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キャッツアイの石言葉は「洞察力」
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「「あ」」
私は今朝蒼汰さんの部屋に行く途中部屋に入ろうとするハイエナを見つけた。
私の憎き恋のライバルでもあるハイエナは名を山羽 来夢というらしい。
しかも幼馴染というアドバンテージ
疎遠でこそあったが学年も違えばそんなものだろう。
普通の幼馴染と違い互いを知り過ぎず知らなさ過ぎずの丁度いい塩梅。
この女だけには負けたくないと感じるくらいにはライバル視していた。
「おはようございます玲菜さん」
「おはようございますハイエナ」
挨拶をすれば返すくらいのことはするが油断ならない人物であるため警戒心を剥き出しにする。
しかしハイエナは全く意に返した様子はなく淡々と私に質問をしてきた。
「玲菜さんは今日は蒼汰君のご飯を作りに来たの?」
「当然です。蒼汰さんは朝ごはんを抜くこともありますし私が作った方が栄養があります」
「うん、そうだと思うけど蒼汰君が自分で作るのは自分の好みに合わせられるように作ってる面もあるし玲菜さんまだ和食はあまり作ってないでって春菊さんに聞いてたから蒼汰君にもお味噌汁くらいは作ってあげようと思って私も来たんだけど……」
「う」
そればかりはハイエナの言う通りだ。
私は和食の家庭料理を作るのが苦手だ。
特に味噌漉《みそこ》しが苦手でダマができやすく母にはまだまだ甘いと言われている。
それに炊き立てのご飯の匂いもあまり好きではない為好んで作ろうとはしなかった。
「ハイエナに頼るのは非常に心苦しいのですがお願いします」
私にとって非常に苦痛な決断だ。
ライバルの女に弱点を見せるの行為は競争《レース》というモノにおいてはきつ過ぎる。
だがこのハイエナの言動を鑑みるに私のことはお母さんが教えたのだと考えられる。
お母さんのことだ恋も平等、抜け駆け禁止とでも考えているのだろう。
お母さんの道もここまで行けばいっそ尊敬の念すら浮かぶ。
「私は蒼汰君が玲菜さんを選んでも気にしないよ」
「な!?」
恋愛の戦いにおいて手に塩を送られるのは最後に勝ちに行くという表現に他ならない。
NTRは許されない行為、しかし幸せの絶頂期に蒼汰さんを御護《ガード》りすることはほぼ不可能に近いだろう。
もちろんそんな無粋な真似はしないかもしれないそれでも信用しきれない。
ライバルとはある種の信頼と不信用によって生まれる闘争本能の権化
自分と同じ目標を持ち過程は違えど必ずやその目標に辿り着こうとする存在。
最も団栗の背比べレベルであることが大前提なのだが恐らくは今の状況下でならばそのクラスにはなっているだろう。
私にはハイエナの価値観はわからない。
私は最初から最後まで笑って居たいと思う人種だしハイエナのように蒼汰さんをただ支えられればいいと思うほど成人君主ではない。
「敵に塩を送るとは何事ですか?」
「塩、そう思われる手もしょうがない。でも私は蒼汰君さえ幸せならそれで良い。それ以上の幸せなんて私には大き過ぎる」
「手に余るですか……」
考えたことも無かった。
それは一般庶民なら理解できたかもしれない。
特にドルオタはわかるだろう。
手に届きそうで届かない存在だからこそあきらめることも手を伸ばしたくもなる。選択は自由だ。
でもそれは自分が本当に求め扱いきれるのかを考えなくてはならない。
例えばペットを飼うにしても気分やな猫などは本能によってかなり自由な行動もとるし一度避けられるようなことをすれば一生そっぽ向くと呼ばれるほど縄張り意識と警戒心の強い動物だ。
つまり猫を買っても好かれるように飼えるかどうかは別問題
来夢さんは蒼汰と結婚しても蒼汰に好かれるように成れるとは思わないという意味だった。
「私はそうは思いません。来夢さんは今蒼汰さんの求めているものが判っているその時点で結婚しても献身的に蒼汰さんの幸せを願い続けられる人間だと思います」
気が付いたら私は敵に塩を送っていた。
どうしてだろうか
本来、敵に塩を送るなんて愚の骨頂なのに……
「でもそのとき蒼汰君が浮気をしていたとしても私は許してしまう。それは蒼汰君のために成らない。でも玲奈さんならそれができる。だから私では蒼汰君を幸せにできるとは思わない」
「確かに蒼汰さんが二次元から三次元に目覚めたら浮気をするかもしれません。私ならそんなこと絶対にさせたくないと思います」
「なら……」
「ならじゃありません。来夢さんは蒼汰さんと一番近くで一緒に居たいですか居たくないですか!」
私は答えを迫った。
鬼気迫る威勢で……
これ以上にないくらい眉間に皺を寄せ
来夢さんの胸倉を掴みこんだ
「い、居たい!」
その言葉とともに私は胸倉を離し、今までのモヤモヤ感が嘘のように晴れた顔つきで
「これからは正真正銘のライバルでありお互いを高めあう仲ですよ来夢さん」
「うん玲菜さん。やっと私のこと名前で呼んでくれたね」
「それはあなたがあまりにも不甲斐なかったらですよ」
「ふふ、じゃあ蒼汰君にも春菊さんの居ない場所で自然に名前で呼んでもらえるように頑張ってね」
そういって来夢さんは蒼汰の部屋を開けて中に入っていった。
「って!私も行きますしすぐにでも追い付くんですからねーーー!!!」
近所迷惑も顧みず大きな声で胸の内を叫びだすのだった。
来夢さんのように名前で呼ばれる日はいつ来るのかは私にもわからない。
私は今朝蒼汰さんの部屋に行く途中部屋に入ろうとするハイエナを見つけた。
私の憎き恋のライバルでもあるハイエナは名を山羽 来夢というらしい。
しかも幼馴染というアドバンテージ
疎遠でこそあったが学年も違えばそんなものだろう。
普通の幼馴染と違い互いを知り過ぎず知らなさ過ぎずの丁度いい塩梅。
この女だけには負けたくないと感じるくらいにはライバル視していた。
「おはようございます玲菜さん」
「おはようございますハイエナ」
挨拶をすれば返すくらいのことはするが油断ならない人物であるため警戒心を剥き出しにする。
しかしハイエナは全く意に返した様子はなく淡々と私に質問をしてきた。
「玲菜さんは今日は蒼汰君のご飯を作りに来たの?」
「当然です。蒼汰さんは朝ごはんを抜くこともありますし私が作った方が栄養があります」
「うん、そうだと思うけど蒼汰君が自分で作るのは自分の好みに合わせられるように作ってる面もあるし玲菜さんまだ和食はあまり作ってないでって春菊さんに聞いてたから蒼汰君にもお味噌汁くらいは作ってあげようと思って私も来たんだけど……」
「う」
そればかりはハイエナの言う通りだ。
私は和食の家庭料理を作るのが苦手だ。
特に味噌漉《みそこ》しが苦手でダマができやすく母にはまだまだ甘いと言われている。
それに炊き立てのご飯の匂いもあまり好きではない為好んで作ろうとはしなかった。
「ハイエナに頼るのは非常に心苦しいのですがお願いします」
私にとって非常に苦痛な決断だ。
ライバルの女に弱点を見せるの行為は競争《レース》というモノにおいてはきつ過ぎる。
だがこのハイエナの言動を鑑みるに私のことはお母さんが教えたのだと考えられる。
お母さんのことだ恋も平等、抜け駆け禁止とでも考えているのだろう。
お母さんの道もここまで行けばいっそ尊敬の念すら浮かぶ。
「私は蒼汰君が玲菜さんを選んでも気にしないよ」
「な!?」
恋愛の戦いにおいて手に塩を送られるのは最後に勝ちに行くという表現に他ならない。
NTRは許されない行為、しかし幸せの絶頂期に蒼汰さんを御護《ガード》りすることはほぼ不可能に近いだろう。
もちろんそんな無粋な真似はしないかもしれないそれでも信用しきれない。
ライバルとはある種の信頼と不信用によって生まれる闘争本能の権化
自分と同じ目標を持ち過程は違えど必ずやその目標に辿り着こうとする存在。
最も団栗の背比べレベルであることが大前提なのだが恐らくは今の状況下でならばそのクラスにはなっているだろう。
私にはハイエナの価値観はわからない。
私は最初から最後まで笑って居たいと思う人種だしハイエナのように蒼汰さんをただ支えられればいいと思うほど成人君主ではない。
「敵に塩を送るとは何事ですか?」
「塩、そう思われる手もしょうがない。でも私は蒼汰君さえ幸せならそれで良い。それ以上の幸せなんて私には大き過ぎる」
「手に余るですか……」
考えたことも無かった。
それは一般庶民なら理解できたかもしれない。
特にドルオタはわかるだろう。
手に届きそうで届かない存在だからこそあきらめることも手を伸ばしたくもなる。選択は自由だ。
でもそれは自分が本当に求め扱いきれるのかを考えなくてはならない。
例えばペットを飼うにしても気分やな猫などは本能によってかなり自由な行動もとるし一度避けられるようなことをすれば一生そっぽ向くと呼ばれるほど縄張り意識と警戒心の強い動物だ。
つまり猫を買っても好かれるように飼えるかどうかは別問題
来夢さんは蒼汰と結婚しても蒼汰に好かれるように成れるとは思わないという意味だった。
「私はそうは思いません。来夢さんは今蒼汰さんの求めているものが判っているその時点で結婚しても献身的に蒼汰さんの幸せを願い続けられる人間だと思います」
気が付いたら私は敵に塩を送っていた。
どうしてだろうか
本来、敵に塩を送るなんて愚の骨頂なのに……
「でもそのとき蒼汰君が浮気をしていたとしても私は許してしまう。それは蒼汰君のために成らない。でも玲奈さんならそれができる。だから私では蒼汰君を幸せにできるとは思わない」
「確かに蒼汰さんが二次元から三次元に目覚めたら浮気をするかもしれません。私ならそんなこと絶対にさせたくないと思います」
「なら……」
「ならじゃありません。来夢さんは蒼汰さんと一番近くで一緒に居たいですか居たくないですか!」
私は答えを迫った。
鬼気迫る威勢で……
これ以上にないくらい眉間に皺を寄せ
来夢さんの胸倉を掴みこんだ
「い、居たい!」
その言葉とともに私は胸倉を離し、今までのモヤモヤ感が嘘のように晴れた顔つきで
「これからは正真正銘のライバルでありお互いを高めあう仲ですよ来夢さん」
「うん玲菜さん。やっと私のこと名前で呼んでくれたね」
「それはあなたがあまりにも不甲斐なかったらですよ」
「ふふ、じゃあ蒼汰君にも春菊さんの居ない場所で自然に名前で呼んでもらえるように頑張ってね」
そういって来夢さんは蒼汰の部屋を開けて中に入っていった。
「って!私も行きますしすぐにでも追い付くんですからねーーー!!!」
近所迷惑も顧みず大きな声で胸の内を叫びだすのだった。
来夢さんのように名前で呼ばれる日はいつ来るのかは私にもわからない。
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