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「大体アンタはね。
 猫叉は危険だって涼奈が言ってるのに何で早々に倒さないのよ。」
「だってコイツなんか成長したいって心があるっぽいし、人間を一撃で倒せるくらい強くしてやろうと思てさ。」
「人類の敵?」
「涼奈あなた黒歴史がこいつにまで発動してない。」

復讐を誓う子どもの立ち位置。
そしてボクシングを己の技としていることから直感的に黒歴史が発動した。

そういじめられっ子が強い人に出会い憧れ追いかけていく物語。

「あ、発動してたごめん。」
「もういい。私がやるわ。」

「にゃにゃにゃ。」

スパーをしていた突如として剣を切りかかってきた女に対して猫叉は爪を剥き出しにして対応する。

ぎゅいん

とても金属と爪が混じり合ったようには見えない音。

「これで分かったでしょう。
 こいつはモンスター。
 いくら可愛くて友情染みてもれっきとしたモンスターなの。」

確かに金属の剣に対抗できる爪を持っていれば人間なんていともたやすく倒せる。

「にゃにゃ。」

猫叉は唾理合いを嫌ったのか後ろに下がった。
そうはさせまいとそのまま押し切り毛をいくらか刈りながら唾理合い持ち込む。

「ネコちゃん唾理合いは不利だから離れて。」
「ちょっと涼奈はどっちの味方よ。」
「彼氏の味方だよ。
 それに唾理合の剣舞(ヒヨルスリムル)なんて呼ばれてる人に唾理合いをされたら不利にもほどがあるでしょう。」

ヒヨルスリムルはそもそも剣の女戦士としてのヴァルキリー、死者を誘う女死神の名だ。

「ヒヨルスリムルは剣の女戦士ともう一つ意味を持っているのは知ってるよね。」
「俺はあんまり詳しくないけど確か騒音?」
「そう唾理合いになればその意味が分かるよ。」

唾理合いながらも相手を切ることのできる技術。
目を見張るほどの駆け引きの連続を見せているが猫叉の様子がおかしい。
距離を取ろうとし続けている。
時間にしてほんの数秒程であったが自分が一方的に読まれていると感じているのなら攻撃に転じさせに行くのがセオリーだし今までも出来ていた。

「唾理合いの騒音は唾理合いをしているモノにしかわからない。」

猫叉は恐慌状態になっている。
金属音は動物たちにとって不快な音声に繋がる。
どの生物にも言えることで危険を知らせるためとも言われている。

「椿ちゃんのスキルは剣術関係ではないんだ。
 剣に付与する形のスキル。
 私は内容を知っているけど勝手に話すわけにはいかないしね。」
「ってことはあの剣技は自前ですか。」
「うんそうだよ。」

滑らかに力を殺し攻撃をする。
相手の武器をそっと封じたまま行われる剣技も相当なものだし攻撃に使っている音のようなものも相まって相当戦いづらい相手を猫叉している。
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