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第十五章 未熟なる神の如き存在
もう一人の私
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フィナが施設の扱い方に没頭する中、私と親父とマスティフとマフィンは雑談を始め、親父が別の世界の自分のことについて尋ねてくる。
「さっきは雰囲気が雰囲気でしたんで尋ねにくかったんですが、俺は別の時間軸ってやつでも、ここにいたわけですよね、旦那?」
「そうらしいな」
「ワシらはおらんかったようだが」
「ケントはこのお宝を一人占めしようとしたんニャね」
ジロリと、強烈な犬の目猫の目で睨まれる。
「そんな目で見られても……それは私ではないし」
「にゃけど、未来からの手紙がなく、フィナが誘わなければ俺たちを同行させる気はなかったわけだしニャ」
「そうであろうな。ワシらは仲間外れにされておったわけか。ケント殿が一人占めにしようとした事実は変わらんな」
「ヴァンナスに知られたくない手前、それは仕方ないだろう。それで、親父は何か尋ねたかったんじゃないのか?」
「それなんですがね、未来ではエクアのお嬢ちゃんとフィナのお嬢ちゃんが頑張って旦那を救おうとしていたんですよね?」
「そうらしいな」
「俺はどこに行ったんでしょう?」
「トーワから人が消えた。と書いてあったから、どこかへ旅立ったのかもな……この、薄情者」
「いやいや、それは俺じゃありませんからっ。もしかしたら手紙に書いてないだけで、何かしらの協力をしてたかもしれませんよ」
「あはは、そうかもしれないな。なにせ、ギウのことも書かれていない。事が起こるまで未来が変わらないように、本当に必要なことしか書かなかったのだろう」
私たちはすっかり気持ちを入れ替えて雑談に耽る。
だが、隣にいるエクアは顔に影を差したままだ。
「エクア?」
「え、はい、なんでしょうか?」
「大丈夫か? かなりショック受けているように見えるが?」
「……そうですね。あのお婆さんは私であっても、今の私じゃない。でも、なんというか、気持ちの整理がつかないというか。そもそも、整理という考えすらおかしいというか」
「あまり深く考えない方がいいぞ、エクア。本来なら私もあそこで死んでいた、と考えると妙な気分になるし」
「そうですね。お婆さんには申し訳ないですけど、感謝だけを思って、この奇妙な悲しさは一時忘れることにします」
エクアは小さく息をついて胸元に手を置く。
彼女はこの中で最も幼く、歳は十二。
本来ならば、同じ年の子どもたちと遊び、学んでいるはずの年齢。
そうでありながらも、両親を亡くし、悪党どもに利用され、未来の自分の死という不可思議な出来事に直面しても、冷静であり、心を平静に保てる彼女の成長とその姿を敬い、私は優しく声を掛けた。
「ああ、それでいいと思う」
「っしゃ、きたっ!」
突如、フィナの声が響く。
雰囲気も何もあったもんじゃない……。
「何が来たんだ?」
「ナルフと同期できたのよ! それじゃ、さっそく!!」
フィナは深紅のナルフを浮かべ、ナルフのつるりとした鏡面に浮かぶ施設の回路図のようなものを覗き込んでいる。
「え~っと、どっかに翻訳システムがあるはず…………あったっ。たぶん、これが翻訳システム。そこをいじって、音声入力を可能にする場所は~……よし、ここにアクセスしてっと」
「音声入力? それができれば素晴らしいが、私たちの言葉を理解してもらえるのか?」
「たぶんそれは無理。見た感じ、翻訳システムが異常をきたしてるし、私たちの言語らしき情報もなさそう。見たこともない他の世界の言語はあるっぽいのに」
と言って、体を少しずらし、ナルフの鏡面が私たちの目に入りやすいようにする。
鏡面には少し歪んだ八角の星形を中心に、無数の見知らぬ言語が無秩序に流れている。
どうやら、言語に囲まれ歪んだ星形が翻訳システムのようだ。
「私たちの言語情報はないのに他の世界の言語はある? フィナ、それが意味するのは……?」
「はっきりとは言えないけど、私たちの言語情報は消された形跡があるっぽい。たぶん、スカルペル人がこの施設を扱えないように古代人が消したんじゃないかな?」
「それなら、情報そのものを消すなり施設ごと消すなりすればよかったものの」
「それはあとで使うつもりだった……もしくは」
「工作を行う余裕がなかった? 浄化もまともにされていなかったところを併せてみると、かなりの緊急事態が発生していたのか?」
この私の言葉にフィナはもちろん、皆は口を閉ざす。
古代人に何か切迫する出来事が起きて、彼らは必要最低限のことだけを行い、施設を放棄したのだろうか?
「さっきは雰囲気が雰囲気でしたんで尋ねにくかったんですが、俺は別の時間軸ってやつでも、ここにいたわけですよね、旦那?」
「そうらしいな」
「ワシらはおらんかったようだが」
「ケントはこのお宝を一人占めしようとしたんニャね」
ジロリと、強烈な犬の目猫の目で睨まれる。
「そんな目で見られても……それは私ではないし」
「にゃけど、未来からの手紙がなく、フィナが誘わなければ俺たちを同行させる気はなかったわけだしニャ」
「そうであろうな。ワシらは仲間外れにされておったわけか。ケント殿が一人占めにしようとした事実は変わらんな」
「ヴァンナスに知られたくない手前、それは仕方ないだろう。それで、親父は何か尋ねたかったんじゃないのか?」
「それなんですがね、未来ではエクアのお嬢ちゃんとフィナのお嬢ちゃんが頑張って旦那を救おうとしていたんですよね?」
「そうらしいな」
「俺はどこに行ったんでしょう?」
「トーワから人が消えた。と書いてあったから、どこかへ旅立ったのかもな……この、薄情者」
「いやいや、それは俺じゃありませんからっ。もしかしたら手紙に書いてないだけで、何かしらの協力をしてたかもしれませんよ」
「あはは、そうかもしれないな。なにせ、ギウのことも書かれていない。事が起こるまで未来が変わらないように、本当に必要なことしか書かなかったのだろう」
私たちはすっかり気持ちを入れ替えて雑談に耽る。
だが、隣にいるエクアは顔に影を差したままだ。
「エクア?」
「え、はい、なんでしょうか?」
「大丈夫か? かなりショック受けているように見えるが?」
「……そうですね。あのお婆さんは私であっても、今の私じゃない。でも、なんというか、気持ちの整理がつかないというか。そもそも、整理という考えすらおかしいというか」
「あまり深く考えない方がいいぞ、エクア。本来なら私もあそこで死んでいた、と考えると妙な気分になるし」
「そうですね。お婆さんには申し訳ないですけど、感謝だけを思って、この奇妙な悲しさは一時忘れることにします」
エクアは小さく息をついて胸元に手を置く。
彼女はこの中で最も幼く、歳は十二。
本来ならば、同じ年の子どもたちと遊び、学んでいるはずの年齢。
そうでありながらも、両親を亡くし、悪党どもに利用され、未来の自分の死という不可思議な出来事に直面しても、冷静であり、心を平静に保てる彼女の成長とその姿を敬い、私は優しく声を掛けた。
「ああ、それでいいと思う」
「っしゃ、きたっ!」
突如、フィナの声が響く。
雰囲気も何もあったもんじゃない……。
「何が来たんだ?」
「ナルフと同期できたのよ! それじゃ、さっそく!!」
フィナは深紅のナルフを浮かべ、ナルフのつるりとした鏡面に浮かぶ施設の回路図のようなものを覗き込んでいる。
「え~っと、どっかに翻訳システムがあるはず…………あったっ。たぶん、これが翻訳システム。そこをいじって、音声入力を可能にする場所は~……よし、ここにアクセスしてっと」
「音声入力? それができれば素晴らしいが、私たちの言葉を理解してもらえるのか?」
「たぶんそれは無理。見た感じ、翻訳システムが異常をきたしてるし、私たちの言語らしき情報もなさそう。見たこともない他の世界の言語はあるっぽいのに」
と言って、体を少しずらし、ナルフの鏡面が私たちの目に入りやすいようにする。
鏡面には少し歪んだ八角の星形を中心に、無数の見知らぬ言語が無秩序に流れている。
どうやら、言語に囲まれ歪んだ星形が翻訳システムのようだ。
「私たちの言語情報はないのに他の世界の言語はある? フィナ、それが意味するのは……?」
「はっきりとは言えないけど、私たちの言語情報は消された形跡があるっぽい。たぶん、スカルペル人がこの施設を扱えないように古代人が消したんじゃないかな?」
「それなら、情報そのものを消すなり施設ごと消すなりすればよかったものの」
「それはあとで使うつもりだった……もしくは」
「工作を行う余裕がなかった? 浄化もまともにされていなかったところを併せてみると、かなりの緊急事態が発生していたのか?」
この私の言葉にフィナはもちろん、皆は口を閉ざす。
古代人に何か切迫する出来事が起きて、彼らは必要最低限のことだけを行い、施設を放棄したのだろうか?
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