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ジルの話

102.思うだけでも… ジル視点

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 僕(ジル)は、困っていた。

 う~ん、この獣人さん達、すっごくいい人?達みたいだし、何よりカッコいいし、めちゃくちゃついて行きたいけど…まだ魔力のコントロール全然、出来てないしなぁ…。
 どう、説明したらいいんだろう?

 あんまし認めたくはないけれど、正直僕は家族が言うように『歩く危険物』だ。
 それはさっき、ものすご~く分かった。
 ちょっと体を乾かそうと温風を出そうとしただけなのに竜巻だもんなぁ…。

「えっと、僕、まだこの森から離れられないんです」と、豹の獣人さんに再び伝えると皆が一斉に反論してきた。

「「「「死ぬ気か?」」」」

「いや、そんな事は無いです」むしろ、うっかり、あなた方を殺しちゃわないか心配で心配で…とは、言えないよね。嫌われたくない。

「…ごめんなさい実はちょっと事情があって…僕は人のいるところにはいては、いけないのです」

 ここまで言って僕はいい言い訳が何も浮かばなかった。
 もうちょっと、魔法のお試しが終わってから、出会いたかったと思った。

 そして、自分は移動に関しては特に変な事にはなってなかった事を思い出した。
 そうか…移動は竜になって飛んだだけだし、転移の魔法は自分の魔法じゃなくて月の石にやってもらってたから?
 そう思い自分の腕にはめている腕輪にそっと触れて、月の石の精霊シンに念話で話しかけた。
『シン、取りあえず、この人達から離れてさっきの続きを出来るような広い場所に!』と。

「あのっ!本当にごめんなさい!優しい言葉をかけてくれてありがとうございますっっ」
 そう叫ぶとともに僕はシンの…月の石の精霊の魔法で皆の前から姿を消した。

 ごめんなさい!きっと僕がいきなり消えて大騒ぎだよね?
 でも、本当に、うっかり貴方達を危険な目にあわせたくないから!と心の中で謝った。

 『ああ、こんな事なら、うっかりっちゃっても、罪悪感も起きないような極悪非道な山賊にでも出会った方がマシだったのに…』なんて馬鹿な事を一瞬、考えてしまうのだった。

 そして、そんな事を考えてしまったからだろうか…。
 あんなと出会うなんて…。
 
 …僕はまたもや、うっかりしたのだ。
 月の石の精霊たちは人の心を読めてしまう。

 そう”月の石の主かあさま”の加護を受けるは、うっかりしたことを考えるだけでも危うかったのだ。

 そんな自分の浅はかな一瞬の思いに後悔しまくるのだった。
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