銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
116 / 359
第十一章 世界とトーワと失恋

さて、どこで聞いたか読んだか?

しおりを挟む
 私は生命誕生の奇跡について、思い出した知識を語る。


「そういえば、生命科学や天文を専門とする学者の多くが生命誕生に関する理由を求めて研究を行い、結果、偶然しかないと結論付けていたな」
「はぁ~!? 偶然って」
「だが、面白い仮説を出す者もいた」
「え、なになにっ!?」


 と、話に盛り上がる私たちの隣でエクアは少々困ったような言葉を漏らす。
「お二人とも、創造主サノア様に対する冒涜のような気がするんですけど……」

 世界はサノアによって創造された。
 それが当たり前であり、覆すことのできない事実。
 であるのに、我ら研究者はその事実を真っ向から否定する研究を行っている。
 エクアのように研究とは縁遠い者から見れば、背信であり、冒涜者にしか見えないだろう。


 私は指先を口元に置き、エクアに顔を向けた。
「別にサノアを否定するわけではない。しかし、謎あれば気になるのは人間のさが。エクア、ここだけの話として、許してくれ」
「はぁ……わかりました。あくまでも研究者の想像話ですね」

「ふふ、そういうことで頼む……で、何を話そうとしていたのだったか?」
「生命誕生の仮説よ。どうして生命は生まれたのか。偶然か、必然か?」
「そうだったな。私に聞き覚えがあるのはこうだ」


 生命体という存在は子孫を残し繋いでいく。 
 これを端的に言えば、情報を残そうとする行為。
 細菌も動物も人も同じ方向を向いて進んでいる。


 その方向を歩むのは何も生物だけではなく、無生物も同様ではないかという仮説。
 

 生命体が生まれるまで、世界には水や鉄や岩石といった無生物しかなかった。
 だが、それらに意志の存在はなくとも、情報を残すという行為を歩んでいるのではないか?
 とするならば、彼らは組み合わさり、情報を取得できる環境を作り上げようとする。
 
 様々な元素がぶつかり合い、新たな元素を生み、情報はより複雑に豊富にと変わっていく。
 その過程で、更なる情報を取得できる存在を生み出すことにした。
 それが生物。

 無生物よりも複雑な情報を組み合わせ、遥か先に伝えていくことのできる存在。


「つまり、あらゆる物質は『情報を残す』という根で繋がっている。だからこそ無生物は、多くの情報を残すために生物を生み出した、という仮説だ」
「情報を残すことが目的だから生命体の誕生は必然ってこと? う~ん、ちょっとオカルトじみてる気もするね。ま、無生物にそういう特性が見つかれば仮説としては面白い感じにはなるけど」

「ふふふ、私も聞きかじりの知識だからな。はっきりこうだとは言えない」
「……その知識ってどこで得たの? 今の話、私は初耳なんだけど?」
「さて、どこだったか? 天文に関する本で見かけたのをうっすらと覚えていただけだと思うが」
「なんの本だったかちゃんと覚えててよっ」

「ふむ、畑仕事の話で栄養の話を思い出したときもそうだったが、昔から私はふとした瞬間に聞きかじりの知識を思い出す癖があるんだ」
「それ、もっと意識的に知識に触れないからよ。とにかく、何の本か思い出したら教えてね。それじゃ、私そろそろ仕事に戻るから」


 フィナはよっと荷物を持ち直して、パタパタと立ち去っていった。
 私は影となったフィナの姿を見つめ呟く。

「なかなかと興味の尽きない少女だ」
「クスッ、忙しい中、フィナさんは色々なことを教えてくれます。とても親切な人だと思いますよ」
「ふふふ、たしかにな。それでは、私もそろそろ事務仕事に戻るよ」
「はい、私はカイン先生のところへお勉強に」
「そうか、頑張ってな」
「はい。ケント様も」

 エクアと別れ、執務室へ戻ることにした。
 だが、階段を上がろうとしたところで親父に呼び止められた。
 少々、怒ったような様子で。


「旦那っ、ちょいとお待ちを!」
「どうした、親父? 様子が変だが?」
「変にもなりますよ。三枚目と二枚目の防壁内にある、仕出し屋のことです」
「それがどうかしたのか?」

「聞いた話だと、許可証は発行していない。土地代も取っていない。そして、税金も取っていないそうじゃないですか?」
「ああ、そうだったな」
「そうだったな、じゃありませんよ! 領主様なんだから、そういったことはしっかりしませんと」

「そうは言っても、手続きをするほどでもないし。まして、税金なぞ。三つの店のうちの一つを切り盛りしてるのは幼い少女だから土地代や税金を取るのは……」
「なにを甘いことをっ。今後、ああいった店が増えてきたらどうするんですか? 締めるところは締めときませんと」
「それはそうかもしれんが、トーワにそういった法がないからなぁ」

 
 つい最近まで人などなく、法整備の必要性など皆無だった。
 そのため、それらの準備は全く行っていない。
 それどころか、必要になる日が来るとは夢にも思ってなかった。
 私はのんびりと言葉を返すが、親父は窮したように声を返してくる。

「ないなら作ってくださいよ。これは領主の仕事ですぜ!」
「はぁ~、現状でも忙しくて、余計な仕事は増やしたくないのだが」
「余計じゃありません。必要なもの! とりあえず、ヴァンナス法を基本として税制度や刑法なんぞをまとめときますんで、よろしいですか?」
「親父がやってくれるのか?」

「旦那は手一杯なんでしょう?」
「まぁな」
「そんなわけで、骨子は作っておきますんで、あとで目を通してくださいよ!」
「ああ……結局、仕事は増えるのか」
「なにか仰いましたか?」
「いや、別に」
「それじゃ、俺はいま店を開いている連中と話してきますんで、失礼します」
「今から? おい、親父……行ってしまったか」

 
 親父は早足に城の外へと出て行った。
 私はというと執務室に戻り、書類整理のために椅子に座るのだが……。


「う~ん、親父はキサのところに行ったのだろうな……あまりきついことを言っていないといいのだが……」
 ペンを持ち、書類に目を落とす……だが、ペンは一向に動こうとしない。

「……はぁ~、キサのことが気になるな。様子を見に行ってみるか」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...