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第十六章 銀眼に宿るモノ
不思議な村
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「ケント、そろそろ起きたらどう? もう、光の太陽テラスが空の真上で笑ってるわよ」
聞き覚えのない女性の声。
私はその声に導かれ、瞼をそっと開けた。
「う~ん……ここは?」
少し硬めのベッドから体を起こし、辺りを見回す。
古びた家具が置かれた小さな部屋。
見た感じから変哲もない民家のようだ。
「一体、何が? ここはどこだ? どうしてこんなところにいる?」
「こんなところとはひどいわねっ。ケント、目が覚めたなら、畑の手伝いでもしに行ったら?」
再び女性の声が聞こえた。
声が聞こえた方向へ顔を向ける。
そこには黒髪と黒の瞳を持つ、見たこともない女性が立っていた。
顔立ちはそれほど堀が深くなく丸みを帯びている。
年は二十歳を超えていると思うが、美人というよりも可愛いという表現が合う女性だ。
「あの、あなたは?」
「私はセア。あなたのお世話係兼案内役ってとこかしら」
「案内役? 一体、何を言っている? ここはどこなんだ?」
「ふふふ。さぁ、どこでしょうね? 答えを知りたいなら、まずは村を見て回ってみたら?」
「村?」
この問いかけに女性は答えることなく、茶目っ気を感じさせる微笑みと共に部屋から出ていった。
私はベッドから足を投げ出し、床に置いてある靴に足を通す。
そして、服装に目をやるが……。
「ブラウスに旅用のマント? なぜ、こんな姿でベッドに? そもそも、ここにどうやってきた? 来る前には何をしていた?」
記憶の糸を手繰り、それらを思い出そうとする。
最後に残っている記憶はカインと共に遺跡からトーワへ戻り、その後、化粧品について話し合いが必要になったため、遺跡から一時的にフィナたちを呼び戻し、そしてエクアと一緒にマフィンのいるマッキンドーの森に向かっている最中の記憶。
「そのあとは……っ!」
左目に軽く痛みが走る。
「なんだ? はぁ、よくわからないが、現状ではここに繋がる記憶がない。ともかく、この村を見て回り、答えを探すか」
民家から外へ出て、村を見回す。
畑があり、家畜があり、人はまばら。とても深い森に囲まれた牧歌的な村。
森はマッキンドーの森ではなさそうだ。村の建物に何か変わった点は見られない。
しかし……。
「やぁ、ケント。調子はどうだい?」
「ケント、ゆっくりしていってね」
「何か困ったことがあったら言ってちょうだい、ケント」
「ケントが過ごしやすいようにしてあげたいからな」
「けんと~、こんにちわ~」
年寄りや若い男女や子どもが、私の名を呼ぶ。
だが、私は彼らを知らない。
私は言葉を曖昧に返して、そぞろに歩いていく。
しばらく歩き、村の門らしき場所を見つけた。
門と言っても木の枠でできた簡素なもの。
その枠の下に、倒れた看板があった。
そこに書かれていた文字は?
「テラ……テラだとっ? テラと言えばたしか、勇者たちの隠れ里。まさか、ここは勇者たちの村だというのか!?」
文献だけで知っている村の名前――テラ。
その村には勇者の末裔が住んでいたという。(※第七章――勇者は……)
「馬鹿なっ? なぜ、そのような村に私が? だいたい、勇者の末裔はとっくの昔に絶滅し、つっ、うぎっ!!」
左目に突然激痛が走る。
私は痛みに耐えかねて、その場で左目を押さえうずくまる。
私の様子を心配して、村人たちが私の名前を呼ぶ。
その声に混じり、よく知っている仲間たちの声が響いてくる。
声には焦りと悲痛が合わさる。
「ケント、しっかりして!」
「ケント様!! ケント様!!」
「ケントさん! 聞こえますか!?」
「旦那! しっかりしてくだせい!!」
はっきりと届く、仲間たちの声。
しかし、痛みがそれらをかき消す。
私は激痛に体を押さえつけられ、意識を失った。
――トーワ城・診療室
「ケント!!」
フィナの怒号が響く。
だが、それを受け取る者は診療台の上で浅く呼吸を繰り返すばかり。
台の上に乗るのは、ケント=ハドリー。
彼の左目には、深々と鋭く尖った木片が突き刺さっていた。
聞き覚えのない女性の声。
私はその声に導かれ、瞼をそっと開けた。
「う~ん……ここは?」
少し硬めのベッドから体を起こし、辺りを見回す。
古びた家具が置かれた小さな部屋。
見た感じから変哲もない民家のようだ。
「一体、何が? ここはどこだ? どうしてこんなところにいる?」
「こんなところとはひどいわねっ。ケント、目が覚めたなら、畑の手伝いでもしに行ったら?」
再び女性の声が聞こえた。
声が聞こえた方向へ顔を向ける。
そこには黒髪と黒の瞳を持つ、見たこともない女性が立っていた。
顔立ちはそれほど堀が深くなく丸みを帯びている。
年は二十歳を超えていると思うが、美人というよりも可愛いという表現が合う女性だ。
「あの、あなたは?」
「私はセア。あなたのお世話係兼案内役ってとこかしら」
「案内役? 一体、何を言っている? ここはどこなんだ?」
「ふふふ。さぁ、どこでしょうね? 答えを知りたいなら、まずは村を見て回ってみたら?」
「村?」
この問いかけに女性は答えることなく、茶目っ気を感じさせる微笑みと共に部屋から出ていった。
私はベッドから足を投げ出し、床に置いてある靴に足を通す。
そして、服装に目をやるが……。
「ブラウスに旅用のマント? なぜ、こんな姿でベッドに? そもそも、ここにどうやってきた? 来る前には何をしていた?」
記憶の糸を手繰り、それらを思い出そうとする。
最後に残っている記憶はカインと共に遺跡からトーワへ戻り、その後、化粧品について話し合いが必要になったため、遺跡から一時的にフィナたちを呼び戻し、そしてエクアと一緒にマフィンのいるマッキンドーの森に向かっている最中の記憶。
「そのあとは……っ!」
左目に軽く痛みが走る。
「なんだ? はぁ、よくわからないが、現状ではここに繋がる記憶がない。ともかく、この村を見て回り、答えを探すか」
民家から外へ出て、村を見回す。
畑があり、家畜があり、人はまばら。とても深い森に囲まれた牧歌的な村。
森はマッキンドーの森ではなさそうだ。村の建物に何か変わった点は見られない。
しかし……。
「やぁ、ケント。調子はどうだい?」
「ケント、ゆっくりしていってね」
「何か困ったことがあったら言ってちょうだい、ケント」
「ケントが過ごしやすいようにしてあげたいからな」
「けんと~、こんにちわ~」
年寄りや若い男女や子どもが、私の名を呼ぶ。
だが、私は彼らを知らない。
私は言葉を曖昧に返して、そぞろに歩いていく。
しばらく歩き、村の門らしき場所を見つけた。
門と言っても木の枠でできた簡素なもの。
その枠の下に、倒れた看板があった。
そこに書かれていた文字は?
「テラ……テラだとっ? テラと言えばたしか、勇者たちの隠れ里。まさか、ここは勇者たちの村だというのか!?」
文献だけで知っている村の名前――テラ。
その村には勇者の末裔が住んでいたという。(※第七章――勇者は……)
「馬鹿なっ? なぜ、そのような村に私が? だいたい、勇者の末裔はとっくの昔に絶滅し、つっ、うぎっ!!」
左目に突然激痛が走る。
私は痛みに耐えかねて、その場で左目を押さえうずくまる。
私の様子を心配して、村人たちが私の名前を呼ぶ。
その声に混じり、よく知っている仲間たちの声が響いてくる。
声には焦りと悲痛が合わさる。
「ケント、しっかりして!」
「ケント様!! ケント様!!」
「ケントさん! 聞こえますか!?」
「旦那! しっかりしてくだせい!!」
はっきりと届く、仲間たちの声。
しかし、痛みがそれらをかき消す。
私は激痛に体を押さえつけられ、意識を失った。
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「ケント!!」
フィナの怒号が響く。
だが、それを受け取る者は診療台の上で浅く呼吸を繰り返すばかり。
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