時代を越えてお宝探し!?黒猫と僕らの時空大冒険

空道さくら

文字の大きさ
23 / 34
第1章

第23話:何をする気なの!?

しおりを挟む
 ミオたちの前に広がるのは、迫り来る危機――そして巨大な影だった。

 大地を震わせながら動くラドン。
 その冷たい瞳が周囲を鋭く見据え、夏輝を逃すまいとしている。

「くそっ、気づかれた!」
 夏輝ナツキは足を止めることなく、全身の力を振り絞って地面を蹴った。

 背後ではラドンが低い唸り声を上げ、木々を薙ぎ倒しながら巨大な鎌首をもたげる。

「夏輝!」
 澪は叫び、夏輝の背中を追った。

 隣にいる奏多カナタもまた、険しい表情でラドンと夏輝の動きを見つめていた。
 指先のわずかな震えが、彼の焦燥を静かに物語る。

 一方、夏輝は汗を飛ばしながら黄金のリンゴの木を目指して走り続ける。

「絶対に――」
 荒い息の中、自分に言い聞かせる。

「絶対に間に合う!」
 夏輝は歯を食いしばり、全力で足を動かし続けた。



「お前の相手は私だ!」
 ヘラクレスが咆哮のような声を上げ、猛然とラドンの尾に飛びついた。

 両手でラドンの尾を掴むと、その巨体に引きずられるように足元が土を削り始めた。
 それでもヘラクレスは声を上げ、腕にさらに力を込めて踏みとどまった。

 ラドンは鋭い唸り声を上げると、長い体を大きく振り、尾を叩きつけるように地面を揺らした。
 激しい衝撃にヘラクレスはバランスを崩し、足元がよろめく。

「くっ……なんという力だ……!」
 ヘラクレスの全身が震え、ラドンの力に圧倒される。

 激しく動く尾に耐えようとするたびに、腕に伝わる衝撃が重くのしかかり、足元がわずかに沈み込む。

 ラドンはさらに尾を振り上げ、ヘラクレスを振り払おうとした。
 だが、ヘラクレスは歯を食いしばり、全力で抗い続ける。

「この程度で俺が屈すると思うな……!」
 必死に耐え続けるが、ラドンの巨体は圧倒的だった。

 澪は動けなかった。
 ヘラクレスがラドンに圧倒される姿に息を飲み、思考が止まる。

「どうしよう……!」
 声が震え、心の中で焦りが膨らむ。

 その横で奏多は冷静に状況を見つめ、眉間に皺を寄せていた。
「力じゃどうにもならない……。でも、このままだと……。」

 ラドンの動きと周囲の地形を見つめながら、策を探し続ける。
 二人の間に流れる緊迫した静けさが、次の一手を強く求めていた。



「結局、俺の出番かよ。」
 その時、ユーマが低く鼻を鳴らし、尻尾を軽く一振りして堂々と前へ出た。

 澪が驚いて声を上げた。
「ユーちゃん、何をする気なの!?」

 しかし、ユーマは振り返りもせずに言い放つ。
「ま、見てなって。俺がこいつをなんとかしてやるよ。」

 その小さな背中が、不思議なほど頼もしく見えた。

「時間を稼いでやるよ。」
 ユーマはその場に声を残し、ラドンの注意をそらすべく大胆な行動に出た。

「おい!そっちじゃないぜ、こっちだ、バケモノ!」
 ユーマは木陰から軽快に飛び出し、挑発するようにラドンを睨んだ。

 ラドンの瞳が一瞬ユーマに向く。
 その隙を突いてユーマは草陰を駆け抜け、さらにラドンから注意を引こうとする。

「どうした、鈍いんじゃないのか?」
 ユーマは走りながらラドンを振り返った。

 だがその瞬間、ラドンの尾が空を切り、風圧が草木を揺らした。
 ユーマの足元が揺らぎ、草木が音を立てて波打った。

「うわっ!」
 ユーマはバランスを崩し、足が木の根に引っかかって倒れ込んだ。

 木の陰から澪が心配そうに声を上げた。
「ユーちゃん、大丈夫!?」

 ユーマはバランスを崩しながら体勢を立て直そうとする。
「……やばい……!」

「ユーマ!早く隠れて!」
 木陰から顔を覗かせた奏多が低い声で促した。

「くそ……わかってる!」
 ユーマは這うようにして木の陰へ身を潜めた。

「そこでじっとしてて。」
 奏多は短くそう言い、目を逸らさずラドンの動きを見据えた。

「ちっ……これ以上足を引っ張るのはゴメンだ。早くリンゴを取れよ!」
 ユーマは悔しそうに尻尾をピンと立てながら、小声で吐き捨てた。

 ユーマが木の陰に隠れると、ラドンの瞳が夏輝を捕らえた。



 ラドンの鎌首が空を裂き、地を滑るように夏輝を追い詰める。

「くそっ……近い!」
 夏輝は必死に足を動かし続けるが、その背中にラドンの影が覆いかぶさる。

 次の瞬間、鋭い牙をむき出しにしたラドンの鎌首が、夏輝の足元すれすれに振り下ろされた。
 牙が地面を抉り、深い裂け目を作り出す。

 その衝撃で土埃が舞い上がり、視界が遮られる。

「まだだ……もう少しで!」
 夏輝はよろめきながらも体勢を立て直し、再び全力で駆け出した。

 ヘラクレスが突進し、ラドンの側面を狙った。

「邪魔はさせない!」
 ヘラクレスは全身の筋肉を極限まで使い、渾身の力でラドンに体当たりを試みた。

 しかし、ラドンの鱗は鉄壁のように硬く、衝突の衝撃が弾ける音を立て、ヘラクレスの巨体が勢いよく弾き返された。

 その反動で後方へ大きくよろめき、足元が乱れる。
 体に伝わる衝撃は全身を揺さぶり、ヘラクレスは一瞬息を詰めた。

 ラドンは鋭い牙をむき出し、唸り声を上げてヘラクレスを威嚇した。  
 鎌首を振り上げたその瞬間、巨大な尾が地を叩きつけ、乾いた音とともに周囲の木々が揺れた。

「ぐっ……!」  
 砂埃の中でバランスを崩したヘラクレスに、ラドンの鎌首が勢いよく襲いかかった。  

 その巨体に押し倒され、地面が鈍い音を立てて沈み込む。  

「……これほどとは……」  
 ヘラクレスは苦しげに息を吐き、泥だらけの手で体を支えた。  

 全身を襲う痛みに耐えながらも、拳を強く握りしめた。
 彼の視線はかすかに揺れながらも、仲間たちを守るための思いだけは消えなかった。

 ラドンは冷たい瞳を光らせながら、体を蛇行させて夏輝を追った。
 その動きは静かだが確実に獲物を狙う捕食者そのものだった。

 低い唸り声が空気を震わせ、草木を容赦なく薙ぎ倒していく。


「ヘラクレスさん!」
 澪は駆け寄りたい衝動を抑え、声を張り上げた。
「無理しないでください! これ以上傷ついたら……!」

 震える声には、必死さが滲んでいる。

 ヘラクレスはゆっくりと顔を上げ、かすかな笑みを浮かべた。
「心配ない……すまんが、今は動けそうにない。」

 澪は胸を押さえ、必死に考えを巡らせる。

「どうすれば……!」  
 澪の震える声が漏れる。

 澪は混乱の中で状況を見渡した。
 ヘラクレスが倒れ、ユーマが負傷し、奏多も策を見つけられずにいる。  

 澪は震える足を無理やり前に出し、全身に力を込めた。
「私がやらなきゃ……!」

 心臓が強く脈打つたび、恐怖とともに決意が胸に湧き上がる。
 澪の小さな声が、緊迫した空気の中で静かに響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...