40 / 359
第四章 権謀術策
天の時、地の利
しおりを挟む
――深夜
月は雲に隠れ、闇のみが生き物のように蠢く。
闇たちは音を喰らい、静寂を世界に染み渡らせていった。
だが、その静寂を穢す、愚か者たちが森に現れる。
彼らはシアンファミリーの傭兵たち……。
傭兵たちは古城トーワの遥か手前で馬を降り、一度は穢した静寂に溶け込んでいく。
闇に敬意を払うかのように、ランプには布を掛け明かりを塞ぎ、足元が僅かに照らし出される程度の光源で彼らは森の中を歩く。
小さな呼吸音さえも、千里に届くような錯覚を覚えてしまう闇夜。
彼らはひたすら息を殺し、古城トーワへ向かった。
トーワの第一の防壁の前に立ち、小柄な戦士が静寂に音を思い出させる。
「ここにケントの野郎と絵描きのガキがいるわけだ」
隣に立つ無骨そうな戦士が答えを返す。
「ギウもいるかもしれない。油断はできないよ、兄貴」
「わかってるさ。そのために三十人もの傭兵を連れてきたんだからな」
彼はちらりと背後を覗き見た。
闇に交わる傭兵たちは生気を完全に消し去り、亡霊のように立っている。
「フン、なるべく目立たずか……念のため、近くに人がいないか軽く見回ってこい。音を立てずな」
小柄な戦士に指示され、一人の傭兵が布を掛けたランプを手に周囲の見回りに出た。
数分後、男が帰ってくる。
「人の気配なしです」
「よし……これで派手に騒ぎ立てやすくなったな」
「兄貴。城までは距離がある。ここで騒ぐと仕留め損なうかも」
「わかってんよ。城までこっそり近づき、中に入って、ブスリといこう。無駄にギウとやり合う必要もねぇしな。万が一、城の中や途中でギウに出くわしても、この人数なら大丈夫だ。行くぞ」
傭兵たちは足音を殺し、防壁へ近づいていく。
月光の加護のない夜は暗闇が粘り気を帯び、彼らに纏わりつく。
防壁の傍まで来て、小柄な戦士が呟いた。
「月が雲に隠れたのは奇襲にもってこいだが、こっちも暗くて動きにくいな」
「そうだね、兄貴……早く終わらせよう。終わらせることができれば、問題が起きないから」
「問題? 長引いたら不味いことでもあるのか?」
「長引いたらというよりも、ケントたちを逃がしてしまったら、かな」
「たしかに問題だな。ムキ様に殺されちまう。だけど、そんなポカしねぇよ、ははは」
「その問題だけじゃないんだけどなぁ……」
「あん?」
「いや、ややこしい話はあとにしよう。それよりも、ここからどうする? 正面には他よりもちょっと広めの道があるようだけど」
無骨そうな戦士は道と評したが、それは防壁の一部が崩れ落ちてできた隙間。
だが、周囲の隙間よりも大きく、大人数が通りやすい。
小柄な戦士は黒に染まる隙間を見つめながら言葉を返す。
「そうだな、他の道を探すのも面倒だし、このまま進もうぜ」
「念のため、部隊を二つに分けたりは?」
「必要ねぇだろ。相手はケントとギウだけだぞ。分けるのは城の前で十分だ。ケントたちが逃げられないように、出入り口を押さえるためにな。さぁ、さっさと乗り込んで、さっさと終わらせよう」
「……わかった、兄貴に従うよ」
「よし、行くぞ」
傭兵たちは小柄な戦士と無骨そうな戦士に引き連れられ、闇が続く隙間へ吸い込まれて行った。
防壁を越えると、内部のあちらこちらに瓦礫が転がっていた。
彼らはそれらを避けながら、第二の防壁へ近づく。
「まったく、瓦礫が邪魔だなぁ。片づけとけよ」
「放置されてた城だからね。無理もないよ」
「城とはいえ、こんなぼろぼろの場所に住むくらいなら、橋の下の方がなんぼかマシだな。お、あそこに隙間があるな」
彼らは第二の防壁を越えて、第三の防壁へ向かう。
次なる防壁内も瓦礫に満たされていたが、先ほどとは違い、多少は整備され、人の手によって作られたと思われる瓦礫の山が点在していた。
「ここら辺は片づけてるのか?」
「というよりも、片づけてる最中って感じだね。たぶん、適当に瓦礫を集めてまとめてるんだよ」
「一応やることはやってんのか。あ、クソッ」
小柄な戦士が足を止める。
彼が足を止めたのは最後の防壁の前。
防壁は崩れ落ちているものの、その隙間に瓦礫が埋まり、先に続く道を完全に塞いでいる。
「この道を真っ直ぐ行けば城まで抜けられると思ったが。しゃーねぇ、迂回するか」
彼は左右に顔を振る。
左は瓦礫がひどく散乱し、暗闇の中、拙い光源を頼りにそれらを避けて歩くのは厳しい。
右には大きな瓦礫の山があって、それが右の道を塞ぐように立ちはだかっていたが……。
「うん? 右の瓦礫の山の手前に曲がり角あんのか?」
「待って、いま明かりを……」
無骨そうな戦士は城から目立たぬようにランプを掲げ、闇によって先が見づらい道を睨みつけるように見た。
それに小柄な戦士も続く。
「う~ん……やっぱり、あるっぽいな。そっちから城に行けるか?」
「ここから距離もないし、確認してみよう」
傭兵たちは曲がり角へ向かう。
角を曲がると先に続くは、左右を壁に挟まれた道。
一見、行き止まりに見えたが、正面奥には崩れた壁があり、その隙間から闇の衣を纏った城がうっすらと浮かんでいた。
「お、あそこの隙間から城まで抜けられるな。はぁ~、面倒だったぜ」
「もし、防壁が機能していたら、もっと面倒だったかもね」
「だなっ。それじゃ、城へ行ってケント様をお優しく起こしてあげようかねぇ~」
小柄な戦士を先頭に、傭兵たちは城に繋がる曲がり角へ入っていく。
その途中で無骨そうな戦士は、曲がり角入口の右隣りに積んであった瓦礫の山が目にちらついた。
「ん?」
「どうした?」
「いや、なんでもないよ」
「そうか? じゃあ、行こうぜ」
小柄な戦士は歩む。無骨そうな戦士も傭兵たちも後に続く……その先にあるのは道ではなく、夜の支配者たる闇さえも畏れを抱く深淵とは知らずに……。
「よし、あとは城まで歩くだけ、いたっ!」
小柄な戦士は何かにぶつかり、鼻の頭を押さえた。
「いたたっ、なんだ?」
「どうしたの、兄貴?」
「いや、なんかにぶつかって……」
彼は先に続く道に手を伸ばす。
すると、手入れされていない爪先がコツリと音を立てた。
「え?」
ゆっくりと、音を立てたモノを指で触れる。手の平で触れる。手の平にはぬるりとしたものが纏わりつき、同時に硬い石のような肌触りが伝わる。
「なんだ、このぬるぬるしたのは? それにこの硬い感触は……まさか、壁か?」
「あ、兄貴っ。これは絵だ!」
「なに?」
「目の前にあるのはっ、道の風景が描かれた壁だよ、兄貴!!」
「はぁ、絵だとぉぉ!?」
――ギウ、今だ!
ケントの掛け声と同時に、傭兵たちの後方から激しい音が響いた。
「なんだぁ!?」
傭兵たちは後ろを振り返る。
後方は濛々とした土埃が舞い、瓦礫が出口を封鎖していた。
その様を見て、無骨そうな戦士は悲鳴にも似た怒声を上げる。
「さっきの瓦礫はそのために! 兄貴、早く脱出を!!」
だが、この声とほぼ同じくして、ケントの声が闇を切り裂いた。
「もう遅い! くらうがいい!!」
「ひ、なんだ!? 上から何か降ってきたぞ!?」
彼らは上から降ってきた何かに怯え身体を激しく振ったが、それが余計に彼らの動きを縛ることになった。
そこに防壁の上からケントが姿を現して、慌てふためく彼らの頭上に笑い声を響かせる。
「あははは、投網に捕まる気分はいかがかな? 傭兵の諸君」
「投網!?」
小柄な戦士が頭に絡まっていた物を手で掴んだ。
それは太い縄で編まれた漁のための網。
より深く動きを奪うためか、その網には釣り針が仕込んであった。
月は雲に隠れ、闇のみが生き物のように蠢く。
闇たちは音を喰らい、静寂を世界に染み渡らせていった。
だが、その静寂を穢す、愚か者たちが森に現れる。
彼らはシアンファミリーの傭兵たち……。
傭兵たちは古城トーワの遥か手前で馬を降り、一度は穢した静寂に溶け込んでいく。
闇に敬意を払うかのように、ランプには布を掛け明かりを塞ぎ、足元が僅かに照らし出される程度の光源で彼らは森の中を歩く。
小さな呼吸音さえも、千里に届くような錯覚を覚えてしまう闇夜。
彼らはひたすら息を殺し、古城トーワへ向かった。
トーワの第一の防壁の前に立ち、小柄な戦士が静寂に音を思い出させる。
「ここにケントの野郎と絵描きのガキがいるわけだ」
隣に立つ無骨そうな戦士が答えを返す。
「ギウもいるかもしれない。油断はできないよ、兄貴」
「わかってるさ。そのために三十人もの傭兵を連れてきたんだからな」
彼はちらりと背後を覗き見た。
闇に交わる傭兵たちは生気を完全に消し去り、亡霊のように立っている。
「フン、なるべく目立たずか……念のため、近くに人がいないか軽く見回ってこい。音を立てずな」
小柄な戦士に指示され、一人の傭兵が布を掛けたランプを手に周囲の見回りに出た。
数分後、男が帰ってくる。
「人の気配なしです」
「よし……これで派手に騒ぎ立てやすくなったな」
「兄貴。城までは距離がある。ここで騒ぐと仕留め損なうかも」
「わかってんよ。城までこっそり近づき、中に入って、ブスリといこう。無駄にギウとやり合う必要もねぇしな。万が一、城の中や途中でギウに出くわしても、この人数なら大丈夫だ。行くぞ」
傭兵たちは足音を殺し、防壁へ近づいていく。
月光の加護のない夜は暗闇が粘り気を帯び、彼らに纏わりつく。
防壁の傍まで来て、小柄な戦士が呟いた。
「月が雲に隠れたのは奇襲にもってこいだが、こっちも暗くて動きにくいな」
「そうだね、兄貴……早く終わらせよう。終わらせることができれば、問題が起きないから」
「問題? 長引いたら不味いことでもあるのか?」
「長引いたらというよりも、ケントたちを逃がしてしまったら、かな」
「たしかに問題だな。ムキ様に殺されちまう。だけど、そんなポカしねぇよ、ははは」
「その問題だけじゃないんだけどなぁ……」
「あん?」
「いや、ややこしい話はあとにしよう。それよりも、ここからどうする? 正面には他よりもちょっと広めの道があるようだけど」
無骨そうな戦士は道と評したが、それは防壁の一部が崩れ落ちてできた隙間。
だが、周囲の隙間よりも大きく、大人数が通りやすい。
小柄な戦士は黒に染まる隙間を見つめながら言葉を返す。
「そうだな、他の道を探すのも面倒だし、このまま進もうぜ」
「念のため、部隊を二つに分けたりは?」
「必要ねぇだろ。相手はケントとギウだけだぞ。分けるのは城の前で十分だ。ケントたちが逃げられないように、出入り口を押さえるためにな。さぁ、さっさと乗り込んで、さっさと終わらせよう」
「……わかった、兄貴に従うよ」
「よし、行くぞ」
傭兵たちは小柄な戦士と無骨そうな戦士に引き連れられ、闇が続く隙間へ吸い込まれて行った。
防壁を越えると、内部のあちらこちらに瓦礫が転がっていた。
彼らはそれらを避けながら、第二の防壁へ近づく。
「まったく、瓦礫が邪魔だなぁ。片づけとけよ」
「放置されてた城だからね。無理もないよ」
「城とはいえ、こんなぼろぼろの場所に住むくらいなら、橋の下の方がなんぼかマシだな。お、あそこに隙間があるな」
彼らは第二の防壁を越えて、第三の防壁へ向かう。
次なる防壁内も瓦礫に満たされていたが、先ほどとは違い、多少は整備され、人の手によって作られたと思われる瓦礫の山が点在していた。
「ここら辺は片づけてるのか?」
「というよりも、片づけてる最中って感じだね。たぶん、適当に瓦礫を集めてまとめてるんだよ」
「一応やることはやってんのか。あ、クソッ」
小柄な戦士が足を止める。
彼が足を止めたのは最後の防壁の前。
防壁は崩れ落ちているものの、その隙間に瓦礫が埋まり、先に続く道を完全に塞いでいる。
「この道を真っ直ぐ行けば城まで抜けられると思ったが。しゃーねぇ、迂回するか」
彼は左右に顔を振る。
左は瓦礫がひどく散乱し、暗闇の中、拙い光源を頼りにそれらを避けて歩くのは厳しい。
右には大きな瓦礫の山があって、それが右の道を塞ぐように立ちはだかっていたが……。
「うん? 右の瓦礫の山の手前に曲がり角あんのか?」
「待って、いま明かりを……」
無骨そうな戦士は城から目立たぬようにランプを掲げ、闇によって先が見づらい道を睨みつけるように見た。
それに小柄な戦士も続く。
「う~ん……やっぱり、あるっぽいな。そっちから城に行けるか?」
「ここから距離もないし、確認してみよう」
傭兵たちは曲がり角へ向かう。
角を曲がると先に続くは、左右を壁に挟まれた道。
一見、行き止まりに見えたが、正面奥には崩れた壁があり、その隙間から闇の衣を纏った城がうっすらと浮かんでいた。
「お、あそこの隙間から城まで抜けられるな。はぁ~、面倒だったぜ」
「もし、防壁が機能していたら、もっと面倒だったかもね」
「だなっ。それじゃ、城へ行ってケント様をお優しく起こしてあげようかねぇ~」
小柄な戦士を先頭に、傭兵たちは城に繋がる曲がり角へ入っていく。
その途中で無骨そうな戦士は、曲がり角入口の右隣りに積んであった瓦礫の山が目にちらついた。
「ん?」
「どうした?」
「いや、なんでもないよ」
「そうか? じゃあ、行こうぜ」
小柄な戦士は歩む。無骨そうな戦士も傭兵たちも後に続く……その先にあるのは道ではなく、夜の支配者たる闇さえも畏れを抱く深淵とは知らずに……。
「よし、あとは城まで歩くだけ、いたっ!」
小柄な戦士は何かにぶつかり、鼻の頭を押さえた。
「いたたっ、なんだ?」
「どうしたの、兄貴?」
「いや、なんかにぶつかって……」
彼は先に続く道に手を伸ばす。
すると、手入れされていない爪先がコツリと音を立てた。
「え?」
ゆっくりと、音を立てたモノを指で触れる。手の平で触れる。手の平にはぬるりとしたものが纏わりつき、同時に硬い石のような肌触りが伝わる。
「なんだ、このぬるぬるしたのは? それにこの硬い感触は……まさか、壁か?」
「あ、兄貴っ。これは絵だ!」
「なに?」
「目の前にあるのはっ、道の風景が描かれた壁だよ、兄貴!!」
「はぁ、絵だとぉぉ!?」
――ギウ、今だ!
ケントの掛け声と同時に、傭兵たちの後方から激しい音が響いた。
「なんだぁ!?」
傭兵たちは後ろを振り返る。
後方は濛々とした土埃が舞い、瓦礫が出口を封鎖していた。
その様を見て、無骨そうな戦士は悲鳴にも似た怒声を上げる。
「さっきの瓦礫はそのために! 兄貴、早く脱出を!!」
だが、この声とほぼ同じくして、ケントの声が闇を切り裂いた。
「もう遅い! くらうがいい!!」
「ひ、なんだ!? 上から何か降ってきたぞ!?」
彼らは上から降ってきた何かに怯え身体を激しく振ったが、それが余計に彼らの動きを縛ることになった。
そこに防壁の上からケントが姿を現して、慌てふためく彼らの頭上に笑い声を響かせる。
「あははは、投網に捕まる気分はいかがかな? 傭兵の諸君」
「投網!?」
小柄な戦士が頭に絡まっていた物を手で掴んだ。
それは太い縄で編まれた漁のための網。
より深く動きを奪うためか、その網には釣り針が仕込んであった。
1
あなたにおすすめの小説
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる