銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第十五章 未熟なる神の如き存在

ひとまず探索終了

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――今、触れられる遺跡の情報の全てを見た。


 手に入れた情報は広大な砂漠にある一粒の砂程度。
 それでも、私たちの正気を穢すには十分すぎるものだった。
 マスティフはこれらについて口外しないと改めて私に約束をした。

 マフィンに至ってはここで持ち帰った情報を何らかの形で商売に生かそうとしていたが、全て忘れることにしたようだ。
 ここにあったものは粒の情報でも、衝撃だった。


 これらの動揺をフィナに悟らせないようにする。
 私はフィナの近くに残す、エクアと親父へこう含みを与えた。

「フィナが無茶をしそうだったら、すぐに連絡をくれ」
「わ、わかりました」
「ですが旦那、俺たちでは何が無茶なのか判断が尽きかねますぜ」
「細かく質問を重ね、少しでも危険と感じたら連絡を。判断は難しいだろうが、頼む」
「かなり難しい話ですが何とかやりましょう」
「それと質問する際は――」


「興味深げに、気持ちよく聞いて、否定をしないように。ですね、ケント様」
 エクアはごく自然に情報を引き出す心構えを口にした。
 この幼い少女の言葉に私と親父は驚きを隠せない。

 老婆の真実に触れた際もかなりのショックを受けていたようだが、すぐに立ち直り割り切った。そして今は、他者をよく見て最適とされる行動をとれるようになっている。
 エクアの成長速度は私の予想を大きく上回っているようだ。
「ふふ、エクアは賢いな。よくわかっている。それでは、二人とも。頼んだ」

 私はフィナに遺跡を託しつつ、エクアと親父に監視を頼む。
 そして去り際に、出口に張ってあるフィナ特製の結界を通り抜けるためのペンダントをフィナから受け取った。



――遺跡、出口


 フィナたちを残し、私とマスティフとマフィンは遺跡の出口へ向かう。
 彼女の話では遺跡と洞窟を結ぶ階段の代わりに、新たな道ができているという。

 さて、それはどんな道なのか……?

 遺跡内の階段を昇り、その頂点に立つ。
 そこで私たちが見たものは、白く輝く光の道だった。

「これは?」
「むぅ、なんと美しい……」
「キラキラ光ってるニャね。魔力とは違う、不思議な力ニャ」

 頂点から洞窟までは錆び付いた鉄の階段があったはず。
 だが、錆びた階段は消え去り、代わりに星の瞬きを表すような白い道ができていた。
 フィナが遺跡のマップを操作していた際に、頂点から洞窟を白い線で結んでいたが、この道を生み出すためだったようだ。

 私たちはその道へ足をかける。
 薄い光の道であるはずなのに、足の裏には分厚い鋼鉄のような重量感を覚え、錆びた階段など比べ物にならぬくらいの安心感を与えてくれる。

「古代人はこの光の道を使って外への道を確保したのだな。では、私たちも彼らの足跡を追うとしよう」


 私たちは光の道を歩み、洞窟、その出口へ向かう。
 その道中で、マスティフに些細な疑問を尋ねた。

「そういえば、本が降り注いだ際にマスティフ殿はエクアを先生と呼ばずに名前で呼びましたね。もう、先生呼びはやめたのですか?」
「ああ~、それか。ワシとしては敬意を表したつもりだったのだが……先生と呼ぶと、エクアが本気で嫌がってな。逆に非礼と思い、やめることにした」
「それで……」

 一番後ろにいるマフィンが尻尾をモフンと動かして、はてなマークを作る。
「マスティフ、にゃんでエクアを先生と呼ぶんニャ?」
「彼女は治癒魔法を使える。だからだ」

「にゃ~、まさかエクアが癒しの使い手ニャったとは。魔導を得意とするキャビットでも少数しかいない貴重な魔導士ニャ。にゃけど……カインの方が先生という呼称が似合っているのに、にゃんで『カイン殿』ニャんだ?」

「ふむ、言われてみればそうだな。おそらく、医者は癒しの使い手ほど珍しくないからかもしれん」
「酷い話ニャ……」

 私は二人の会話を聞いて、心の中で軽い笑いを立てる。
(ふふ、たしかに酷い。気にはしないだろうが、それでもカインが聞いたらどんな反応を返すだろうか?)

 
 そうこうしているうちに、出口までたどり着いた。
 出口には、フィナ特製の結界。
 私たちは予めフィナに渡された魔導の力の宿るペンダントを首にかけている。
 これは結界の周波数と同期して、結界を素通りできるようになる道具だ。

 結界をくぐり、私はこの場でマスティフと別れ、トーワへ向かう途中でマフィンと別れた。
 こうして、私一人だけがトーワへ戻るのだった。
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