銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
145 / 359
第十三章 呪われた大地の調査

時に追われるフィナ

しおりを挟む
 地下室で遺跡探索の可能性を見たあと、数日が経った。
 その間に私とマスティフとマフィンは念のための健康診断を終え、特に問題ないとカインから太鼓判を押された。

 二人には放射線のことは話さず、大地の毒のせいで身体に問題があるかもしれないという理由でカインに診断させた。
 そうやって誤魔化したはずなのに……。



――トーワ城・三階・執務室


 マスティフとマフィンは尻尾を怪しく揺らめかせながら私に詰め寄るような形で話しかけてくる。

「ケント殿。遺跡の探索を行うという話を小耳に挟んだのだが?」
「トーワの領内のこととはいえ、抜け駆けはいけにゃいニャ」
「何のことかな?」
「とぼけんニャ! ネタは上がっているニャよ!」
「うむ、フィナ殿が私たちに協力を呼び掛けてな」
「フィナが? また、勝手なことをっ」

 こう、強く言葉を飛ばすと、声に応えるように扉が開いた。


「勝手をしたのはごめん。でも、必要なことなのよ」

 フィナがギウとエクアと親父とカインを連れて現れた。
 私はフィナに問いかける。

「必要なこと? どういう意味だ?」
「ケント。お婆さんから貰ったペンダントは?」
「ん? 首にかけているが?」

 と言って、胸元から両端が尖った六角柱の七色水晶のペンダントを取り出す。


「そのまましっかり持ってなさい」
「……ああ?」
「それと、今から私とケントが持つ情報をここにいる全員と共有する」
「はっ? 突然、何を言っている!?」
「遺跡の攻略にはそれが必要。そうでなければ行えないの」
「フィナ? 君は遺跡の何を知っているというんだ?」

 フィナは私の問いかけを無視し、背中を見せて、皆にこれまでの情報の開示を始めた。
 私はすぐさま止めに入るが、彼女はワントワーフのおさ・マスティフとキャビットの長・マフィンの地位を利用する。


「フィナ!?」
「もう、止めるのは無理よ。ここにはワントワーフの長とキャビットの長がいる。ここで話を止めて秘密にすれば、二人はヴァンナスに報告するでしょう」
「クッ!」

 それはフィナの言うとおりだ。
 もし、私たちが情報の共有を拒めば、二人はヴァンナスへ通報すると脅すだろう。
 彼らを口止めするためには、情報を開示し、協力を願うしかない。

 フィナはマスティフとマフィン、そしてエクアたちにも知り得る限りの事実を話している。
 自身が実践派のおさ、フィナ=ス=テイローであること。
 私がアステ=ゼ=アーガメイトの息子であること。
 遺跡の探索のこと。
 古代人が異世界人であること。

 古代人に関して、マスティフとマフィンは知っていた。彼らは一族を束ねる長であるため世界の機密を知っている。
 だが、親父とカインは驚きに体を固めていた。ギウはというと「ギウッ」と深く言葉を出しただけで、大きな反応を見せなかった。彼は肝が据わっている。
 さらに、古城トーワの地下室に存在している謎の数式と設計図のこと。
 そして、大地に眠る放射性物質の存在とその恐ろしさを……。

 

 数式と設計図の正体に関してフィナは、これらの正体を私に問い詰めてきた。だが、私は固く口を閉じ抵抗した。
 これにはフィナはもちろんのこと、マスティフやマフィンも不満を表すが、かたくなに口を閉じ続ける私を見て、三人は渋々といった様子で退いた。


 フィナは全員に遺跡の危険性。主に放射線の恐ろしさを説き、遺跡探索の協力を願い出る。
 皆は未知の恐ろしさを前にしても、フィナの覚悟の籠る言葉に同意の声を返した。
 その声たちを受け取り、彼女は矢継ぎ早に言葉を編んでいく。


「マスティフさん、マフィンさん」
「なんだ?」
「なんニャ?」

「二人は協力して使える技を持ってるよね?」
「な!?」
「何故、それをニャ!?」
「まだ、ワントワーフとキャビットの仲がそれほど悪くなかったころ、魔族と対抗するために生み出された秘儀。キャビットが魔法を使い、ワントワーフの身体能力を大幅に上げる技。それが必要になる。二人は練習してて」

「待ってくれっ。どうしてフィナ殿は?」
「その秘儀は数百年前に途絶えた秘中の秘のニャよ! もはや、キャビットとワントワーフでさえ知る者は少にゃい技をニャぜ?」
「エクア、親父っ」
 

 フィナは二人に言葉を返さず、次々に指示を与えていく。
 無理を押すフィナ。一体、彼女はどうしたのだろうか?
 彼女の剣幕にマスティフとマフィンは押し黙り、エクアと親父は緊張に声を跳ねる。

「は、はいっ」
「な、なんだ?」

「二人には遺跡探索についてきてもらう。二人はその時居たらしいから」
「はぁ?」
「よくわからんが、わかった」

「ギウとカイン」
「ギウ?」
「なんでしょう?」


「二人にも遺跡の探索についてきてほしいけど、今回はお城で待機していてくれる」
「それは構いませんが……」

 カインはちらりと隣に立つギウを見た。
 ギウは遺跡の名を聞いて、ガタガタと震えている。
 その様子を目にしたフィナは首を傾げる。


「どうしたの、ギウ?」
「ぎう~」
 ギウは小さく声を漏らして、黙り込んでしまった。
 彼の代わりに私が答える。


「ギウは遺跡に近づきたくないんだ」
「そういえば、最初の遺跡探索の時もギウは断ったよね。ねぇ、ギウ。どうして、近づきたくないの?」
「ギウ……ギウギウ」

 ギウは何度も体を前に振り、謝罪するような態度を見せている。
 答えを得られないフィナはいつものように無遠慮に切り込もうとした。
 それを私が止めに入る。

「無理に聞き出そうとするな。彼にも何かの事情があるのだろう」
「その事情がわからないと後々困るかもしれないじゃんっ。今は少しでも多くの情報が欲しいの! たとえ、知り過ぎるのはよくないとしても! 本当なら、数式と設計図の正体だって必要なことなのかもしれないのにっ!」
「ん、知り過ぎるのはよくないとは?」
「な、なんでもない! 口を挟まないで!」


 フィナはいら立ちを見せるように言葉を飛ばす。
 腰元に置いた手は、その指先で何度も腰を叩き、足はそわそわと落ち着きなく動いている。

「フィナ、何を焦っている? 私に何の相談もなく、マフィンたちに事情を話し協力を取り付けて、あまつさえ探索メンバーの選出を行っている。これらは私が行うことで――」
「わかってるっ。でも、今回だけは私に仕切らせて!」
「理由は?」
「言えないっ! 答えないっ! だから聞かないで!!」


 言葉が爆ぜるように執務室内に広がった。
 こちらに有無など言わせる気はないようだ。
 それでも、責任者として、問わないわけにはいかない。

「フィナ……何を考えているかはわからないが、冷静になってほしい。そうでなければ、君の話に耳を傾けるわけには……」
「……そうね。少し、冷静さに欠けてる。ふぅ~、知るって結構面倒なことなんだ」
「知る?」


 この問いにもやはり答えを返さない。
 だが、フィナはいつになく表情を硬くして、まっすぐと私を見つめてきた。

「私の行動はおかしく見えるだろうけど、全部必要なこと。だから、今は信じてほしい」

 フィナの瞳に宿る光は、私にはまったくわからない光。
 だが、覚悟というものは伝わってくる。

「君に任せて、皆に危険はないのだな?」
「ええ、私に任せておけば、必ず危険を回避してみせる」
「……わかった、君に従おう。しかし――」
「わかってる。私のことを異常と判断すれば、指示は無視しても構わない。それに、この一連の動きはあとで絶対に説明するから。いえ、知らないといけないことっ」

 フィナはちらりとエクアを見て、私を見る。
 今の仕草は一体……?
 彼女は全員の姿を瞳に入れて、念には念を入れ、もう一度放射線に関する情報を皆に伝える。
 各々が情報を飲み込めたところで、遺跡探索のための説明を始めた。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...