127 / 359
第十二章 唸れ商魂!
切り開く商魂
しおりを挟む
挨拶を終えて、フィナとカインは早速病気で苦しんでいるキャビットのもとへ向かった。
私とキサは屋敷に残り、マフィンと会話を続ける。
「さきほど、私はアルリナへの恩返しと言ったが、それ以上にあなた方と交流を深めたいと思っている」
「理由は何ニャ?」
「流通を担うキャビットとの関係構築。今後のことを考えると、これほど大事なことはない。私のもとには錬金術士に医者がいる。彼らの力を最大限に発揮するためにも、あなた方とのつながりが必要だ」
「それを発揮して、どうするつもりだニャ?」
「トーワの発展。マフィンから見れば、馬鹿馬鹿しいことだろうが」
「いや、そうは思わないニャ。たしかに、お前のところには何もないニャ。にゃが、領主として自分が治める領地の発展を望まないなどありえないニャ。そして、少なくともケントには示せるものがあるニャ」
「示せるもの?」
「そうニャ。アルリナとワントワーフと関係を良好に結び、人材は少ないものの優秀な者がいるようニャ」
マフィンはちらりと集落に視線を振って、私に戻す。
「少数精鋭でどこまで頑張れるか見ものニャ」
「私はマフィンの娯楽扱いか?」
「にゃははは、若者が挑戦する様は年寄りの娯楽ニャよ」
「年寄り?」
「こう見えても、俺はもうすぐ百歳ニャ。人間族にすると五十くらいだけどニャ」
「ネオ陛下といい、どうして年寄りは若者を遊び道具にするのか……」
「ケントも年を取ったらわかるニャ。さて、本題に話を戻すにゃが、アルリナの関係を戻すのはあまり乗る気じゃないニャ」
「どうしてだ?」
「確かにムキは俺たちに仇をなしたニャ。にゃが、それはアルリナのギルド連中も同じニャ。あいつらはムキを隠れ蓑にして、俺たちの商売を邪魔したニャ。それは許せないことニャ」
「なるほど、問題はムキだけではなかったということか」
そうなると、再交流はかなり難しい。
一番手っ取り早く事を済ませるならば、ノイファンに頭を下げさせればいいだけだが、そんなことできるはずがない。
町の代表としておいそれと頭を下げるわけにはいかないし、下げればムキの後ろに隠れて悪事を行っていたと認めてしまうことになる。
これは面倒だな……と思っていると、キサが横から口を挟んできた。
「恨みは儲けを減らすことになるよ~」
「キサ?」
「商売において、感情を重視すると大切な時を失う。これはキャビットの教えだったと思うけど?」
「キサっ、言葉が過ぎるぞ」
「いや、ケント。構わんニャ。それで、ちっちゃな嬢ちゃんはキャビットの俺にどんなご高説を聞かせる気ニャ?」
マフィンは身体をのそりと前のめりにして、キサを覆うような姿勢を取った。
だが、キサは恐れることなくはきはきと言葉を発する。
「恨みを感謝で染めてしまえばいいんだと思うよ~」
「感謝? 面白い、続けろニャ」
「ねぇ。領主のお兄さん。いま、森のどこかに魔族がいるんだよね?」
「ああ、それについても後でマフィンと意見交換するつもりでいたが、それがどうした?」
「だったら、キャビット族で魔族を退治してしまえばいいんだよ。そうしたら、感謝の思いを伝える場所が作れるでしょ。そこから仲直りの準備をすればいいと思うな~」
「なるほど、直接的な関係再開ではなく、別の入り口からの新しい関係構築ということか。キサは賢い子だな」
「えへへ~、ほめられちゃった」
「しかし、それはそれで問題はあるが……」
私は顔をマフィンへ戻す。
彼は猫ひげを爪先でつまみ伸ばしながら、こう言葉を返した。
「魔族の相手となると、こっちもかなりの被害を覚悟しなきゃならニェ~。それに魔族は俺たちの住む森にいて、周りの種族はまだ脅威を自分のものと認識していニャい。そんな状況で魔族退治をしても、アルリナの連中が感謝なんぞするわけがにゃいニャ」
「マフィンの言うとおりだ。アルリナは魔族をそれほど恐れていない。現在、アルリナは盗賊団の方を注視しているくらいだからな」
ノイファンとの会合で、そういった話を聞いた。
ギルドの多くが魔族よりも商売優先で、街道沿いに出没する盗賊団の方がよっぽど面倒だと見ている。
魔族の脅威を忘れたアルリナにとって、魔族など些末な出来事にすぎないのだ。
だが、キサは諦めずに更なる提案を行う。
「それじゃ盗賊団を退治するのはどう、マフィン様?」
「盗賊団はカルポンティの近くに根城があるって話ニャ。俺たちでどうこうできる場所じゃにゃいニャ~……情けにゃい話だが、ムキがアルリナを牛耳っていたころは盗賊団などでにゃかったんだがニャ」
「ほぅ、そうなのか?」
「ああ、あいつは種族共用の街道自体も自分の縄張りのように扱ってたからニャ。にゃが、その分きっちり仕事をしてやがったニャ。しかしニャ、ノイファンは港ばかりに目が行って、あんまり街道に興味がにゃいのニャ」
「街道もまた、大事な商売を行う場だろうに、なぜ?」
「貿易だけで十分潤ってるからニャ。それに盗賊の根城がカルポンティ近くにあるから、カルポンティに任せるつもりニャろ。にゃけど、現在カルポンティは災害の復興の真っ最中で、盗賊団に手が回せないニャ」
「アグリスからは?」
「アグリスから見れば半島との商売は大した儲けににゃらないから、こちらで勝手にしろってところニャ。そのくせ、俺たちが退治を申し出ると、カルポンティへ立ち入ることは禁じてるニャ」
「縄張り争いが先行して、その狭間で盗賊が上手く動いているわけか」
「まったく、アグリスと関係が深いアルリナが強く働きかけてくれればよいニャが、ノイファンは借りを作るのを嫌がって商機を失ってるニャよ。これだから人間族の商売人は……」
マフィンは商売よりも、恩の貸し借りや縄張り争いに興じる人間族の行動に辟易と、もふもふの両手を上げて、ふわふわの毛で覆われた首を横に振った。
だが、彼の前に立つ、一人の少女。
人間族の商売人の少女が、褒め輝く策を打ち出す。
私とキサは屋敷に残り、マフィンと会話を続ける。
「さきほど、私はアルリナへの恩返しと言ったが、それ以上にあなた方と交流を深めたいと思っている」
「理由は何ニャ?」
「流通を担うキャビットとの関係構築。今後のことを考えると、これほど大事なことはない。私のもとには錬金術士に医者がいる。彼らの力を最大限に発揮するためにも、あなた方とのつながりが必要だ」
「それを発揮して、どうするつもりだニャ?」
「トーワの発展。マフィンから見れば、馬鹿馬鹿しいことだろうが」
「いや、そうは思わないニャ。たしかに、お前のところには何もないニャ。にゃが、領主として自分が治める領地の発展を望まないなどありえないニャ。そして、少なくともケントには示せるものがあるニャ」
「示せるもの?」
「そうニャ。アルリナとワントワーフと関係を良好に結び、人材は少ないものの優秀な者がいるようニャ」
マフィンはちらりと集落に視線を振って、私に戻す。
「少数精鋭でどこまで頑張れるか見ものニャ」
「私はマフィンの娯楽扱いか?」
「にゃははは、若者が挑戦する様は年寄りの娯楽ニャよ」
「年寄り?」
「こう見えても、俺はもうすぐ百歳ニャ。人間族にすると五十くらいだけどニャ」
「ネオ陛下といい、どうして年寄りは若者を遊び道具にするのか……」
「ケントも年を取ったらわかるニャ。さて、本題に話を戻すにゃが、アルリナの関係を戻すのはあまり乗る気じゃないニャ」
「どうしてだ?」
「確かにムキは俺たちに仇をなしたニャ。にゃが、それはアルリナのギルド連中も同じニャ。あいつらはムキを隠れ蓑にして、俺たちの商売を邪魔したニャ。それは許せないことニャ」
「なるほど、問題はムキだけではなかったということか」
そうなると、再交流はかなり難しい。
一番手っ取り早く事を済ませるならば、ノイファンに頭を下げさせればいいだけだが、そんなことできるはずがない。
町の代表としておいそれと頭を下げるわけにはいかないし、下げればムキの後ろに隠れて悪事を行っていたと認めてしまうことになる。
これは面倒だな……と思っていると、キサが横から口を挟んできた。
「恨みは儲けを減らすことになるよ~」
「キサ?」
「商売において、感情を重視すると大切な時を失う。これはキャビットの教えだったと思うけど?」
「キサっ、言葉が過ぎるぞ」
「いや、ケント。構わんニャ。それで、ちっちゃな嬢ちゃんはキャビットの俺にどんなご高説を聞かせる気ニャ?」
マフィンは身体をのそりと前のめりにして、キサを覆うような姿勢を取った。
だが、キサは恐れることなくはきはきと言葉を発する。
「恨みを感謝で染めてしまえばいいんだと思うよ~」
「感謝? 面白い、続けろニャ」
「ねぇ。領主のお兄さん。いま、森のどこかに魔族がいるんだよね?」
「ああ、それについても後でマフィンと意見交換するつもりでいたが、それがどうした?」
「だったら、キャビット族で魔族を退治してしまえばいいんだよ。そうしたら、感謝の思いを伝える場所が作れるでしょ。そこから仲直りの準備をすればいいと思うな~」
「なるほど、直接的な関係再開ではなく、別の入り口からの新しい関係構築ということか。キサは賢い子だな」
「えへへ~、ほめられちゃった」
「しかし、それはそれで問題はあるが……」
私は顔をマフィンへ戻す。
彼は猫ひげを爪先でつまみ伸ばしながら、こう言葉を返した。
「魔族の相手となると、こっちもかなりの被害を覚悟しなきゃならニェ~。それに魔族は俺たちの住む森にいて、周りの種族はまだ脅威を自分のものと認識していニャい。そんな状況で魔族退治をしても、アルリナの連中が感謝なんぞするわけがにゃいニャ」
「マフィンの言うとおりだ。アルリナは魔族をそれほど恐れていない。現在、アルリナは盗賊団の方を注視しているくらいだからな」
ノイファンとの会合で、そういった話を聞いた。
ギルドの多くが魔族よりも商売優先で、街道沿いに出没する盗賊団の方がよっぽど面倒だと見ている。
魔族の脅威を忘れたアルリナにとって、魔族など些末な出来事にすぎないのだ。
だが、キサは諦めずに更なる提案を行う。
「それじゃ盗賊団を退治するのはどう、マフィン様?」
「盗賊団はカルポンティの近くに根城があるって話ニャ。俺たちでどうこうできる場所じゃにゃいニャ~……情けにゃい話だが、ムキがアルリナを牛耳っていたころは盗賊団などでにゃかったんだがニャ」
「ほぅ、そうなのか?」
「ああ、あいつは種族共用の街道自体も自分の縄張りのように扱ってたからニャ。にゃが、その分きっちり仕事をしてやがったニャ。しかしニャ、ノイファンは港ばかりに目が行って、あんまり街道に興味がにゃいのニャ」
「街道もまた、大事な商売を行う場だろうに、なぜ?」
「貿易だけで十分潤ってるからニャ。それに盗賊の根城がカルポンティ近くにあるから、カルポンティに任せるつもりニャろ。にゃけど、現在カルポンティは災害の復興の真っ最中で、盗賊団に手が回せないニャ」
「アグリスからは?」
「アグリスから見れば半島との商売は大した儲けににゃらないから、こちらで勝手にしろってところニャ。そのくせ、俺たちが退治を申し出ると、カルポンティへ立ち入ることは禁じてるニャ」
「縄張り争いが先行して、その狭間で盗賊が上手く動いているわけか」
「まったく、アグリスと関係が深いアルリナが強く働きかけてくれればよいニャが、ノイファンは借りを作るのを嫌がって商機を失ってるニャよ。これだから人間族の商売人は……」
マフィンは商売よりも、恩の貸し借りや縄張り争いに興じる人間族の行動に辟易と、もふもふの両手を上げて、ふわふわの毛で覆われた首を横に振った。
だが、彼の前に立つ、一人の少女。
人間族の商売人の少女が、褒め輝く策を打ち出す。
11
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件
fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。
チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!?
実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。
「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる