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アケビの花言葉は「才能」7
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「お前ら、報告だ。とりあえずお前らの襲ったクマは狂犬病を持たない個体であることがわかったぞ。昔、捕獲されて予防接種を受けさせた後に放したことがマイクロチップに記録してあった」
「マイクロチップ?」
「普通はオオサンショウウオとかの環境保護生物に着けるチップなんだがクマとかも生態系に影響を及ぼす生物だったからな。山への影響も考えて人里離れたところに放ったらしいんだがどうやらこの辺りまで戻ってきてしまったらしい」
「そんなものを植え付けるんですね」
「クマは日本の地上生態系ピラミッドの頂点だから増殖したのかそうでないのか調査した上で話さないと野生動物が瞬く間に増えてしまうし人工的に針葉樹の森にしてしまった地域はクマの生息域である落葉樹の生息域が分断されて遺伝子の入れ替えが出来なくなって絶滅したとされた地域もある。その場合野生動物が爆発的に増えたという報告もあるほどだ。エゾシカのことは中学の授業でやったよな。あれはオオカミを殺した人間がその代わりにシカを取ることで生態系のピラミッドの頂点が入れ替わるだけに澄んだ事例だ。人間のせいで住処を追われるのもまた食物連鎖の一部かもしれん。だがそれでクマに襲われて文句を言うのは間違ってるってことだな」
忍先生は生徒を安心させるとともに授業を展開していく。
生物専攻の先生なだけはあってそういったことには詳しいし今回のハイキングも急遽とはいえ忍先生が企画したものなのだろう。本来団体で行くとおころを少数で近くに分散させていくことで様々な生物に触れてほしかったのだろう。一応全員にクマよけの鈴を渡していたこともあり、そしてクマも出るかもしれないという勧告、クマは出るかもしれないという認識はさせていた。
「きちんと対策をしていてもクマには会う。ましてや最近だと人里に降りてくるクマも多い。人なれしてしまったクマにはもうクマ避けは意味が無くなる。それだけ過去の時代が作ってきた負の遺産が溢れているとも言える。だが勘違いするなよそれだけ負の遺産があるってことは発展にはそれ相応の犠牲も必要だったってことだ。国交による外来生物の流出然り、エネルギー物質の有害物質然り、発展途上国だって先進国がやってきたことを真似したいのにさせてくれない理由は先進国の二の舞を踏んで欲しくないっていう綺麗ごとから来ている。お前らはこれからその負の遺産と向き合わなくてはならない世代になる。そのことキチンと頭には入れておけよ」
「「「はい」」」
「……はい」
秋芽さんは風呂に入って顔色が良くなったと思っていたが声にハリもなく笑顔もない。
余程クマに襲われたことがショックだったと思うが人の人生を考えれば失敗は必ずするし増してや生徒会長という立場だ。
大きな失敗をしない方がおかしい。
例え経験者に聞いたとしても過去の現場と現在《いま》の現場は違う。
過去の経験を用いることが必ずしも成功に繋がるというわけではないのだ。
我々は歴史から学ぶことは、人間は決して歴史から学ばないこと。
ヘーゲルの名言の一つに例えられるこの言葉、過去をいくら学んでも過去を学ぶことはできないとも取れるこの名言にある通り人は過去から学ぶことはできない。あくまで真似するだけだと伝えたいように思える。
歴史から学べ、この言葉ある種の呪いかもしれない。
秋芽生徒会長は人に頼り引っ張っていく力は誰よりも、高いだろう。人を惹き付ける力が優れていてさらに人を引っ張る力を持てば必ず増長する。
一種の全能感のようなモノが芽生えてしまうのだ。
それが芽生えないのは失敗をした者か相反する性格のモノかの二択だ。
秋芽生徒会長は失敗を知らなかった。
人を引っ張て行く上での失敗を知らなかったのだ。
彼女の周りにはイエスマンだらけではなかった。だが最終的に決めるのは己、生徒会長という構図を作ってしまった。
生徒会長の意見は生徒全員の総意だと誤認してしまった。
故に彼女は神になってしまった。
天狗のように驕り高ぶるわけでもなく最善を尽くそうともう遅いにならないように行動していた。だが全能感を捨てきれるわけでは無かった。
人にできないことが出来るわけでもない。人よりも秀でて優秀なわけでもない。しかし人を惹き付け引っ張っていく力はある。
故に現人神になってしまった彼女は一度堕ちたら立ち直るまでに物凄い時間がかかるだろう。
「それでいいのかい?甘夏さんは秋芽さんの元気いっぱいの笑顔が見てて嬉しいって言ってたよ」
「……でも………………」
「でもじゃないよ。クマに襲われて自分の判断が間違っていたかもしれないなんてよくあることじゃないか。忍先生だって冷静に対処してくれたけど最初はアタフタめいていたはずだよ。現場と勉強が違うのは今に始まった話じゃない。それを今知れただけでもいいことだと思うよ。この過去を真似しないように気を付けよう」
「流石蒼汰だな。うちの首席なだけはある。秋芽、コイツのことは気にするな。ここまで行ける奴はお前たちの年齢だと中々居ない。ましてやコイツみたいに経験でモノを語る奴はな。まあ後は親友と話してな」
秋芽さんは静かに扉の方を振り向いた。
「マイクロチップ?」
「普通はオオサンショウウオとかの環境保護生物に着けるチップなんだがクマとかも生態系に影響を及ぼす生物だったからな。山への影響も考えて人里離れたところに放ったらしいんだがどうやらこの辺りまで戻ってきてしまったらしい」
「そんなものを植え付けるんですね」
「クマは日本の地上生態系ピラミッドの頂点だから増殖したのかそうでないのか調査した上で話さないと野生動物が瞬く間に増えてしまうし人工的に針葉樹の森にしてしまった地域はクマの生息域である落葉樹の生息域が分断されて遺伝子の入れ替えが出来なくなって絶滅したとされた地域もある。その場合野生動物が爆発的に増えたという報告もあるほどだ。エゾシカのことは中学の授業でやったよな。あれはオオカミを殺した人間がその代わりにシカを取ることで生態系のピラミッドの頂点が入れ替わるだけに澄んだ事例だ。人間のせいで住処を追われるのもまた食物連鎖の一部かもしれん。だがそれでクマに襲われて文句を言うのは間違ってるってことだな」
忍先生は生徒を安心させるとともに授業を展開していく。
生物専攻の先生なだけはあってそういったことには詳しいし今回のハイキングも急遽とはいえ忍先生が企画したものなのだろう。本来団体で行くとおころを少数で近くに分散させていくことで様々な生物に触れてほしかったのだろう。一応全員にクマよけの鈴を渡していたこともあり、そしてクマも出るかもしれないという勧告、クマは出るかもしれないという認識はさせていた。
「きちんと対策をしていてもクマには会う。ましてや最近だと人里に降りてくるクマも多い。人なれしてしまったクマにはもうクマ避けは意味が無くなる。それだけ過去の時代が作ってきた負の遺産が溢れているとも言える。だが勘違いするなよそれだけ負の遺産があるってことは発展にはそれ相応の犠牲も必要だったってことだ。国交による外来生物の流出然り、エネルギー物質の有害物質然り、発展途上国だって先進国がやってきたことを真似したいのにさせてくれない理由は先進国の二の舞を踏んで欲しくないっていう綺麗ごとから来ている。お前らはこれからその負の遺産と向き合わなくてはならない世代になる。そのことキチンと頭には入れておけよ」
「「「はい」」」
「……はい」
秋芽さんは風呂に入って顔色が良くなったと思っていたが声にハリもなく笑顔もない。
余程クマに襲われたことがショックだったと思うが人の人生を考えれば失敗は必ずするし増してや生徒会長という立場だ。
大きな失敗をしない方がおかしい。
例え経験者に聞いたとしても過去の現場と現在《いま》の現場は違う。
過去の経験を用いることが必ずしも成功に繋がるというわけではないのだ。
我々は歴史から学ぶことは、人間は決して歴史から学ばないこと。
ヘーゲルの名言の一つに例えられるこの言葉、過去をいくら学んでも過去を学ぶことはできないとも取れるこの名言にある通り人は過去から学ぶことはできない。あくまで真似するだけだと伝えたいように思える。
歴史から学べ、この言葉ある種の呪いかもしれない。
秋芽生徒会長は人に頼り引っ張っていく力は誰よりも、高いだろう。人を惹き付ける力が優れていてさらに人を引っ張る力を持てば必ず増長する。
一種の全能感のようなモノが芽生えてしまうのだ。
それが芽生えないのは失敗をした者か相反する性格のモノかの二択だ。
秋芽生徒会長は失敗を知らなかった。
人を引っ張て行く上での失敗を知らなかったのだ。
彼女の周りにはイエスマンだらけではなかった。だが最終的に決めるのは己、生徒会長という構図を作ってしまった。
生徒会長の意見は生徒全員の総意だと誤認してしまった。
故に彼女は神になってしまった。
天狗のように驕り高ぶるわけでもなく最善を尽くそうともう遅いにならないように行動していた。だが全能感を捨てきれるわけでは無かった。
人にできないことが出来るわけでもない。人よりも秀でて優秀なわけでもない。しかし人を惹き付け引っ張っていく力はある。
故に現人神になってしまった彼女は一度堕ちたら立ち直るまでに物凄い時間がかかるだろう。
「それでいいのかい?甘夏さんは秋芽さんの元気いっぱいの笑顔が見てて嬉しいって言ってたよ」
「……でも………………」
「でもじゃないよ。クマに襲われて自分の判断が間違っていたかもしれないなんてよくあることじゃないか。忍先生だって冷静に対処してくれたけど最初はアタフタめいていたはずだよ。現場と勉強が違うのは今に始まった話じゃない。それを今知れただけでもいいことだと思うよ。この過去を真似しないように気を付けよう」
「流石蒼汰だな。うちの首席なだけはある。秋芽、コイツのことは気にするな。ここまで行ける奴はお前たちの年齢だと中々居ない。ましてやコイツみたいに経験でモノを語る奴はな。まあ後は親友と話してな」
秋芽さんは静かに扉の方を振り向いた。
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