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彼と僕の猫事情
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しおりを挟む零れ落ちた涙を拭いながらカナが教えてくれた。
オレとユイは、色んな人にことある事に、そっくりねと言われていた。
だからオレも、きっとユイも、自分たちはそっくりなんだと思い込んでいた。
確かに似ていないわけじゃない。
普通に他人が見れば、オレとユイはそっくりなのだ。
でもカナだけは、他の誰よりも、オレたちを見ている時間が圧倒的に長い。
笑顔、泣き顔、寝顔、お腹が空いた時の顔・・・・・・。
色んな顔を四六時中見ていたから、見ているうち何なんとなく気づいたんだって。
オレの方が優しい顔してるなって。
カナだけが知っている特別だから、誰にも教えたくはなかったんだって言った。
「だからね、これは叶の顔なんだよ」
カナの言葉にちょっとだけ安心した。
これが本当にユイの顔だったら、カナはずっと悲しくて泣いちゃうんじゃないか。
オレがユイを奪ってるみたいじゃないか。
すごく不安だったから、カナがこれはオレの顔なんだって言ってくれてよかった。
「じゃあ、次は僕が訊いてもいいかな。どうして叶は戻ってきたの?」
さっき訊かれたことだ。
忘れたわけじゃない。
カナの秘密を教えてもらったから、今度はオレの秘密を教えてあげる。
「あのね、オレとユイは毎年約束をするんだ。それを守るために、神様にお願いして戻してもらったの」
二人でそんなことをしていたのか、と驚くカナ。
「カナは知らなくても仕方ないよ。約束は毎年カナの誕生日にするんだけど、その前にユイがいっぱいカナを啼かせるから、カナいつも疲れて眠ってるんだもん」
オレ、何か変な事言っただろうか。
カナの顔が急に真っ赤になっちゃった。
「大丈夫? 熱でもあるの!?」
「・・・・・・いや、大丈夫。なんでもないから話を続けてくれ」
「オレ、ずっと見てたから知ってるよ!! ユイがいっぱいカナのこと啼かすけど、カナあれ大好きでしょ!? いつも幸せいっぱいの顔で寝てるもん」
カナの顔が更に真っ赤になった。
でもオレ、本当に全部知ってるもん。
毎年カナの誕生日には、みんなでケーキを食べてプレゼントを渡してお祝いするんだ。
それで生まれてきてくれてありがとうって言って、"きす"ってやつをするんだ。
ユイが教えてくれた。
きすをするとカナがもっとって言って、そのまま"せっくす"をするんだ。
オレはその間、ずっと隣にいるから全部知ってる。
愛してるよって言ってきすをして抱き締めるんだ。
「そうじゃない、もうその話はいいから。約束って、どんな約束をしたんだ?」
ちょっと話が脱線しちゃったのを、無理矢理カナに戻される。
そうそう、本題は約束の方だっだ。
これだけは、どうしても言わなきゃいけない。
ユイが死んで、カナが死を決めた日から。
オレだけがこのことを知っていて、オレだけがカナに伝えられるから。
どうしても伝えたかった。
でもいくら猫の言葉で言っても、人間のカナには伝わらないから諦めていたんだ。
それが、今言えるチャンスが目の前にあって、言わないわけにはいかない。
「今年も俺と叶で叶十を幸せにしような」
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