり全部なくなるわけじゃなかった。
「弥桜、おはよう」
「・・・・・・おはよう、静先輩」
もう何にも隠せなくなっている僕の状態なんか一目瞭然だろう。
何も聞かずにぎゅうぎゅうに抱きしめてくれる。
「どうしようもないのはわかってるから。少しだけな、10分したら迎えに行くから出ておいで。大丈夫だよ」
いつも以上に刷り込むようにゆっくり優しく優しく囁かれてから、それでも心配そうに送り出してくれた。
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