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第十三章 呪われた大地の調査
時に追われるフィナ
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地下室で遺跡探索の可能性を見たあと、数日が経った。
その間に私とマスティフとマフィンは念のための健康診断を終え、特に問題ないとカインから太鼓判を押された。
二人には放射線のことは話さず、大地の毒のせいで身体に問題があるかもしれないという理由でカインに診断させた。
そうやって誤魔化したはずなのに……。
――トーワ城・三階・執務室
マスティフとマフィンは尻尾を怪しく揺らめかせながら私に詰め寄るような形で話しかけてくる。
「ケント殿。遺跡の探索を行うという話を小耳に挟んだのだが?」
「トーワの領内のこととはいえ、抜け駆けはいけにゃいニャ」
「何のことかな?」
「とぼけんニャ! ネタは上がっているニャよ!」
「うむ、フィナ殿が私たちに協力を呼び掛けてな」
「フィナが? また、勝手なことをっ」
こう、強く言葉を飛ばすと、声に応えるように扉が開いた。
「勝手をしたのはごめん。でも、必要なことなのよ」
フィナがギウとエクアと親父とカインを連れて現れた。
私はフィナに問いかける。
「必要なこと? どういう意味だ?」
「ケント。お婆さんから貰ったペンダントは?」
「ん? 首にかけているが?」
と言って、胸元から両端が尖った六角柱の七色水晶のペンダントを取り出す。
「そのまましっかり持ってなさい」
「……ああ?」
「それと、今から私とケントが持つ情報をここにいる全員と共有する」
「はっ? 突然、何を言っている!?」
「遺跡の攻略にはそれが必要。そうでなければ行えないの」
「フィナ? 君は遺跡の何を知っているというんだ?」
フィナは私の問いかけを無視し、背中を見せて、皆にこれまでの情報の開示を始めた。
私はすぐさま止めに入るが、彼女はワントワーフの長・マスティフとキャビットの長・マフィンの地位を利用する。
「フィナ!?」
「もう、止めるのは無理よ。ここにはワントワーフの長とキャビットの長がいる。ここで話を止めて秘密にすれば、二人はヴァンナスに報告するでしょう」
「クッ!」
それはフィナの言うとおりだ。
もし、私たちが情報の共有を拒めば、二人はヴァンナスへ通報すると脅すだろう。
彼らを口止めするためには、情報を開示し、協力を願うしかない。
フィナはマスティフとマフィン、そしてエクアたちにも知り得る限りの事実を話している。
自身が実践派の長、フィナ=ス=テイローであること。
私がアステ=ゼ=アーガメイトの息子であること。
遺跡の探索のこと。
古代人が異世界人であること。
古代人に関して、マスティフとマフィンは知っていた。彼らは一族を束ねる長であるため世界の機密を知っている。
だが、親父とカインは驚きに体を固めていた。ギウはというと「ギウッ」と深く言葉を出しただけで、大きな反応を見せなかった。彼は肝が据わっている。
さらに、古城トーワの地下室に存在している謎の数式と設計図のこと。
そして、大地に眠る放射性物質の存在とその恐ろしさを……。
数式と設計図の正体に関してフィナは、これらの正体を私に問い詰めてきた。だが、私は固く口を閉じ抵抗した。
これにはフィナはもちろんのこと、マスティフやマフィンも不満を表すが、頑なに口を閉じ続ける私を見て、三人は渋々といった様子で退いた。
フィナは全員に遺跡の危険性。主に放射線の恐ろしさを説き、遺跡探索の協力を願い出る。
皆は未知の恐ろしさを前にしても、フィナの覚悟の籠る言葉に同意の声を返した。
その声たちを受け取り、彼女は矢継ぎ早に言葉を編んでいく。
「マスティフさん、マフィンさん」
「なんだ?」
「なんニャ?」
「二人は協力して使える技を持ってるよね?」
「な!?」
「何故、それをニャ!?」
「まだ、ワントワーフとキャビットの仲がそれほど悪くなかったころ、魔族と対抗するために生み出された秘儀。キャビットが魔法を使い、ワントワーフの身体能力を大幅に上げる技。それが必要になる。二人は練習してて」
「待ってくれっ。どうしてフィナ殿は?」
「その秘儀は数百年前に途絶えた秘中の秘のニャよ! もはや、キャビットとワントワーフでさえ知る者は少にゃい技をニャぜ?」
「エクア、親父っ」
フィナは二人に言葉を返さず、次々に指示を与えていく。
無理を押すフィナ。一体、彼女はどうしたのだろうか?
彼女の剣幕にマスティフとマフィンは押し黙り、エクアと親父は緊張に声を跳ねる。
「は、はいっ」
「な、なんだ?」
「二人には遺跡探索についてきてもらう。二人はその時居たらしいから」
「はぁ?」
「よくわからんが、わかった」
「ギウとカイン」
「ギウ?」
「なんでしょう?」
「二人にも遺跡の探索についてきてほしいけど、今回はお城で待機していてくれる」
「それは構いませんが……」
カインはちらりと隣に立つギウを見た。
ギウは遺跡の名を聞いて、ガタガタと震えている。
その様子を目にしたフィナは首を傾げる。
「どうしたの、ギウ?」
「ぎう~」
ギウは小さく声を漏らして、黙り込んでしまった。
彼の代わりに私が答える。
「ギウは遺跡に近づきたくないんだ」
「そういえば、最初の遺跡探索の時もギウは断ったよね。ねぇ、ギウ。どうして、近づきたくないの?」
「ギウ……ギウギウ」
ギウは何度も体を前に振り、謝罪するような態度を見せている。
答えを得られないフィナはいつものように無遠慮に切り込もうとした。
それを私が止めに入る。
「無理に聞き出そうとするな。彼にも何かの事情があるのだろう」
「その事情がわからないと後々困るかもしれないじゃんっ。今は少しでも多くの情報が欲しいの! たとえ、知り過ぎるのはよくないとしても! 本当なら、数式と設計図の正体だって必要なことなのかもしれないのにっ!」
「ん、知り過ぎるのはよくないとは?」
「な、なんでもない! 口を挟まないで!」
フィナはいら立ちを見せるように言葉を飛ばす。
腰元に置いた手は、その指先で何度も腰を叩き、足はそわそわと落ち着きなく動いている。
「フィナ、何を焦っている? 私に何の相談もなく、マフィンたちに事情を話し協力を取り付けて、あまつさえ探索メンバーの選出を行っている。これらは私が行うことで――」
「わかってるっ。でも、今回だけは私に仕切らせて!」
「理由は?」
「言えないっ! 答えないっ! だから聞かないで!!」
言葉が爆ぜるように執務室内に広がった。
こちらに有無など言わせる気はないようだ。
それでも、責任者として、問わないわけにはいかない。
「フィナ……何を考えているかはわからないが、冷静になってほしい。そうでなければ、君の話に耳を傾けるわけには……」
「……そうね。少し、冷静さに欠けてる。ふぅ~、知るって結構面倒なことなんだ」
「知る?」
この問いにもやはり答えを返さない。
だが、フィナはいつになく表情を硬くして、まっすぐと私を見つめてきた。
「私の行動はおかしく見えるだろうけど、全部必要なこと。だから、今は信じてほしい」
フィナの瞳に宿る光は、私にはまったくわからない光。
だが、覚悟というものは伝わってくる。
「君に任せて、皆に危険はないのだな?」
「ええ、私に任せておけば、必ず危険を回避してみせる」
「……わかった、君に従おう。しかし――」
「わかってる。私のことを異常と判断すれば、指示は無視しても構わない。それに、この一連の動きはあとで絶対に説明するから。いえ、知らないといけないことっ」
フィナはちらりとエクアを見て、私を見る。
今の仕草は一体……?
彼女は全員の姿を瞳に入れて、念には念を入れ、もう一度放射線に関する情報を皆に伝える。
各々が情報を飲み込めたところで、遺跡探索のための説明を始めた。
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二人には放射線のことは話さず、大地の毒のせいで身体に問題があるかもしれないという理由でカインに診断させた。
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「何のことかな?」
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私はフィナに問いかける。
「必要なこと? どういう意味だ?」
「ケント。お婆さんから貰ったペンダントは?」
「ん? 首にかけているが?」
と言って、胸元から両端が尖った六角柱の七色水晶のペンダントを取り出す。
「そのまましっかり持ってなさい」
「……ああ?」
「それと、今から私とケントが持つ情報をここにいる全員と共有する」
「はっ? 突然、何を言っている!?」
「遺跡の攻略にはそれが必要。そうでなければ行えないの」
「フィナ? 君は遺跡の何を知っているというんだ?」
フィナは私の問いかけを無視し、背中を見せて、皆にこれまでの情報の開示を始めた。
私はすぐさま止めに入るが、彼女はワントワーフの長・マスティフとキャビットの長・マフィンの地位を利用する。
「フィナ!?」
「もう、止めるのは無理よ。ここにはワントワーフの長とキャビットの長がいる。ここで話を止めて秘密にすれば、二人はヴァンナスに報告するでしょう」
「クッ!」
それはフィナの言うとおりだ。
もし、私たちが情報の共有を拒めば、二人はヴァンナスへ通報すると脅すだろう。
彼らを口止めするためには、情報を開示し、協力を願うしかない。
フィナはマスティフとマフィン、そしてエクアたちにも知り得る限りの事実を話している。
自身が実践派の長、フィナ=ス=テイローであること。
私がアステ=ゼ=アーガメイトの息子であること。
遺跡の探索のこと。
古代人が異世界人であること。
古代人に関して、マスティフとマフィンは知っていた。彼らは一族を束ねる長であるため世界の機密を知っている。
だが、親父とカインは驚きに体を固めていた。ギウはというと「ギウッ」と深く言葉を出しただけで、大きな反応を見せなかった。彼は肝が据わっている。
さらに、古城トーワの地下室に存在している謎の数式と設計図のこと。
そして、大地に眠る放射性物質の存在とその恐ろしさを……。
数式と設計図の正体に関してフィナは、これらの正体を私に問い詰めてきた。だが、私は固く口を閉じ抵抗した。
これにはフィナはもちろんのこと、マスティフやマフィンも不満を表すが、頑なに口を閉じ続ける私を見て、三人は渋々といった様子で退いた。
フィナは全員に遺跡の危険性。主に放射線の恐ろしさを説き、遺跡探索の協力を願い出る。
皆は未知の恐ろしさを前にしても、フィナの覚悟の籠る言葉に同意の声を返した。
その声たちを受け取り、彼女は矢継ぎ早に言葉を編んでいく。
「マスティフさん、マフィンさん」
「なんだ?」
「なんニャ?」
「二人は協力して使える技を持ってるよね?」
「な!?」
「何故、それをニャ!?」
「まだ、ワントワーフとキャビットの仲がそれほど悪くなかったころ、魔族と対抗するために生み出された秘儀。キャビットが魔法を使い、ワントワーフの身体能力を大幅に上げる技。それが必要になる。二人は練習してて」
「待ってくれっ。どうしてフィナ殿は?」
「その秘儀は数百年前に途絶えた秘中の秘のニャよ! もはや、キャビットとワントワーフでさえ知る者は少にゃい技をニャぜ?」
「エクア、親父っ」
フィナは二人に言葉を返さず、次々に指示を与えていく。
無理を押すフィナ。一体、彼女はどうしたのだろうか?
彼女の剣幕にマスティフとマフィンは押し黙り、エクアと親父は緊張に声を跳ねる。
「は、はいっ」
「な、なんだ?」
「二人には遺跡探索についてきてもらう。二人はその時居たらしいから」
「はぁ?」
「よくわからんが、わかった」
「ギウとカイン」
「ギウ?」
「なんでしょう?」
「二人にも遺跡の探索についてきてほしいけど、今回はお城で待機していてくれる」
「それは構いませんが……」
カインはちらりと隣に立つギウを見た。
ギウは遺跡の名を聞いて、ガタガタと震えている。
その様子を目にしたフィナは首を傾げる。
「どうしたの、ギウ?」
「ぎう~」
ギウは小さく声を漏らして、黙り込んでしまった。
彼の代わりに私が答える。
「ギウは遺跡に近づきたくないんだ」
「そういえば、最初の遺跡探索の時もギウは断ったよね。ねぇ、ギウ。どうして、近づきたくないの?」
「ギウ……ギウギウ」
ギウは何度も体を前に振り、謝罪するような態度を見せている。
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「ん、知り過ぎるのはよくないとは?」
「な、なんでもない! 口を挟まないで!」
フィナはいら立ちを見せるように言葉を飛ばす。
腰元に置いた手は、その指先で何度も腰を叩き、足はそわそわと落ち着きなく動いている。
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「わかってるっ。でも、今回だけは私に仕切らせて!」
「理由は?」
「言えないっ! 答えないっ! だから聞かないで!!」
言葉が爆ぜるように執務室内に広がった。
こちらに有無など言わせる気はないようだ。
それでも、責任者として、問わないわけにはいかない。
「フィナ……何を考えているかはわからないが、冷静になってほしい。そうでなければ、君の話に耳を傾けるわけには……」
「……そうね。少し、冷静さに欠けてる。ふぅ~、知るって結構面倒なことなんだ」
「知る?」
この問いにもやはり答えを返さない。
だが、フィナはいつになく表情を硬くして、まっすぐと私を見つめてきた。
「私の行動はおかしく見えるだろうけど、全部必要なこと。だから、今は信じてほしい」
フィナの瞳に宿る光は、私にはまったくわからない光。
だが、覚悟というものは伝わってくる。
「君に任せて、皆に危険はないのだな?」
「ええ、私に任せておけば、必ず危険を回避してみせる」
「……わかった、君に従おう。しかし――」
「わかってる。私のことを異常と判断すれば、指示は無視しても構わない。それに、この一連の動きはあとで絶対に説明するから。いえ、知らないといけないことっ」
フィナはちらりとエクアを見て、私を見る。
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