リトルキラは世界平和を夢と希望で育みたい!~"可愛い"は最強の武器であり鎧だった!~

秋吉美寿

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魔法のある世界で

40.疑惑のラーラ姫03

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その老人と若者は目をぱちくりさせていた。

そう、その老人というのは大神殿長ボルガである。
白い口髭に太く白い眉に細い目に皺だらけのその姿は大神殿長の正装ならば威厳もあるが、今の姿は、『植木屋のおじいちゃん?』といったところである。

そして若者は聖魔導士シルバ…。
その名の通り、この国には珍しい銀色の髪に紺の瞳の魔導士だ。

銀色と言っても、ラーラーのような白銀ではなくグレーに誓い銀色である。

さすがに、この髪色は見られると”聖魔導士シルバ”とばれてしまうので、布ですっぽり包んで縛っていた。
『植木屋のお兄ちゃん』…にしては綺麗すぎる顔だが、そういう恰好をしていれば、植木屋さんの人に見えるから不思議なものである。

ボルガは、まずラーラ姫に接触できたならその周りにいる人間を探ろうと思っていた。

幸い、大神殿の中庭に植樹の剪定に来ていた業者が、王室からも記念樹の植樹を依頼されたと自慢げに話していたという報告を元に業者に手をまわし、ボルガとシルバは早速、植木業者に紛れて王の城に入った。

生半可な事ではばれてしまうと、本当に植樹の仕方や剪定の仕方に至るまでをしっかり学んだのは流石というべきだろうか…。

そして、いよいよ他の植木職人たちと王城に入ると、三か所に植樹するとの事でボルガとシルバは、あらかじめ調べはついていたラーラ姫のお気に入りお散歩コースにある位置に、穴を掘り植樹をしていた。

すると、三人の侍女に見守られながら、とてとてと花を愛でながら近づく小さな女の子が話しかけてきた!

「おじいしゃん、何を植えてらっしゃるのですか?」

この王城に小さな女の子など、そうそういない。
まずラーラ姫であろう事は分かってはいたが、わざと素知らぬふりをしてボルガは答えた。

「おや、これはこれは、可愛らしいお嬢様ですな?これは虹彩樹と申しまして、お祝い事があるときに記念に植えられる樹なのですじゃ」

そう言うとその小さな女の子は拙い言葉で返事を返してきた。

「へぇぇ?何かお祝い事があったのでしゅか?」そう答えた姫君に、子供好きなシルバが答えた。

「この国の王様に妹姫さまがいらっしゃった事がわかり、そのお祝いにと王室よりご注文いただいた記念樹でございますよ」

「ええっ?じゃあ、これは、わたちの為の記念樹なのでちゅか?」と、その姫は答えた。

「「「まぁ」」」侍女達も知らなかったようで驚きの声をあげた。

「なんと、ではお嬢様がラーラ姫さまでしたか。これはこれは!」とボルガとシルバは、大袈裟にひれ伏し、地面に頭をこすりつけるような勢いでお辞儀した。

すると何とまだ僅か三歳の幼き姫がボルガにかけより何と泥だらけの自分に触れてきたことにボルガはそれはそれは、驚いた。

「やめてくだしゃいなの!私のようなちびっこに、頭なんて下げないでくだしゃい!」

そう言って近寄ってきた姫君の顔を間近で見て、それこそ心臓が破裂しそうなほどに驚いた。

驚くほどにきめ細やかな白い肌に紫水晶のような大きな瞳、それこそ人ではないのではないかと思えるほどの清らかな美しさだった。

そして、その指先から伝わる波動に穢れた”オーラ”はなかった。
むしろ、浄化されているような気さえしたのである。

これは一体どういう事なのか?とボルガは戸惑った。
自分もまた何かの魔法にかかってしまったのか?

姫君は、一緒にいたシルバにも頭をあげて下さいと言った。
あげて下さいとお願いをしたのだ。
王族の姫が…まだ小さいから身分と言うものが分かっていないのかと思ったが、それは違った。

姫君は拙い言葉で言ったのだ!はっきりと!
「はたらかざるもの、くうべからず!なのでしゅからわたしは、おとうしゃまや皆にお世話になってるのでしゅから、皆に感謝しゅるのが、ただしいのでしゅ!」と!

ボルガとシルバは正直、驚いた!
その内容にではない!
そんな内容を言える三歳児!

そこに驚いたのだ!
そして譲らぬ侍女たちとの言い合い!

侍女たちは姫君を”至高の存在”とばかりに崇め尊び、姫君は働く皆が偉いのだと言い張り、そんな言い合いを延々続けていたのだから…。

そして、この三人の侍女以外、誰もこの幼き姫には着いていないようだ。
黒幕がいるなら、こんな小さい子を操ろうとするならば傍から離れないだろうが、この三人の侍女からは正直、ものすご~く凡人なオーラしか感じない。

侍女たちと揉めているラーラ姫を見ながら二人はヒソヒソと話し合っていた。

「ボルガ様…わたしにはラーラ姫が何かに操られているようにも企んでいるようにも見えませんが…」
「や…それは、わしも…いや、しかし…こんな三歳児、違和感ありまくりではないか?賢いなんてものじゃ…」
「た…たしかに」

正直、困惑しきりの二人だった。
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