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「その匂い。
 餓鬼の中でも最上級の力。」

餓鬼と呼ばれる鬼は何種類も居る。
鬼の中でも雑兵に数えられる。
基本的にはただの雑兵。
しかし最上級となる餓鬼はわけが違う。

「獄卒の一歩手前。
 地獄道の鬼。」
「幾度の輪廻を回ってきた鬼たちは人間道に変えることがしばしある。
 そこに行く前には必ず地獄道を通る。」

地獄道は入ったら最後抜け出すまで苦労する場所だ。

「言っとくが私は60回だ。」

今度は彼女が炎を出し蹂躙する番だった。

「蹂躙する炎か。
 地獄の業火っぽくってカッコいいねえ。」
「怒ってんのに口が減らないとは優秀だね!」

地獄の業火に包まれているのに一切の危険を感じていない。
それに暑さで汗が出る筈なのに顔色一つ変えていない。

「あんたほんとなにもんだい。
 餓鬼と契約してもここまでの能力は得られない筈なんだけどね。」
「なんだあんたも知らないのか。
 契約に制約を重ねただけさ。」
「鬼の制約を重ねたね合点逝ったけどどんな制約だい。」
「そいつは言えない決まりだな。」

めんどくさい縛りを設けたもんだ。
愚痴を零したくもなる。

「めんどくせえ、めんどくせえ!!」

だが怒りは待ってくれない。

攻撃。
そう攻撃。

「めんどくせえ。」

地味すぎる攻撃のオンパレード。
それこそ児戯よりも地味。
殴る蹴るではなく日常動作の一部として行われる失敗を基にした攻撃。
攻撃としか表現のしようのない陰湿で地味な攻撃は女王の冷静さを欠如させるには十分だった。

「ああもうこれでも喰らって寝てろ!」

気絶させられる程度にまで威力を落とした拳を振り上げた。
しかしそれが仇となる。

日常の失敗を利用すればそれを空振りにさせてより大きな攻撃にさせたうえでさらに失敗をさせる。
失敗が失敗を重ねる負の連鎖を生ませた。

「並列思考を忘れてはいかんというのに。
 甘いねえ。」

自分の攻撃によって自滅させられた女王は顔から血を出していた。

「正直舐めていたけどここまで怒っている状態でなんで冷静な攻撃しかださないんだ。」
「そりゃあ俺が人を自分で傷つけることをとことん法律に引っ掛かるからブレーキをかけているのさ。
 だから正当防衛で避けたっていう口実を作ったうえで自滅させているに過ぎん。
 こいつの中ではアンタは人。
 あのカオス神を頼ったのは人以外で思う存分ぶつけられる存在を探していたからに過ぎん。
 そろそろやめておくかい?
 本体も落ち着いてきそうだし。」
「私が納得が行かねえから一発本気で行かせろ。」

ならこっちも本気の一発を当てるよ。

女王はもろに一発喰らって視界が暗転した。
鬼の油断する間に殺せ。
桃太郎のときから言われている鬼を殺害するための常套手段だった。
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