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ニカっと笑ってとりあえず酒を出す。

「宗教によっちゃ特定の生物を喰わなかったり酒が禁制かもしれねえ。
 まああんちゃんたちは自分で取った自然の恵みしか頂かないってやろうじゃないとは思うがそういうケースもある。
 でも彼らを楽しませることができるのは何もモノを送ることじゃねえんだ。
 あのあんちゃんにはお礼をできないが神牛様にはお礼ができるかもしれないだろ。」
「神牛様にですか?」
「そこの暗部の姉ちゃんにも命じたことだよ。」

色仕掛け。
それを神牛様にやってもらうのだろうか。

「俺が言いたいのはあんちゃんが神牛様と結ばれやすい状況を作れってことだわ。」

シチュエーション作り。
これに燃えない乙女はいない。
何よりも二人の恋仲具合を間近で見られるチャンス。

「最高の酒の肴作りだな。」
「でも面白そうですね。」
「おいおいあくまでもあんちゃんをその気にさせる方法だぜ。」
「ふむ殿方ってどんなことをすればこちらに気を引いてくれるのでしょうか。」

明らかに神牛様は好意を向けていることは確かでそれを気づいている男性の彼に対してその気にさせるのは至難の業ではない。
気づいていて手を出していないのは嫌いなのか興味がない。
もしくは彼自身に何らかのコンプレックスを持っていてその気に慣れないパターン。

前者であるならばそもそも同行を許可していないだろうし興味がないなら構うことはない。
よって後者であるコンプレックスを持っているパターンと考えられるのが妥当だった。

「前も言っていたがあんちゃんは傷跡があったことがトラウマになってる。
 今は神牛様が治したのかは知らねえがきれいさっぱり消えている。
 多分あんちゃんが望んでやったことではないだろ。」
「どうしてですか?」
「傷があると人の悪意も見えやすいんだよ。
 あそこまで大きな傷を持ってれば同情だったり忌避の目で見られることの方が多い。
 傭兵稼業やってたやつらでもあそこまでの傷はそうそうお目にかかれるもんじゃねえ。
 人の本質を勘繰るクセが付いちまうんだ。
 もしその根源を担った傷がぱっと無くなっちまえば誰だって聞きたくなる。
 今まで人間の本質を探ろうとしちまったクセが悪意を感じさせ正直になれないのさ。」
「あなたはとても詳しいですね。
 ただの村人からの盗賊とは到底信じられないと思うほどに博識です。」

元盗賊のあんちゃんは一村人とは思えないほどの知識の豊富さを出していた。

「そちらの方は元々は旅人であった父親から預けられてその村に定着したお方ですので他国についても我々以上に知っていることが多いですよ。」
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