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第七章 遺跡に繋がるもの

古代人の遺跡

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――古代人の遺跡

 
 私の過去と恋話もどきを終えて、朝を迎える。
 そして遺跡へ向かい、さらに一夜を荒野で過ごして、今日の正午、ついに古代人の遺跡に到着した。
 道中、何事なく進み、私とエクアはホッとするがフィナは……。


「つまんな~い。何にも起こんないなんて。呪われた大地なんて言われてんだから、幽霊の一匹や二匹出てこないと盛り上がらないよねっ」


 と、同意を求めてくるが、私は軽く首を横に振り、エクアは乾いた笑いを上げるのがやっとだった。

「フィナは本当にズレてるな」
「ズレてる? どこが?」
「自覚がない者に言っても仕方がない」
「うわ~、ムカつく言いよう。あんたたちは旅の醍醐味がわかってないのよ。何も起こらない旅なんて意味ないじゃん」

「君が期待する『起こる』は厄介事だろ。そんなもんいらん。大人しく、旅景色でも楽しんでろ」
「景色って、土だけじゃん……」
「まぁ、たしかに。いや、そうでもないぞ。あれじゃないか、遺跡とやらは?」

 
 私が遠くを指差すと、そこには荒れた大地の上に土が盛り上がった場所があった。
 私たちは馬の速度を上げ、そこへ向かい、遺跡の入り口を目にする。


「これがか……」
 古代人の遺跡と称される場所には巨大な盛り土がされてあるだけで何もない。
 土の側面には洞窟のように抉られた場所があり、そこから地下へと続く道が見えた。
 フィナは観測機器・真実の瞳ナルフを浮かべる。


「地下内部から地上に向かって土が飛び出してる。土の一部はガラスに変化……強力な熱線を地下から放って、地上に穴を開けた感じね。状態も見た感じの形状も、クライエン大陸にある古代人の遺跡と同じっぽい」

「ああ、そうだなって……どうして、フィナがクライエン大陸の遺跡をことを知っている? あそこは立ち入り禁止区域だぞ!」
「えっと、ほら、昔は錬金術士に実践派も理論派もなく一緒だったじゃない。その時の情報の名残り」
「いや、どうみても実際に見てきた感想だったぞ、今のは」
「ふふふ、何を仰っているのかわかりませんことよ」

 わざとらしい半端なお嬢様言葉を出すフィナ。
 どうやら、立ち入り禁止区域に侵入したことがあるようだ。


「中に入ったことはあるのか?」
「いや~、さすがにそこまでは。警備が厳しくて、外見をちょろっと見るのがやっとだったし」
「やっぱり、立ち入り禁止区域に立ち入ったんだな」
「ウワ~、バレチャッタ~」
「白々しい。それで、ナルフに何か危険な兆候は?」
「今のところは何も。もうちょっと近づいてみないとわかんない」
「とりあえず、危険はないというわけか。馬を降りて、ゆっくり近づいてみよう」


 私たちは馬から降り、歩いて遺跡の入口前までやってきた。
 盛り土にぽっかりと開いた穴。
 これを見て、エクアがぽつりと言葉を漏らす。


「想像と全然違う」
「エクアはどのようなものを想像していたんだ?」
「遺跡というからには、朽ちた町の跡とか、神殿の跡なんかです。それが、地上にある洞窟だなんて」

「まぁ、そう感じるだろうな。私も一度クライエン大陸にある遺跡の外観を見たことがあるが、拍子抜けしたものだ」
「中には?」
「入っていない。だが、内部には建物があるらしい」
「建物? 地下にですか?」

 この問いに、フィナがナルフと睨めっこしながら答えを返す。


「何故か、古代人の建物は地下に埋まってるのよ。発見当初は地殻変動なんかで地下に埋まったとか言われてたけど、入口が地下から食い破られるようにできてることから、何かの拍子に地下に埋まって、地面を吹き飛ばして入り口を作るしかなかったと結論付けられたの」

「何かの拍子?」

「それはいろいろ言われてる……ここの遺跡も同じ状態だなんて。クライエン大陸にある遺跡は転送実験の失敗で埋まったなんて言われているけど、こっちはどういった事情なんだろ?」
「転送実験、ですか?」
「あっちの遺跡からは高度な転送装置が見つかったのよ。で、それが原因じゃないかって。全部、予測の域を出ないけど……それよりも、こりゃヤバいわ」
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