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番外編

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「謙」
名前を呼ばれて振り向くと、そこにはポッキーの箱を持った光紀の姿があった。
「ポッキー?」

「知ってるでしょ、ポッキーゲームって」
「う、うん。知ってるけど、それがどうしたの?」
そう答えると光紀は、満面の笑顔で言った。

「やってみない? 俺たちで」
謙は光紀の言いたがっていることには薄々気づいていたが、それでも実際に言われると少し反応に困る。

しかし、最近光紀とキスしてないから、このチャンスは逃せないと受け入れる。

ただ、これは勝負事だ。
無条件で、とはいかない。
「そのかわり負けたら・・・」


謙の提案に、思ったより変なことじゃなくてよかった、と即答した光紀の傍らで、安心している光紀を見て少し驚いた。
光紀は変なことじゃないって思ってるらしいけど、自分でもちょっと引くようなことを言ったつもりで返事を躊躇うと思ったのに。
とはいえ、そんなことを今考えても仕方ないので、あとで聞くことにする。

そんなことを考えてるうちに光紀は袋からポッキーを取り出して口に咥えていた。
謙も反対側に口をつける。

ゲームは光紀のアイコンタクトで始まった。
少しづつポッキーを食べていく。
その時に漏れる光紀の吐息は謙にとっては媚薬効果がある。

光紀のあまりの可愛さに我慢出来なくなった謙は、そのまま頬へ手を添える。
この先は光紀も分かるだろう。

ポッキーもなくなり、そのまま彼らは口付けをした。
当然それだけでは飽き足らず、謙は光紀の口の中のポッキーを溶かそうと舌を伸ばす。

が、その舌は光紀に絡め取られあっという間に支配されていく。
謙から攻めていたはずなのに、やっぱりいつもすぐに光紀に主導権を奪われてしまう。

「んっ・・・はぁ、はぁ」
謙は呼吸を乱されて息苦しくなる。
そこまで堪能してようやく満足したといったように、光紀が舌を抜き唇を離す。

「はぁっ、はあっ、もう無理・・・」
酸欠状態の謙は、光紀の胸元にぽすんと顔を埋める。

その時に、謙はさっき聞くのをやめたことを聞く。
「それにしても、どうしてあんな条件受け入れたの? 今更だけど」

「だってこうなること分かってたし、俺も謙もキスは拒絶しないでしょ?」
その言葉に理性が切れた謙は、光紀の胸元を押して倒しその上に自分が乗る。

「わっ、なに?」
驚いている光紀にまたキスをすると、光紀はさっきの笑顔になり謙の身体を強く抱き締めた。

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