換金スキルとショップスキルでバグ技大金持ち〜無限に増える1円玉でスキルを買いまくる～

72-1

「起きた。」

眼を見開けばミウスさんが居た。

「ここは？」
「賢者の家。」
「そっか。」

まだ異世界のようだ。
事の顛末を聞けばカオス神のから連絡があったらしく、ミウスさんがここまで運んできてくれたらしい。

「ありがとう。」
「いい。」
「ちょっと町に行く？」
「行く。」

聞かない優しさがこれほど身に染みるのは久しぶりではないだろうか。
親しい人ほど構いたくなるもので泣いた日には何があったのかを聞きに来る。
ミウスさんは聞かないくらいにはパーソナルスペースを理解したみたいだ。

幹のパーソナルスペースはとても広い。
臆病と称される日本人のパーソナルスペースをさらに広めたような形をしているから友達が出来なくて当然。
友達に成ろうとするのならその感性を完璧に理解しないと離れていくのがオチだ。
ミウスは惚れているだけあってその距離感を完璧につかみかけていた。

逆に言えばほとんどの人物はそのパーソナルスペースの距離感を掴めていない。
白虎と鬼の女王も含めてだ。
幹の中から生活を見れると言ってもそれは心を理解できるわけではない。
餓鬼に付け込まれたかもしれない隙があるとするならそれかと思われた。

「行く前に言いたいことある。
　いい？」
「良いけど？」
「人間は孤独を好む人は居ても孤独に耐えきれる人は誰一人としていない。」
「……知ってるよ。」
「私もそうだからもしそうなったときに一緒に居てもいい？」

今この状況下で言われてもあざとすぎるだけだ。
それが解って行っているに違いない。
ミウスは距離感の測り方を幹にしか焦点を当てていない。

「間違った。
　冒険、ゲーム、なんでもいいから一つの目標を共有しても良いですか。」

どこで覚えたのか知らないがその文脈はとても懐かしい言葉に感じられる。

それがなんともこそばゆく恥ずかしいのか。
直接的に好きと呼ばれるよりも日本人の恋が焦がれる作法を頑張って再現しようとする健気な少女、
思春期におぼつかない考えをまとめようとしつつ自分の持っている価値観と向き合って相手に最も伝わるやり方を考える。

「コンコルドの誤りにもほどがあるよ。」

小さく考えていたことを言葉にして身支度を始めた。

ミウスさんはその言葉に満足したのかは知らないが静かに身を引いた。

「家の外で待ってるね。」

独りになって彼女の言った言葉を一つ一つ飲み込んでいく。

「孤独を好むものは居ても孤独に耐えきれるものは誰一人としていないか……。」

孤独を好むものは孤独とは言わず孤高と呼ばれる存在になっていく。
言わずも知れた才能の世界と呼ばれたりして孤高の天才と言われたりする人物を作りたがる。
これも集団心理の一つで人との優秀さの違いを異物として扱う心理となる。