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森を抜け草原地帯に来た。
まだ道らしい道は見えていないが方向感覚が狂うことはないと判断できる位置にまで来ていた。
「ここまで。」
これ以上は先ほど口契約以上のこととなるのでサービスする気は無い。
ミウスはあくまでも優先すべきは
幹≧自分(ミウス)>その他程度のモノでしかない。
つまり今この瞬間も幹が穏便に済ませたいから仕方がなく案内しているのに過ぎない。
「ありがとうございます!」
「じゃあこれで。」
「えっと折角ですしお茶でも致しませんか。」
それなのにこの女は更なる時間の消費を生ませようとするのか。
意味が解らない。
そもそもお礼なんてただの自己満足であるべきものなのだ。
お礼を求めるは自己の行動を損得で考えることにある。
悪を知らぬものに正義を説く愚かモノと何ら変わりない。
「お断り。」
「申し訳ございませんがこちらにも仕事がありますのでこれにて失礼いたします。」
「でも……。」
好意の押し付けは悪意だ。
今の現状に満足している自分たちにとってこれ以上の改善は還って毒になる。
これ以上、こちらに関りを持つようなら。
彼女は角を出そうとした。
「お嬢様、先ほども申し上げました通りです。
これ以上のお誘いは迷惑になります。
私どもはこの森を抜けていてもこの方々の上に立つモノではありません。
よくて対等、通常であれば我々が下々の存在になってもおかしくない方々なのです。」
「え?」
王女は妙なところで知恵が回っていた。
森の中なら彼らの方が上の身分になるだろうが森を抜ければこちらの領地になるので国の頂点たる王族の自分ならば上が存在しないと考えていた。
だがそれは排他的種族でない場合。
また国の脅威をものともしない存在。
もしくはどうでもいいと感じている存在を除く。
盗賊は何故いるのか。
国に恨みを持ったり満足のいく収入が見込めなくなると多々現れる。
故に国は治安を上げることで王族としての権威を保ちつつ盗賊にさえ言葉納得させられるだけの材料になりえる。
しかしそれらに該当しない条件を持つ彼らにとって王族も奴隷もただ死ぬことに変わりない。
それだけで生物的な存在にしか見えていない。
民の価値観の違いを正そうとするのが勉学であり教育という名の洗脳でもある。
しかしこの洗脳には弱点がある。
集団的意識を用いて行われるそれは皆と違う人物には一切聞かずむしろ洗脳に疑問を持つ人間が生まれていく。
そして他国からの価値観を持つモノ
海辺に住み海辺の価値観を持つモノ
山間部に住み山間部の価値観を持つモノ
これらを統合するために学園は存在する。
それが当たり前の国がボジタット王国だった。
「再三申し訳ございません。
ボジタット王国の現状をお伝えしていない私どもの不徳の致すところであります。」
「なら何故この場に連れてきた?」
「申し訳ございません。
今ここでお伝えするわけにはございません。」
答えは既にある程度の予想は出来ているがこの場で教えなかった事実が重要だ。
客人に対して秘密にするという矛盾した行動をしている自覚をした。
これより自分は隠し事をしているので相手が信用しなくても良い構図が出来上がる。
「それじゃあアンタらとこれ以上会う必要もないな。
お礼も良いからもう来ないでくれ。
これ以上俺の土地に踏み入るようなら敵とみなす。」
「それは困ります!
メアリー話してください。」
「リザベル殿下、ならば姫様はこの状況をどうみますか。
学園にも留学生は何人かいたはずですがそれらを鑑みてあなたの答えをお聞かせ願いたい。」
今ここでリザベル殿下の真価を測るときだと悟った。
騎士メアリー・クロスの真価を測るべく時として絶好のタイミングと言えた。
しかし彼女は一つだけ欠如しているところがあった。
「茶番に付き合う気は無い。
帰るよミウスさん。」
「うん。」
彼らがその間まで待っているとは限らない。
彼女は常識人ではあった。
平民に対しての理解もあった。
でもひとつだけ理解できなかったものがあった。
「…お前ら……いつまでも………自立できると思うな………。」
ミウスは静かに怒りを燃やしていた。
王女には慰めてもらった恩は在れど彼女の本質は野生動物のそれだ。
一日で足を踏み入れ立たなければならない彼女は自立するための時間を与えられることなく母が神となった。
自立する間もなく生きなければならなかった。
彼女は確かに生物としての格は強い。
この森を軽く支配できるくらいには強い。
でもずっとそうだったわけではない。
天敵と呼べる存在はあふれかえっていた。
何も大きな動物だけがこの土地の脅威ではない。
毒を持った生物も居れば無味無臭の毒草だってある。
それらを教えてもらう前に終わってしまった子育て。
「…親が…面倒見てくれる…それが……羨ましい……。」
「ミウスさん、もういいから行こう。」
ミウスの気持ちはわからないが幹も共感できることはあった。
だからミウスも幹の気持ちに共感できる。
幹の身の上の話を幹の祖父、根々から聞いた時は思わず彼と一緒に傷を舐め合いたいと思った。
でも共感をしたら彼女の人生を否定することになる。
「…だめ……もっと伝える………。」
まだ道らしい道は見えていないが方向感覚が狂うことはないと判断できる位置にまで来ていた。
「ここまで。」
これ以上は先ほど口契約以上のこととなるのでサービスする気は無い。
ミウスはあくまでも優先すべきは
幹≧自分(ミウス)>その他程度のモノでしかない。
つまり今この瞬間も幹が穏便に済ませたいから仕方がなく案内しているのに過ぎない。
「ありがとうございます!」
「じゃあこれで。」
「えっと折角ですしお茶でも致しませんか。」
それなのにこの女は更なる時間の消費を生ませようとするのか。
意味が解らない。
そもそもお礼なんてただの自己満足であるべきものなのだ。
お礼を求めるは自己の行動を損得で考えることにある。
悪を知らぬものに正義を説く愚かモノと何ら変わりない。
「お断り。」
「申し訳ございませんがこちらにも仕事がありますのでこれにて失礼いたします。」
「でも……。」
好意の押し付けは悪意だ。
今の現状に満足している自分たちにとってこれ以上の改善は還って毒になる。
これ以上、こちらに関りを持つようなら。
彼女は角を出そうとした。
「お嬢様、先ほども申し上げました通りです。
これ以上のお誘いは迷惑になります。
私どもはこの森を抜けていてもこの方々の上に立つモノではありません。
よくて対等、通常であれば我々が下々の存在になってもおかしくない方々なのです。」
「え?」
王女は妙なところで知恵が回っていた。
森の中なら彼らの方が上の身分になるだろうが森を抜ければこちらの領地になるので国の頂点たる王族の自分ならば上が存在しないと考えていた。
だがそれは排他的種族でない場合。
また国の脅威をものともしない存在。
もしくはどうでもいいと感じている存在を除く。
盗賊は何故いるのか。
国に恨みを持ったり満足のいく収入が見込めなくなると多々現れる。
故に国は治安を上げることで王族としての権威を保ちつつ盗賊にさえ言葉納得させられるだけの材料になりえる。
しかしそれらに該当しない条件を持つ彼らにとって王族も奴隷もただ死ぬことに変わりない。
それだけで生物的な存在にしか見えていない。
民の価値観の違いを正そうとするのが勉学であり教育という名の洗脳でもある。
しかしこの洗脳には弱点がある。
集団的意識を用いて行われるそれは皆と違う人物には一切聞かずむしろ洗脳に疑問を持つ人間が生まれていく。
そして他国からの価値観を持つモノ
海辺に住み海辺の価値観を持つモノ
山間部に住み山間部の価値観を持つモノ
これらを統合するために学園は存在する。
それが当たり前の国がボジタット王国だった。
「再三申し訳ございません。
ボジタット王国の現状をお伝えしていない私どもの不徳の致すところであります。」
「なら何故この場に連れてきた?」
「申し訳ございません。
今ここでお伝えするわけにはございません。」
答えは既にある程度の予想は出来ているがこの場で教えなかった事実が重要だ。
客人に対して秘密にするという矛盾した行動をしている自覚をした。
これより自分は隠し事をしているので相手が信用しなくても良い構図が出来上がる。
「それじゃあアンタらとこれ以上会う必要もないな。
お礼も良いからもう来ないでくれ。
これ以上俺の土地に踏み入るようなら敵とみなす。」
「それは困ります!
メアリー話してください。」
「リザベル殿下、ならば姫様はこの状況をどうみますか。
学園にも留学生は何人かいたはずですがそれらを鑑みてあなたの答えをお聞かせ願いたい。」
今ここでリザベル殿下の真価を測るときだと悟った。
騎士メアリー・クロスの真価を測るべく時として絶好のタイミングと言えた。
しかし彼女は一つだけ欠如しているところがあった。
「茶番に付き合う気は無い。
帰るよミウスさん。」
「うん。」
彼らがその間まで待っているとは限らない。
彼女は常識人ではあった。
平民に対しての理解もあった。
でもひとつだけ理解できなかったものがあった。
「…お前ら……いつまでも………自立できると思うな………。」
ミウスは静かに怒りを燃やしていた。
王女には慰めてもらった恩は在れど彼女の本質は野生動物のそれだ。
一日で足を踏み入れ立たなければならない彼女は自立するための時間を与えられることなく母が神となった。
自立する間もなく生きなければならなかった。
彼女は確かに生物としての格は強い。
この森を軽く支配できるくらいには強い。
でもずっとそうだったわけではない。
天敵と呼べる存在はあふれかえっていた。
何も大きな動物だけがこの土地の脅威ではない。
毒を持った生物も居れば無味無臭の毒草だってある。
それらを教えてもらう前に終わってしまった子育て。
「…親が…面倒見てくれる…それが……羨ましい……。」
「ミウスさん、もういいから行こう。」
ミウスの気持ちはわからないが幹も共感できることはあった。
だからミウスも幹の気持ちに共感できる。
幹の身の上の話を幹の祖父、根々から聞いた時は思わず彼と一緒に傷を舐め合いたいと思った。
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