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第七章 遺跡に繋がるもの
大地に封じられたもの
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――フィナの説明による、トーワ北部に広がる荒れ地の中身
砂と塩が混じる土が表面を覆い尽くし、その厚さは50cmほど。
さらに深く潜れば潜るほど濃度の高い、鉛・ヒ素・フッ素・ホウ素・水銀・セレン・カドミウム。その他の重金属類。
と、有害物質のオンパレード。
塩がそれらに蓋をして押さえているような状態ね。
その塩は東側にある海から作られている。
「塩に含まれるミネラル分が海水のそれと一致している。その塩に何かを混ぜて、土壌の地下深くに眠る毒たちを押さえているみたい。何かはさっぱりだけど」
「なるほど、今の話で一つ謎が解けた」
「なぞ?」
私は防壁内に点在する井戸を指差す。
「海が目と鼻の先にあるのに、なぜ井戸水は真水なのかと思っていたが、遺跡の影響の可能性が高いな」
「遺跡が直接海水からではなく陸地を浸食している海水から塩分を集めたから、井戸が真水になったってこと? 淡水化装置? 防壁内で真水を確保するための?」
「それはわからないが、そのおかげで私たちは美味しい真水にありつけているし、風呂にも入れるようになった」
「ふふ、お風呂は私のおかげね。さて、説明はこれだけじゃ終わらないよ」
毒物の原因だけど、残念ながらわからない。
でも、推測はできる。
大昔に古代人は魔族との戦いで半島全域を汚染させてしまった。
そこで、彼らは浄化装置のようなものを使い、長い時をかけて北の荒れ地を残し、周辺の土地を回復させた。
この浄化装置は半島に存在する汚染物質を一か所に集めているみたい。
そのため、魔族との戦い以外で発生した毒。つまり、自然界に存在する汚染物質の一部までも、この北の大地に収束させているんじゃないかと思う。
塩については、あんたの見解である真水の確保の可能性もあるけど、私としては塩自体が汚染物質にカウントされて集められている気がする。
ただ、他の汚染物質よりも危険度は低いから浄化の優先順位が低く、蓋代わりに利用されてるってところかな。
「これらのことから、かなり大雑把な方法で大地を浄化してるっていう印象を受ける」
「大雑把な理由は……わからないよな?」
「さすがにね。考えられるとすれば汚染物質を精査する余裕がなくて、急ぎ装置を作るなり発動させるなりした……そんなところ」
「何かの緊急事態が起こった、ということか?」
「かもね。でも、もしそうなら、遺跡内部にあると思われる浄化装置を操ることができれば、北の大地の浄化を正しく促進させることが可能かも?」
「それでは、この広範囲に広がる北の大地に緑を戻せると?」
私は北の大地を望む。
広がるのは水平線の先まで、草木など一辺たりともなく、乾燥しひび割れた大地……。
「これが、緑に……」
「あまり期待させちゃって悪いけど、あくまでも推測。推測ね」
「あ、ああ。わかっている」
「んで、その汚染物質について、説明を続けるよ」
汚染物質は表面にあるものほど濃度が薄く、地下に潜るたびに濃くなっている。
これから見て、浄化装置の働きによって、大地の表面には浄化された土のみが上がってきているんだと思う。
塩が混ざっているから、喉への刺激はひどいけど……。
これに加えて、地下の奥深くからなんだかわかんない、微量な何かが溢れ出しているっぽい。
「それが何なのかわからないけど汚染物質を浄化して上に上げている特性上、この地上にいる限り健康被害はないと思う。もしかしたら、これこそが古代人が浄化したかった汚染物質かも? 詳しくは土地を掘り起こしてみないと判断はできないけどね」
「微量な何かか……気にはなるが、掘り起こすと毒物が出てくるわけだ。調査は難しいな」
「私ならやれないこともないけど?」
「そうだな。だが、今のところ皆を危険に晒してまでこの土地を探る必要性はない。やるとしても遺跡の状態を確認してからの方がいいだろう」
「そ、わかった。じゃ、荒れ地を歩いても危険性はなさそうだし、真っ直ぐ遺跡へ向かおう!」
フィナはナルフを消して、元気よく馬にまたがる。
そして、エクアに早く乗るように言っている。
「エクア、行くよ。後ろに乗って!」
「は、はい……でも、大丈夫ですか? この下に毒があるんですよね、ケント様?」
「ああ、そうだな。普通なら安全と言われても歩きたくはないもんだ」
「なのになんで、フィナさんは元気なんでしょう?」
「あれは我々とは違う生き物だ。そう、考えよう……」
砂と塩が混じる土が表面を覆い尽くし、その厚さは50cmほど。
さらに深く潜れば潜るほど濃度の高い、鉛・ヒ素・フッ素・ホウ素・水銀・セレン・カドミウム。その他の重金属類。
と、有害物質のオンパレード。
塩がそれらに蓋をして押さえているような状態ね。
その塩は東側にある海から作られている。
「塩に含まれるミネラル分が海水のそれと一致している。その塩に何かを混ぜて、土壌の地下深くに眠る毒たちを押さえているみたい。何かはさっぱりだけど」
「なるほど、今の話で一つ謎が解けた」
「なぞ?」
私は防壁内に点在する井戸を指差す。
「海が目と鼻の先にあるのに、なぜ井戸水は真水なのかと思っていたが、遺跡の影響の可能性が高いな」
「遺跡が直接海水からではなく陸地を浸食している海水から塩分を集めたから、井戸が真水になったってこと? 淡水化装置? 防壁内で真水を確保するための?」
「それはわからないが、そのおかげで私たちは美味しい真水にありつけているし、風呂にも入れるようになった」
「ふふ、お風呂は私のおかげね。さて、説明はこれだけじゃ終わらないよ」
毒物の原因だけど、残念ながらわからない。
でも、推測はできる。
大昔に古代人は魔族との戦いで半島全域を汚染させてしまった。
そこで、彼らは浄化装置のようなものを使い、長い時をかけて北の荒れ地を残し、周辺の土地を回復させた。
この浄化装置は半島に存在する汚染物質を一か所に集めているみたい。
そのため、魔族との戦い以外で発生した毒。つまり、自然界に存在する汚染物質の一部までも、この北の大地に収束させているんじゃないかと思う。
塩については、あんたの見解である真水の確保の可能性もあるけど、私としては塩自体が汚染物質にカウントされて集められている気がする。
ただ、他の汚染物質よりも危険度は低いから浄化の優先順位が低く、蓋代わりに利用されてるってところかな。
「これらのことから、かなり大雑把な方法で大地を浄化してるっていう印象を受ける」
「大雑把な理由は……わからないよな?」
「さすがにね。考えられるとすれば汚染物質を精査する余裕がなくて、急ぎ装置を作るなり発動させるなりした……そんなところ」
「何かの緊急事態が起こった、ということか?」
「かもね。でも、もしそうなら、遺跡内部にあると思われる浄化装置を操ることができれば、北の大地の浄化を正しく促進させることが可能かも?」
「それでは、この広範囲に広がる北の大地に緑を戻せると?」
私は北の大地を望む。
広がるのは水平線の先まで、草木など一辺たりともなく、乾燥しひび割れた大地……。
「これが、緑に……」
「あまり期待させちゃって悪いけど、あくまでも推測。推測ね」
「あ、ああ。わかっている」
「んで、その汚染物質について、説明を続けるよ」
汚染物質は表面にあるものほど濃度が薄く、地下に潜るたびに濃くなっている。
これから見て、浄化装置の働きによって、大地の表面には浄化された土のみが上がってきているんだと思う。
塩が混ざっているから、喉への刺激はひどいけど……。
これに加えて、地下の奥深くからなんだかわかんない、微量な何かが溢れ出しているっぽい。
「それが何なのかわからないけど汚染物質を浄化して上に上げている特性上、この地上にいる限り健康被害はないと思う。もしかしたら、これこそが古代人が浄化したかった汚染物質かも? 詳しくは土地を掘り起こしてみないと判断はできないけどね」
「微量な何かか……気にはなるが、掘り起こすと毒物が出てくるわけだ。調査は難しいな」
「私ならやれないこともないけど?」
「そうだな。だが、今のところ皆を危険に晒してまでこの土地を探る必要性はない。やるとしても遺跡の状態を確認してからの方がいいだろう」
「そ、わかった。じゃ、荒れ地を歩いても危険性はなさそうだし、真っ直ぐ遺跡へ向かおう!」
フィナはナルフを消して、元気よく馬にまたがる。
そして、エクアに早く乗るように言っている。
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