猫かぶり令嬢の婚活〜もう誰でもいいから結婚して〜

微睡

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子猫の救出

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孤児院に行った帰りは、気分転換に歩いて帰ることにした。

元々今日は汚れてもいいように、装飾品の少ない服だからそこまで悪目立ちはしないだろうし、比較的人の多い街を抜けるルートであれば問題はないだろう。

お目付役の護衛は付いてきてはいるが、歩き出しても止められなかったのでこれぐらいの自由行動は許容範囲のようだ。

服屋や、魔道具屋、本屋など様々な店で賑わう商店街を眺めながら歩く。

そうしているとルカの視線は自然といい匂いのしているレストランに吸い寄せられた。

普段それなりに良いものを食べさせて貰っておいてわがままだと思うが、ルカはこういう城下の料理を一度でいいから食べてみたかった。

「いいなー、おいしそう…」

ちょうど、料理をしている最中なのだろう。お肉が焼ける香ばしい匂いが通りに漂ってきている。

窓からチラリと見えた店内には揃って紺色の服を着た体格の良い男たちでいっぱいだった。

___ものすごく混んでるな。…ん?あの服見たことがあるような……確か下級騎士の制服?

胸元にシンボルらしきものが付いていたのでたぶん間違いない。

街にはそんなに頻繁に来るわけではないのでわからないが、こんなに騎士たちがいるのは初めて見た。

何か事件でもあったのだろうか?

不思議に思うも特に騒ぎが起きているわけではなさそうなので、あまり気には止めることなく通り過ぎた。


「___」

通りを抜けてすぐの公園の横の道を差し掛かった時、ルカは突然立ち止まった。
なにか声が聞こえた気がしたのだ。

静かに耳を澄ますと、やっぱりニャーニャーと助けを呼ぶか細い声が聞こえる。___猫だ。

声が聞こえる方を見上げると、公園の周りに植えられている木の枝、しかも上の方に白い塊がいるのを見つけた。…小さいので子猫かもしれない。

「なんでそんなところに…」

登ったものの降りられなくなってしまったのだろうか。不用意に動くと落ちてしまいそうな危ういバランスを保っている。

___どうしよう…助けを呼ぶ?

振り返ろうとすると、枝が風で揺られて慌てた猫がまた少しずり落ちた。

あまり時間は無さそうだ。

ルカは辺りを見回した。中央の大通りからは少し外れたので人はそんなに多くない。子供たちが数人遊具に夢中になって遊んでいるぐらいだ。

___まあなんとかなるか


「どうかしましたか?」

思案していると立ち止まっているルカを不審に思ったのだろう護衛が声をかけてきた。

「ねえ、さっきの店にあったチョコレートのケーキが食べたいわ」

「は?」

「だから急にそういう気分になったの!…私ちょっとそこで休憩しているから今から買ってきてくださる?」

ちょうど公園にあるベンチを指差す。

「いや、そう言う訳には…」

「ここから一歩も動かないわ。それなら良いでしょう?だってそこの角を曲がってすぐのお店よ」

ルカが頑なにケーキが食べたいと繰り返すと護衛は嫌そうな顔をしていたが渋々、ここで待っているようにと言い渡して元の道を戻っていった。

___よし、これで邪魔されない

護衛が角を曲がったのを見届けるとすぐにルカはスカートを捲って、躊躇なく木に足を掛けた。枝を足場にしてするすると登っていく。
あいつが戻ってくる前に用事を済ませなければいけない。

運動神経が良いことはルカの数少ない取り柄と言っていい。もっとも貴族令嬢としては全く役に立たないスキルだし、むしろ今まで眉を顰められてきたのでいつもは封印しているのだが。

「よい、しょっと」

長めのスカートを履いているので動きづらい。初めは汚さないように気をつけていたが、途中からもう諦めた。

あっという間に子猫の少し手前まで辿り着いたルカはそちらに手を伸ばす。

「ねこちゃんこっちにおいでー」

伸びてきた手を見て猫が少し身を硬くした。もしかしたら人に慣れていない野良猫なのかもしれない。

「大丈夫だから、ね?」

しばらくじっと待ってみたが、猫はこっちを見たまま動こうとしない。

まずいな……早くしないと。
ルカの中に焦りが生まれる。

待っていたらこのまま時間切れになってしまうかもしれない。あの護衛はきっとうちに戻ったら父に今日のことを報告するだろうし、こんなことをしたとバレたらまず間違いなく大変なことになる。

ルカは仕方なく大丈夫だよーと声をかけながらゆっくりゆっくり猫の体に触れて抱き上げた。思ったよりも抵抗はない。というよりもずっとここにいたので体が強張っているのかもしれない。

さあ、あとは降りるだけ!と思った時、猫を確保できたことで油断があったのか、スカートを踏んでしまいルカは足をつるりと滑らせた。

「なっ」

___やばい落ちる…!

瞬間、猫を抱きしめ、衝撃に備えてギュッと目を閉じた。
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