時代を越えてお宝探し!?黒猫と僕らの時空大冒険

空道さくら

文字の大きさ
15 / 34
第1章

第15話:本当にそんなことできるの?

しおりを挟む
 澪たちはヘスペリデスの園を全力で駆け抜けた。

 色とりどりの果実が実る木々が左右に広がり、その輝きが周囲を照らす。
 だが、美しさに目を向ける余裕はない。

 背後から警備兵の怒声が響き渡り、重い足音と金属の音が近づいてくる。

 夏輝ナツキは振り返りながら険しい表情で叫んだ。
「急げ!追いつかれるぞ!」

 ミオは息を切らしながらも、必死で足を動かしていた。
「どうするの…このままじゃ捕まる…!」

 奏多カナタは肩で息をしながらも、周囲を見渡して急かすよう促した。
「あそこが出口だよ!早く出よう!」

 木々の間を駆け抜けるたびに、警備兵の怒声と角笛の音が背後から迫る。
 澪たちは息を切らせながら出口を目指し、全力で走り続けた。



 ついにヘスペリデスの園の外へ飛び出す。

 園を抜けた先には、鬱蒼とした森が広がっていた。
 日の光は木々の間からわずかに差し込み、森の中は薄暗く、静寂が支配している。

「走れ!止まるな!」
 夏輝が声を張り上げ、振り返ることなく先頭を走る。

「あと少しだ!絶対いけるって!踏ん張れよ!」
 ユーマが尻尾を一度勢いよく振り、力強く声を張り上げた。

「奏多、大丈夫?ついてきてる?」
 澪が振り返らずに、少し心配そうな声で叫んだ。

 奏多は息を整えながら、少し途切れがちな声で応じた。
「大丈夫…でも、後ろの警備兵に注意して…!」

 だが、背後の警備兵たちも懸命に追いすがる。
 甲冑がきしむ音と重い足音が近づき、迫り来る影が澪たちに緊張を強いる。

「どうするの、このままじゃ追いつかれる!」
 澪が息を切らしながら叫ぶ。

「大丈夫、全力で走り抜ける!」
 夏輝の声はぶれず、前を見据えたまま一直線に駆け続けていた。

 木々の間を縫うように走りながら、警備兵の足音がまだ背後から迫るのを感じる。

「おい!どっか隠れる場所探さねえとマジでヤバいぞ!」
 ユーマが焦り混じりの声で叫んだ。

 澪たちは走りながら周囲を見回し、近くの茂みや岩陰を探した。
 そして、警備兵の足音が再び近づいてくるのを感じた瞬間、慌てて身を潜める。

 ざわざわと揺れる葉音と、自分たちの荒い呼吸だけが耳に響く。
 警備兵たちの声が次第に遠ざかるものの、完全に静かになるまで、長い時間が過ぎたように感じられた。



 全員が息を潜め、息苦しさに耐えながらじっと身を縮める。

 澪が何度か顔を上げかけたが、夏輝がそっと手を挙げて制する。
 奏多は疲れた様子で汗をぬぐいながらも、わずかな音に敏感に耳を傾けていた。

 やがて、足音と怒声が完全に聞こえなくなった。

「……行ったみたいだね。」
 澪が小声で呟き、胸を押さえて安堵の息をつく。

「ったく、心臓止まるかと思ったぜ。」
 夏輝が額の汗を拭いながら笑みを浮かべる。

 ユーマが尻尾を振りながら鼻を鳴らした。
「ほらな。ちゃんと出れただろ。」

「本当に、よくやったね。全員無事でよかった。」
 奏多は肩で息をしながら、周囲を確認しつつ言った。

 明るい陽光が木々の隙間から差し込み、澪たちを包む。
 ヘスペリデスの園を抜けた彼らの顔には、達成感と次への不安が入り混じった表情が浮かんでいた。



 澪たちは足が重く感じるほどの疲労を抱えながら、少し開けた場所でようやく立ち止まった。

 澪はすぐに地面に腰を下ろし、息を整える。
 奏多は周囲を見渡しながら、警戒を怠らない。

 夏輝は軽く体を伸ばし、そのまま地面に腰を下ろした。
「腹が減ったな。走りっぱなしで、もう限界だよ。」

 澪がふと顔を上げ、空を見上げた。
「そういえば…今、何時だろう?」

 奏多が少し考え込んでから答える。
「来てから4、5時間くらいかな。でも、元の時間が放課後だったし…。」

 夏輝が腕を組み、首をかしげながら呟く。
「昼の時間帯に飛んできたから、元の時間と比べるとよくわかんないな。」

「ユーちゃん、一回家に帰ろうよ。こんな状態で動き回るのは無理があるし、食べ物もないんだから。」
 澪が少し困った表情でユーマを見つめながら言った。



「無理だよ。」
 ユーマはあっさりと言い放つ。

 尻尾をピンと立て、淡々と続けた。
「時間移動の魔法ってさ、めっちゃ魔力使うんだ。一日一回が限界なんだよ。だから、今すぐ帰るのは無理だな。」

 その言葉に、澪は困ったように眉を寄せ、視線を落としたまま考え込んだ。
「一日一回……じゃあ、どうすればいいの?食べ物もないし、このままじゃ……」

 視線を落とし、考え込む澪の隣で、夏輝が勢いよく立ち上がった。
「よし、まずは飯を探そう!」

 元気な声が重たい空気を一掃する。
「悩んでたって腹は減るばっかだし、とにかく動こうぜ!」
 夏輝が勢いよく声を上げた。

 奏多は冷静に立ち上がりながら提案する。
「そうだね。食べ物を手に入れる方法を考えよう。それだけでも状況は変わると思う。」

 澪がふと顔を上げ、提案した。
「それなら…街に戻ってみない?市場なら、何か食べ物を買えるかも。」

 その提案に、夏輝が顔を明るくしながら頷いた。
「おお!それいいじゃん!古代ギリシャの市場とか、なんか面白そうだな!」

 奏多は周囲を見渡しながら、落ち着いた声で言った。
「それが現実的だと思う。でも、警備兵がまだ近くにいるかもしれないから、慎重に行動しよう。」

 次の目的地として、街の市場を目指すことに決めた。
 澪たちは森を後にし、少しずつ歩みを進める。



「市場ってどんな感じかな?何か美味しいものがあるといいけど。」
 夏輝が明るく話しかけると、澪も小さく頷いた。

 奏多が少し考え込みながら口を開いた。
「でも…お金の問題があるよね。古代ギリシャの通貨がないと、何も買えないんじゃない?」

 その言葉に、澪がハッとしながら顔をしかめる。
「あ…確かに。何も考えてなかった…。どうしよう?」

 夏輝は腕を組みながらしばらく考えた後、軽い口調で提案する。
「いやいや、大丈夫だろ!俺たちで何か売れるものを探せばいいんじゃないか?なんなら、働いて手伝うとかさ!」

 ユーマが尻尾を振りながら鼻を鳴らした。
「はあ?そんな悠長なこと言ってる場合かよ。そんな時間ねえよ。」

 奏多は少し考え込むようにして言った。
「街に着く前に、何か方法を考えておかないとね。何か使えるアイデアがあるはずだよ。」

 足を緩めることなく、街への道を進みながら、お金の問題について知恵を絞った。



 ユーマが尻尾を軽く揺らしながら得意げな声をあげた。
「だったら、俺が魔法で石を金貨に変えてやるよ!」

 夏輝が目を輝かせてユーマを見ながら、勢いよく声を上げた。
「マジか!?それ、すごすぎるだろ!ユーマ、お前天才じゃん!」

 澪は少し驚いたように目を見開き、素直に声を漏らした。
「えっ、本当にそんなことできるの?」

 ユーマは鼻を鳴らしながら自信満々に言い返す。
「できるって!俺を誰だと思ってんだよ。こんなの朝飯前だっての。」

 夏輝が肩をすくめながら笑った。
「夕飯前だけどな。」

 奏多は微笑みを浮かべながらユーマを見つめ、落ち着いた声で言った。
「本当にできるなら助かるけど、金貨はちょっと目立つかもしれないね。この時代の市場なら、銀貨や銅貨の方が普通なんじゃないかな。」

 ユーマは鼻を鳴らし、自信満々に胸を張った。
「じゃあ銀貨にするよ。それで文句ないだろ?任せとけって!」

 澪たちは足を止め、ユーマの魔法が成功するのを固唾を飲んで見守った。



 ユーマが石を前足で挟み、集中して目を閉じた。
 その尻尾が小さく揺れ、周囲に静かな緊張が漂う。

 一瞬、空気がピリリと変わったような感覚が走り、ユーマの前足の間に挟まれた石が銀貨に変わった。

「できたぜ!」
 ユーマが銀貨を掲げて得意げに笑った。

 夏輝が目を輝かせて拍手をしながら叫ぶ。
「すげえ!マジで銀貨になってるじゃん!これなら市場でも普通に使えそうだな!」

 澪も驚きつつ微笑みを浮かべた。
「ほんとだ。ユーちゃん、すごいね!」

 ユーマはさらに周囲を見回しながら、いくつかの石を前足で寄せ集めた。
「よし、どんどん変えるぞ!これでしばらくは困らないはずだ!」

 次々と石を挟み、銀貨へと変える。
 変わるたびに銀貨が小さく反射して光った。

 その手際の良さに感心するように、奏多が息を飲む。
「すごい……こんなに簡単にできるなんて。」

 夏輝が横で感嘆しながら言う。
「ほんと、ユーマがいてくれて助かるわ。これで食べ物ゲットだな!」

 ユーマは尻尾を得意げに振りながら胸を張った。
「だろ?俺の魔法、完璧だって言っただろ!」

 澪は小さく頷きながら、みんなを見渡した。
「それじゃ、街に向かおうよ。」

 銀貨を手に、街の市場を目指して歩き始めた。
 遠くに見える賑わいに、自然と胸が弾むのを感じながら、澪たちの足取りは軽快になっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...