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第十一章 世界とトーワと失恋
さて、どこで聞いたか読んだか?
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私は生命誕生の奇跡について、思い出した知識を語る。
「そういえば、生命科学や天文を専門とする学者の多くが生命誕生に関する理由を求めて研究を行い、結果、偶然しかないと結論付けていたな」
「はぁ~!? 偶然って」
「だが、面白い仮説を出す者もいた」
「え、なになにっ!?」
と、話に盛り上がる私たちの隣でエクアは少々困ったような言葉を漏らす。
「お二人とも、創造主サノア様に対する冒涜のような気がするんですけど……」
世界はサノアによって創造された。
それが当たり前であり、覆すことのできない事実。
であるのに、我ら研究者はその事実を真っ向から否定する研究を行っている。
エクアのように研究とは縁遠い者から見れば、背信であり、冒涜者にしか見えないだろう。
私は指先を口元に置き、エクアに顔を向けた。
「別にサノアを否定するわけではない。しかし、謎あれば気になるのは人間の性。エクア、ここだけの話として、許してくれ」
「はぁ……わかりました。あくまでも研究者の想像話ですね」
「ふふ、そういうことで頼む……で、何を話そうとしていたのだったか?」
「生命誕生の仮説よ。どうして生命は生まれたのか。偶然か、必然か?」
「そうだったな。私に聞き覚えがあるのはこうだ」
生命体という存在は子孫を残し繋いでいく。
これを端的に言えば、情報を残そうとする行為。
細菌も動物も人も同じ方向を向いて進んでいる。
その方向を歩むのは何も生物だけではなく、無生物も同様ではないかという仮説。
生命体が生まれるまで、世界には水や鉄や岩石といった無生物しかなかった。
だが、それらに意志の存在はなくとも、情報を残すという行為を歩んでいるのではないか?
とするならば、彼らは組み合わさり、情報を取得できる環境を作り上げようとする。
様々な元素がぶつかり合い、新たな元素を生み、情報はより複雑に豊富にと変わっていく。
その過程で、更なる情報を取得できる存在を生み出すことにした。
それが生物。
無生物よりも複雑な情報を組み合わせ、遥か先に伝えていくことのできる存在。
「つまり、あらゆる物質は『情報を残す』という根で繋がっている。だからこそ無生物は、多くの情報を残すために生物を生み出した、という仮説だ」
「情報を残すことが目的だから生命体の誕生は必然ってこと? う~ん、ちょっとオカルトじみてる気もするね。ま、無生物にそういう特性が見つかれば仮説としては面白い感じにはなるけど」
「ふふふ、私も聞きかじりの知識だからな。はっきりこうだとは言えない」
「……その知識ってどこで得たの? 今の話、私は初耳なんだけど?」
「さて、どこだったか? 天文に関する本で見かけたのをうっすらと覚えていただけだと思うが」
「なんの本だったかちゃんと覚えててよっ」
「ふむ、畑仕事の話で栄養の話を思い出したときもそうだったが、昔から私はふとした瞬間に聞きかじりの知識を思い出す癖があるんだ」
「それ、もっと意識的に知識に触れないからよ。とにかく、何の本か思い出したら教えてね。それじゃ、私そろそろ仕事に戻るから」
フィナはよっと荷物を持ち直して、パタパタと立ち去っていった。
私は影となったフィナの姿を見つめ呟く。
「なかなかと興味の尽きない少女だ」
「クスッ、忙しい中、フィナさんは色々なことを教えてくれます。とても親切な人だと思いますよ」
「ふふふ、たしかにな。それでは、私もそろそろ事務仕事に戻るよ」
「はい、私はカイン先生のところへお勉強に」
「そうか、頑張ってな」
「はい。ケント様も」
エクアと別れ、執務室へ戻ることにした。
だが、階段を上がろうとしたところで親父に呼び止められた。
少々、怒ったような様子で。
「旦那っ、ちょいとお待ちを!」
「どうした、親父? 様子が変だが?」
「変にもなりますよ。三枚目と二枚目の防壁内にある、仕出し屋のことです」
「それがどうかしたのか?」
「聞いた話だと、許可証は発行していない。土地代も取っていない。そして、税金も取っていないそうじゃないですか?」
「ああ、そうだったな」
「そうだったな、じゃありませんよ! 領主様なんだから、そういったことはしっかりしませんと」
「そうは言っても、手続きをするほどでもないし。まして、税金なぞ。三つの店のうちの一つを切り盛りしてるのは幼い少女だから土地代や税金を取るのは……」
「なにを甘いことをっ。今後、ああいった店が増えてきたらどうするんですか? 締めるところは締めときませんと」
「それはそうかもしれんが、トーワにそういった法がないからなぁ」
つい最近まで人などなく、法整備の必要性など皆無だった。
そのため、それらの準備は全く行っていない。
それどころか、必要になる日が来るとは夢にも思ってなかった。
私はのんびりと言葉を返すが、親父は窮したように声を返してくる。
「ないなら作ってくださいよ。これは領主の仕事ですぜ!」
「はぁ~、現状でも忙しくて、余計な仕事は増やしたくないのだが」
「余計じゃありません。必要なもの! とりあえず、ヴァンナス法を基本として税制度や刑法なんぞをまとめときますんで、よろしいですか?」
「親父がやってくれるのか?」
「旦那は手一杯なんでしょう?」
「まぁな」
「そんなわけで、骨子は作っておきますんで、あとで目を通してくださいよ!」
「ああ……結局、仕事は増えるのか」
「なにか仰いましたか?」
「いや、別に」
「それじゃ、俺はいま店を開いている連中と話してきますんで、失礼します」
「今から? おい、親父……行ってしまったか」
親父は早足に城の外へと出て行った。
私はというと執務室に戻り、書類整理のために椅子に座るのだが……。
「う~ん、親父はキサのところに行ったのだろうな……あまりきついことを言っていないといいのだが……」
ペンを持ち、書類に目を落とす……だが、ペンは一向に動こうとしない。
「……はぁ~、キサのことが気になるな。様子を見に行ってみるか」
「そういえば、生命科学や天文を専門とする学者の多くが生命誕生に関する理由を求めて研究を行い、結果、偶然しかないと結論付けていたな」
「はぁ~!? 偶然って」
「だが、面白い仮説を出す者もいた」
「え、なになにっ!?」
と、話に盛り上がる私たちの隣でエクアは少々困ったような言葉を漏らす。
「お二人とも、創造主サノア様に対する冒涜のような気がするんですけど……」
世界はサノアによって創造された。
それが当たり前であり、覆すことのできない事実。
であるのに、我ら研究者はその事実を真っ向から否定する研究を行っている。
エクアのように研究とは縁遠い者から見れば、背信であり、冒涜者にしか見えないだろう。
私は指先を口元に置き、エクアに顔を向けた。
「別にサノアを否定するわけではない。しかし、謎あれば気になるのは人間の性。エクア、ここだけの話として、許してくれ」
「はぁ……わかりました。あくまでも研究者の想像話ですね」
「ふふ、そういうことで頼む……で、何を話そうとしていたのだったか?」
「生命誕生の仮説よ。どうして生命は生まれたのか。偶然か、必然か?」
「そうだったな。私に聞き覚えがあるのはこうだ」
生命体という存在は子孫を残し繋いでいく。
これを端的に言えば、情報を残そうとする行為。
細菌も動物も人も同じ方向を向いて進んでいる。
その方向を歩むのは何も生物だけではなく、無生物も同様ではないかという仮説。
生命体が生まれるまで、世界には水や鉄や岩石といった無生物しかなかった。
だが、それらに意志の存在はなくとも、情報を残すという行為を歩んでいるのではないか?
とするならば、彼らは組み合わさり、情報を取得できる環境を作り上げようとする。
様々な元素がぶつかり合い、新たな元素を生み、情報はより複雑に豊富にと変わっていく。
その過程で、更なる情報を取得できる存在を生み出すことにした。
それが生物。
無生物よりも複雑な情報を組み合わせ、遥か先に伝えていくことのできる存在。
「つまり、あらゆる物質は『情報を残す』という根で繋がっている。だからこそ無生物は、多くの情報を残すために生物を生み出した、という仮説だ」
「情報を残すことが目的だから生命体の誕生は必然ってこと? う~ん、ちょっとオカルトじみてる気もするね。ま、無生物にそういう特性が見つかれば仮説としては面白い感じにはなるけど」
「ふふふ、私も聞きかじりの知識だからな。はっきりこうだとは言えない」
「……その知識ってどこで得たの? 今の話、私は初耳なんだけど?」
「さて、どこだったか? 天文に関する本で見かけたのをうっすらと覚えていただけだと思うが」
「なんの本だったかちゃんと覚えててよっ」
「ふむ、畑仕事の話で栄養の話を思い出したときもそうだったが、昔から私はふとした瞬間に聞きかじりの知識を思い出す癖があるんだ」
「それ、もっと意識的に知識に触れないからよ。とにかく、何の本か思い出したら教えてね。それじゃ、私そろそろ仕事に戻るから」
フィナはよっと荷物を持ち直して、パタパタと立ち去っていった。
私は影となったフィナの姿を見つめ呟く。
「なかなかと興味の尽きない少女だ」
「クスッ、忙しい中、フィナさんは色々なことを教えてくれます。とても親切な人だと思いますよ」
「ふふふ、たしかにな。それでは、私もそろそろ事務仕事に戻るよ」
「はい、私はカイン先生のところへお勉強に」
「そうか、頑張ってな」
「はい。ケント様も」
エクアと別れ、執務室へ戻ることにした。
だが、階段を上がろうとしたところで親父に呼び止められた。
少々、怒ったような様子で。
「旦那っ、ちょいとお待ちを!」
「どうした、親父? 様子が変だが?」
「変にもなりますよ。三枚目と二枚目の防壁内にある、仕出し屋のことです」
「それがどうかしたのか?」
「聞いた話だと、許可証は発行していない。土地代も取っていない。そして、税金も取っていないそうじゃないですか?」
「ああ、そうだったな」
「そうだったな、じゃありませんよ! 領主様なんだから、そういったことはしっかりしませんと」
「そうは言っても、手続きをするほどでもないし。まして、税金なぞ。三つの店のうちの一つを切り盛りしてるのは幼い少女だから土地代や税金を取るのは……」
「なにを甘いことをっ。今後、ああいった店が増えてきたらどうするんですか? 締めるところは締めときませんと」
「それはそうかもしれんが、トーワにそういった法がないからなぁ」
つい最近まで人などなく、法整備の必要性など皆無だった。
そのため、それらの準備は全く行っていない。
それどころか、必要になる日が来るとは夢にも思ってなかった。
私はのんびりと言葉を返すが、親父は窮したように声を返してくる。
「ないなら作ってくださいよ。これは領主の仕事ですぜ!」
「はぁ~、現状でも忙しくて、余計な仕事は増やしたくないのだが」
「余計じゃありません。必要なもの! とりあえず、ヴァンナス法を基本として税制度や刑法なんぞをまとめときますんで、よろしいですか?」
「親父がやってくれるのか?」
「旦那は手一杯なんでしょう?」
「まぁな」
「そんなわけで、骨子は作っておきますんで、あとで目を通してくださいよ!」
「ああ……結局、仕事は増えるのか」
「なにか仰いましたか?」
「いや、別に」
「それじゃ、俺はいま店を開いている連中と話してきますんで、失礼します」
「今から? おい、親父……行ってしまったか」
親父は早足に城の外へと出て行った。
私はというと執務室に戻り、書類整理のために椅子に座るのだが……。
「う~ん、親父はキサのところに行ったのだろうな……あまりきついことを言っていないといいのだが……」
ペンを持ち、書類に目を落とす……だが、ペンは一向に動こうとしない。
「……はぁ~、キサのことが気になるな。様子を見に行ってみるか」
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