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「とりあえず今日はもう帰るけど良い?」
「うん、今度は街を案内できると思う。」
「やっぱりなんか持ってたの?」
「おかあさんといっしょにここに来た気がするからなんか持ってたと思う。」

人間形態になったのは恋をしたからだと言っていたがその前にここに来たことがあるとは、元から人間形態や他の形態に成れたのかもしれない。
もしくは自分が覚えていないくらい前に覚えた技能で自分と会うまで忘れている線も考えられる。

「ん、思考禁止。」
「いやいや。」

思考禁止ってどんな理不尽?
ちょくちょく心を読まれているが彼女には俺の表情はわかりやすいのかもしれない。
もっとポーカーフェイスを意識しなければ。

「この世界にもポーカーあるよ。」

そうですねポーカーを知らないと無表情って表現が正しいよね。
某宇宙の帝王軍の中にもポーカーってあるみたいだけどトランプっていろんな文明で作られているんだね。

「帰るよ。」
「ごまかした。」

会話だけ見れば仲の良い男女だ。
だから質が悪い。
どんどん外堀というか空気そのものを変えていく感覚が妙に気持ちよくて自分ものまれそうになってしまう。

「じゃ、お風呂入ってくる。」
「了解。」
「一緒に入る?」
「入らない。」
「一緒に入る?」
「入らない。」
「一緒に入る?」
「入らない。」
「む。」

3度目の正直でも狙っていたのかもしれないが俺には通用せぬ。

「なら明日香連れて入ってくる。」
「連れてくるって……。」
「ご近所だからすぐ。」

迷惑でだろという前にミウスさんは去っていた。
早いし一瞬で気配を消すのが巧過ぎる。

「大丈夫かね。」
「もう大丈夫か。」
「あ、じいちゃん。」

こちらも五覚が通用しないくらい静寂かつどうかした気配で扉を開けたじいちゃんが立っている。

「まだまだ心が未熟なようじゃな。
 儂の代で止めたつもりじゃったが幹の心が未熟に育ってしまったしのう。
 ここはひとつ大人の階段を昇とった方がええじゃろ。
 ほれ神牛様と一発やってこい。」
「下ネタ。」
「一皮むけんと男が廃るぞ。」
「断る。」
「おいおい、孫に童貞が恥とかセクハラにもほどがあるぞ。」

酒吞童子はじいちゃんを諭すように言っていた。

「それにおまえさん、元々孫には不干渉を貫いていただろ。
 今になって干渉するのは少々虫が良すぎないか。」
「お主もそれは一緒だろうに。
 もうじきこっちにアレが来るのだろう。
 それを相手にする私の身にもなってみろ便利屋じゃないんだぞ。
 曾孫の顔だって見たいわ。」
「じいちゃん、俺は生涯独身でいるつもりなんだけど。」
「安心しろ加藤家から嫁候補が送られてくると思うぞ。
 儂は自分で選んだがあ奴らは無理にでも血を残そうとするはずだ。」

じいちゃんも俺の身に何があったのかを大体理解している。
だからこそ深くは追及せず自分の欲望を言いつつも気を付けるべきところを言ってくれているようにも感じた。
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