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第十四章 兵(つわもの)どもが夢の跡
未踏の領域
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廊下から階段へ戻り、さらに下の階へ向かう。
屋上から下三階――そこには遺体など一つもない。
深紅のナルフは警戒色である黄色の衣を脱ぎ捨てて、自身の肌の色と同じ赤色の点滅を見せ始めた。
「ここで限界ね。ここから先は人の入れる領域じゃない。だから……ちょろっと覗いて、もどろっか?」
と言って、フィナは視線を廊下の先に投げている。
私も彼女の視線の先を追う。
「たしかにいますぐ帰りたいと思うが……あれは気になるな」
ナルフの僅かな光量だけでは闇を打ち払えぬ薄暗い長廊下――その先にあるのは、陽炎のように浮かび上がる大きめの扉。
今までにはなかったタイプの扉だ。
「あの部屋を確認してから戻るとしよう。あそこまで行くことができればだが」
「結界を強化して、ポシェットに入れてある魔法石で光の魔法を強化すれば、十分行ける」
「そうか、皆は大丈夫か?」
問いかけに、四人は扉を見つめながら首を小さく縦に振った。
彼らも危険を感じつつあるが、部屋の中身が気になるようだ。
フィナは皆へ呼びかける。
「ここから先は、少しでも危険と感じたら退くから。ゆっくり歩いていきましょう」
彼女は結界の外に浮かぶ赤いナルフと、手元に浮かべる青いナルフをちらりちらりと見ている。
普段大胆な彼女がここまで慎重になるということは、放射線の線量が危険水域に達しているのであろう。
「フィナ、聞くべきではないだろうが、もし、ここで結界が壊れたら?」
「即死」
「うん……ま、そうだろうな」
やはり聞くべきではなかった……敢えてよかったとするならば、苦しまずに済むというところか。
死という言葉は、私たちの足をより一層慎重にさせて、先を歩ませる。
――そこで突然、施設内に音が響き渡る!
『えおいdfぽfれおいあおいsぎgヴぉじょえおけjdlせ』
「なんだっ!?」
「わかんないっ! 古代人の言語? ヤっバ!? 正面から何か来るっ!?」
廊下の正面から緑色の光が壁のように押し寄せてくる。
その光は私たちを覆っていた結界を容赦なく吹き飛ばしていった!
「うわっ!?」
私たちは皆、思い思いの姿で身を守る。
しかし、それは無意味。結界が壊れれば即死……の、はずだが?
私は丸く縮めた体をゆっくり広げていく。恐怖によろめいた足は、壁に背中を預けさせる。
「生きている?」
と、言葉を発した瞬間、廊下に明かりが灯り始めた。
明かりの光源はどこにもない。
この不可思議な明かりは目にとても柔らかで、まるで太陽の下で過ごしているかのような自然なもの。それが廊下を満たしている。
暗がりが消え去った壁や廊下や天井は薄い青色。
材質は非常に滑らかな金属のようで、そっと触れると固いが、少し勢いをつけて触れると弾力があり温かい。
ここまで固かった床もまた、激しく踏みつけると柔らかさを感じる不思議なものへと変化していた。
「なにが起こったんだ?」
私の声に、ナルフを覗き込んでいるフィナが言葉を震わせながら答えてきた。
「し、信じられない。周囲の汚染が全て浄化されてる……」
緑色の光により、結界は壊された。
だが同時に、施設の汚染は浄化され、内部は光によって満たされた。
フィナはナルフを使い、これらの事象を読み解いていく。
「施設全体から何らかのエネルギー反応が出ている。稼働を始めた? おそらく、私たちの生命反応を読み取って? だとすると、ここから先はっ」
「フィナ?」
「たぶんだけど、この施設の何かが私たちの存在を感知して稼働を始めたの。それで、汚染物質を除去して、明かりをつけたってわけ。なんて技術なのっ。あれだけの汚染を一瞬にして浄化するなんて!」
「よくわからないが、施設は動き始めたのか……浄化できるなら、なぜ古代人は浄化しなかったんだろうか?」
「さぁ、そんなのわかんないよ。何か理由があるのか、その時はできなかったのか……でも、ただ一つ、わかることがある」
「それはなんだ?」
「生命体がこの区画に入ることで、施設が反応した。つまり、今までここに訪れた者はいないってこと。ということはっ?」
「ヴァンナスもランゲンも立ち入っていないわけか!?」
「それよっ。ここから先は完全に未踏の領域!」
私とフィナ。
エクアに親父にマスティフにマフィンも、廊下の先にある左右から閉じられた大きな扉を見つめる。
「あの扉の先は未知の領域。そして、そこへ至る道で稼働したということは……何かがあるというわけか」
屋上から下三階――そこには遺体など一つもない。
深紅のナルフは警戒色である黄色の衣を脱ぎ捨てて、自身の肌の色と同じ赤色の点滅を見せ始めた。
「ここで限界ね。ここから先は人の入れる領域じゃない。だから……ちょろっと覗いて、もどろっか?」
と言って、フィナは視線を廊下の先に投げている。
私も彼女の視線の先を追う。
「たしかにいますぐ帰りたいと思うが……あれは気になるな」
ナルフの僅かな光量だけでは闇を打ち払えぬ薄暗い長廊下――その先にあるのは、陽炎のように浮かび上がる大きめの扉。
今までにはなかったタイプの扉だ。
「あの部屋を確認してから戻るとしよう。あそこまで行くことができればだが」
「結界を強化して、ポシェットに入れてある魔法石で光の魔法を強化すれば、十分行ける」
「そうか、皆は大丈夫か?」
問いかけに、四人は扉を見つめながら首を小さく縦に振った。
彼らも危険を感じつつあるが、部屋の中身が気になるようだ。
フィナは皆へ呼びかける。
「ここから先は、少しでも危険と感じたら退くから。ゆっくり歩いていきましょう」
彼女は結界の外に浮かぶ赤いナルフと、手元に浮かべる青いナルフをちらりちらりと見ている。
普段大胆な彼女がここまで慎重になるということは、放射線の線量が危険水域に達しているのであろう。
「フィナ、聞くべきではないだろうが、もし、ここで結界が壊れたら?」
「即死」
「うん……ま、そうだろうな」
やはり聞くべきではなかった……敢えてよかったとするならば、苦しまずに済むというところか。
死という言葉は、私たちの足をより一層慎重にさせて、先を歩ませる。
――そこで突然、施設内に音が響き渡る!
『えおいdfぽfれおいあおいsぎgヴぉじょえおけjdlせ』
「なんだっ!?」
「わかんないっ! 古代人の言語? ヤっバ!? 正面から何か来るっ!?」
廊下の正面から緑色の光が壁のように押し寄せてくる。
その光は私たちを覆っていた結界を容赦なく吹き飛ばしていった!
「うわっ!?」
私たちは皆、思い思いの姿で身を守る。
しかし、それは無意味。結界が壊れれば即死……の、はずだが?
私は丸く縮めた体をゆっくり広げていく。恐怖によろめいた足は、壁に背中を預けさせる。
「生きている?」
と、言葉を発した瞬間、廊下に明かりが灯り始めた。
明かりの光源はどこにもない。
この不可思議な明かりは目にとても柔らかで、まるで太陽の下で過ごしているかのような自然なもの。それが廊下を満たしている。
暗がりが消え去った壁や廊下や天井は薄い青色。
材質は非常に滑らかな金属のようで、そっと触れると固いが、少し勢いをつけて触れると弾力があり温かい。
ここまで固かった床もまた、激しく踏みつけると柔らかさを感じる不思議なものへと変化していた。
「なにが起こったんだ?」
私の声に、ナルフを覗き込んでいるフィナが言葉を震わせながら答えてきた。
「し、信じられない。周囲の汚染が全て浄化されてる……」
緑色の光により、結界は壊された。
だが同時に、施設の汚染は浄化され、内部は光によって満たされた。
フィナはナルフを使い、これらの事象を読み解いていく。
「施設全体から何らかのエネルギー反応が出ている。稼働を始めた? おそらく、私たちの生命反応を読み取って? だとすると、ここから先はっ」
「フィナ?」
「たぶんだけど、この施設の何かが私たちの存在を感知して稼働を始めたの。それで、汚染物質を除去して、明かりをつけたってわけ。なんて技術なのっ。あれだけの汚染を一瞬にして浄化するなんて!」
「よくわからないが、施設は動き始めたのか……浄化できるなら、なぜ古代人は浄化しなかったんだろうか?」
「さぁ、そんなのわかんないよ。何か理由があるのか、その時はできなかったのか……でも、ただ一つ、わかることがある」
「それはなんだ?」
「生命体がこの区画に入ることで、施設が反応した。つまり、今までここに訪れた者はいないってこと。ということはっ?」
「ヴァンナスもランゲンも立ち入っていないわけか!?」
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