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「っ……でも私はあなたと友達に成りたいです。」
「ならあなたの言う友達の定義を教えていただけますでしょうか。」
「私の言う友達は…友達は……。」
ありきたりなおしゃべりしたりお弁当を食べる程度の中のことを差すのなら一昨日きやがれと追い出されることに違いない。
かと言って綺麗事を並べても心に響く人物でもない。
政治家の演説に耳を貸さない若い国民のように興味を抱かれなければ意味がない。
だから興味を持たれる答えを出さなければならなかった。
「私の言う友達は衝突し合って絶交する友達です。」
「最初から絶交することが前提なら作らなければいいんじゃないかい?」
「いいえ、違います。
絶交するくらいに仲が良い人に成りたいんです。
絶交して悔いて仲直りしたいって心の底から思う人じゃなきゃ友達とは呼べません。」
「そう、ならもう僕に用事は無いね。」
言いたいことは言った。
だからもうするべきことはもうないはずだ。
挑戦なんだ。
これから彼と友達になるために必要な挑戦。
大いに嫌われるかもしれない。
付き纏ってしまうかもしれない。
そんな不安が心を過ぎる。
でも幹さんの部屋から私は出ることにした。
「お嬢様。」
「なんですか?」
「いえ、私としてはまだ小さいころからお仕えしている身ですがとても前に進むことを決意した眼になったと思っただけです。」
「それは褒めているんですか?」
侮蔑にも似た言葉に聞こえた。
前に進むことをやっと決意した、まだ前に進んでいないともとれる発言だ。
間違っては無いと思う。
病院に居た頃から思考回路は前に進もうとからげんきをしていた気もするし今みたいに自分から前を必死に向こうとしているのは案外初めての経験をしている気がした。
「それだけ刀赤 幹様に惚れていらっしゃるのですね。」
「ほ、惚れる?」
「おっと失礼しました。
今の言葉はお忘れくださいませ。」
斎花(さいか)は自分の娘の詩と同じくらいに明日香を育ててきた自負がある。
だから娘の成長に恋が絡むという一種の恋愛小説のようなシチュエーションに喜びを隠すことができないあまり無自覚の恋から自覚の恋への呼び水をしてしまった。
「恋、これが恋。」
知らない感情を噛みしめるようにゆっくりと現状をテイスティングしていく。
甘酸っぱい、ではなくほろ苦い中にほんの少しの甘みのあるフレッシュコーヒーの味わい。
「なんというか恋って甘酸っぱいものだと思っているのですがこのほろ苦さは恋なのですかね。」
斎花にも聞こえない心の中でそっと心に言い聞かせるように噛みしめた。
「ならあなたの言う友達の定義を教えていただけますでしょうか。」
「私の言う友達は…友達は……。」
ありきたりなおしゃべりしたりお弁当を食べる程度の中のことを差すのなら一昨日きやがれと追い出されることに違いない。
かと言って綺麗事を並べても心に響く人物でもない。
政治家の演説に耳を貸さない若い国民のように興味を抱かれなければ意味がない。
だから興味を持たれる答えを出さなければならなかった。
「私の言う友達は衝突し合って絶交する友達です。」
「最初から絶交することが前提なら作らなければいいんじゃないかい?」
「いいえ、違います。
絶交するくらいに仲が良い人に成りたいんです。
絶交して悔いて仲直りしたいって心の底から思う人じゃなきゃ友達とは呼べません。」
「そう、ならもう僕に用事は無いね。」
言いたいことは言った。
だからもうするべきことはもうないはずだ。
挑戦なんだ。
これから彼と友達になるために必要な挑戦。
大いに嫌われるかもしれない。
付き纏ってしまうかもしれない。
そんな不安が心を過ぎる。
でも幹さんの部屋から私は出ることにした。
「お嬢様。」
「なんですか?」
「いえ、私としてはまだ小さいころからお仕えしている身ですがとても前に進むことを決意した眼になったと思っただけです。」
「それは褒めているんですか?」
侮蔑にも似た言葉に聞こえた。
前に進むことをやっと決意した、まだ前に進んでいないともとれる発言だ。
間違っては無いと思う。
病院に居た頃から思考回路は前に進もうとからげんきをしていた気もするし今みたいに自分から前を必死に向こうとしているのは案外初めての経験をしている気がした。
「それだけ刀赤 幹様に惚れていらっしゃるのですね。」
「ほ、惚れる?」
「おっと失礼しました。
今の言葉はお忘れくださいませ。」
斎花(さいか)は自分の娘の詩と同じくらいに明日香を育ててきた自負がある。
だから娘の成長に恋が絡むという一種の恋愛小説のようなシチュエーションに喜びを隠すことができないあまり無自覚の恋から自覚の恋への呼び水をしてしまった。
「恋、これが恋。」
知らない感情を噛みしめるようにゆっくりと現状をテイスティングしていく。
甘酸っぱい、ではなくほろ苦い中にほんの少しの甘みのあるフレッシュコーヒーの味わい。
「なんというか恋って甘酸っぱいものだと思っているのですがこのほろ苦さは恋なのですかね。」
斎花にも聞こえない心の中でそっと心に言い聞かせるように噛みしめた。
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