はじまりは初恋の終わりから~

秋吉美寿

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番外編

70.いざ、ラフィリルへ (イリューリアの回想

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私、デルアータ王国の公爵が一人娘、イリューリア・エルキュラートは、今日、子供の頃から憧れ続けた祖母の故国、ラフィリル王国へ行く事となりました。

ラフィリルの第二王子ルークとの結婚のご許可を頂く為です。

ルークは、大国の王子様だと言うのに、最初、自分は子供達のお目付け役でついてきただけの魔法使いだとしか言いませんでした。

その上品な物腰、立ち居振舞いから身分が高いとは感じていましたが、まさか、ラフィリルの王子様だったなんて…。

ラフィリルの聖魔導師というだけでも、おそれ多いと言うのに、王子様だったなんて!
凄すぎて、何だか感覚が麻痺しちゃいます。
本当に…。

最初から大国の王子様と聞いていたら、私など不釣り合いだと、きっと尻込みしたでしょう。
ラフィリルのというだけでも、私など相応しくないと逃げ出したかもしれません。

でもね?
あの!ラフィリルの王子様で、しかも聖なる魔導師様で、しかも見目まで麗しくて性格まで優しくて紳士なルークですよ?

私じゃなくても、釣り合う人間なんて、いる訳ないと思うのです!

…誰もいないなら、もう、いっそ私でもいいのではないかと思っちゃったりしたのですよ。

とやらが、祓われてからというもの?私は自分でも驚くほど前向きに物事をとらえちゃってると思います。

図太くなっちゃったと言っても過言ではないのではないでしょうか!?

そうそう、釣り合うとしたら、現存する女神と呼ばれる、月の石の主ルミアーナお姉様くらいだと思うのですが、お姉様は既にご結婚されていて、可愛い双子の子供達までいらっしゃるのです。

しかも、はた目でみても、照れちゃうくらい、旦那様のダルタス将軍とラブラブなのですから。

それにルークとルミアーナお姉様は、昔からの大親友で何だか見るからに色恋とは、かけ離れた雰囲気です。
何か、熱い友情?とでも言うのでしょうか?
不思議とお姉様とルークがしゃべっていても焼き餅を焼くような感じにはなりません。

男と女で友情なんてあり得るのか?なんて、引き籠って生きてきた私には、友人の一人すらいないのですから、そんな事、分かる筈もありません。

でも、何でしょう。
ルークとお姉様の友情って男と女というか…男同士の友情っぽい?
何だか、お互いをリスペクトした上でなりたっているような、そんな感じがするのです。

漠然と…なんですけどね。
我ながら、ほんとに不思議…。

私はじつは、自分で思っているほどルークのこと好きじゃないのかしら?と思ってみたりもしましたが、それは、ない!と断言できます。

ルークが笑顔になるのを見るだけで胸がきゅんとするし、ルークがいないと寂しいのです。
それに、きっと、お姉様以外の女の人とルークが仲良くおしゃべりでもしようものなら、きっと私、すご~く嫌な気持ちになると思うのです。

嫌な女の子になってルークに嫌われちゃわないか、心配です。

そんな事をあれこれ思い悩んでいると不意にルークに声をかけられました。
あわわわわ!
そうです!今、まさに、これからラフィリルに向かうのです。
魔法で移動するのです!
瞬間転移です!期待とドキドキが止まりません!

「イリューリア?準備はいい?」

「はっ、は、は、は、はいっ!」
慌てて返事をする私の手をとり、ルークはにっこりと微笑みます。

ルルーやマーサも一緒に行くのは心強いです。

お父様は、デュロノワル一味の後始末や、マルガリータやローディ王子の処遇、将軍の抜けた後の後任の手配等、緊急を要する様々な諸問題で、今回の挨拶に一緒に行くことはままなりませんが、これは仕方ない事でしょう。

一番、残念に思っていて可哀想なのはお父様なのですから。

お父様は、目に涙をうかべながらルークに何度も娘を頼むと言っていました。
今からこれでは、結婚式の日には、涙で目が落っこちてしまうのではないかと心配になるくらいです。(ふふっ)

そして、王城で、デルアータの国王様王妃様、宰相であるお父様にご挨拶を終えると、私とルーク、マーサとルルー、ルミアーナお姉様にダルタス将軍と子供達は王の間の中央に立たちました。

そして、お姉様が「リュート、帰るわよ」と呟くと瞬間、お姉様の月の石から、精霊のリュート様が現れ、まばゆい光を放たれました。

そして、再び目を開けた時にはラフィリルのルミアーナお姉さまのお屋敷のお庭でした。
初めての魔法による転移体験!
興奮してしまいました!
わくわくどきどき、興奮して今晩は眠れそうにもありません。
ルークと、出会ってからというもの毎日が夢のようで、夢ならどうか覚めないでと祈る私です。
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