銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
235 / 359
第二十一章 世界旅行

ここはどこ?私は……

しおりを挟む
――???


「クッ、何が余程のことがない限り安全だ! 一体、何がどうなった?」
 転送装置から飛び散った稲妻を体に受けた瞬間、エクアたちの姿はかすみ消えて視界は暗転。
 次には激しい光が目に飛び込んできた。

 私は何度かまばたきを繰り返してゆっくりと瞳を光に慣らしていく。
 そうして最初に瞳に映ったのは…………トーワ城だった。

「あれは……トーワ? いや、だが、様子がおかしい」

 今いる場所は森の手前。
 ここは小高い坂の上になっているため、トーワの城や防壁などが見渡せるが、人は一人もおらず無人。
 城も様相がおかしく、私の知るモノよりも整備がされていない。
 第一の防壁は半端に修繕されて、途中から放置された様子。
 城の方も整備が途中のまま。

 私はトーワから視線を外し、背後に向けた。
 先に広がるのは、トーワと港町アルリナを結ぶマッキンドーの森の道。
 道は私が訪れた時のように荒れていて、短めの雑草などがはびこっている。
 この様子からトーワへと続く道は使われていないようだ。

「どういうことだ? とにかく、城の方へ向かってみるか」
 と、一歩足を踏み出そうとしてところで、森の中から白い煙が上がっているのが見えた。
 煙はさほど奥からではないようだ。
 視線を煙から近くの森へ向ける。
 するとそこには、私の知らぬ森の中に続く道らしきものがあった。
 それは煙が上がっている場所へと繋がっているようだ。


「道? 煙は火事のようには見えない。誰かが森に住んでいる? 少なくとも、私の知るトーワ近くの森には誰も住んでいなかったが……」

 私はトーワ城と煙にちらりちらりと瞳を動かして悩んだ末に、無人の城よりも誰かがいる可能性のある森の道を進んでみることに決めた。


――森の道

 道はよく整備されており、幅もそこそこ。荷馬車程度なら通れるほどであった。
 それを道なりに進んでいくと、開けた場所へ出た。
 そこには井戸があり、大きな納屋付きの木造の民家が見えた。
 民家の煙突からは煙が昇っている。


「誰かが住んでいるみたいだな。とりあえず、その方と話をしてみよう。トーワ城に何が起こったのかを……」

 民家へ足を向ける。
 すると、タイミングよく古びた木製の玄関が開き、老婆が出てきた。
 彼女の腰は少し曲がり、桶を手にしている。
 どうやら井戸から水を汲もうとしているようだ。
 その老婆に近づき、話しかける。


「失礼、尋ねたいことがあるんだが?」
「え、誰?」

 老婆はこちらに瞳を向けた。
 瞳の色は薄い青色に紫が溶け込むもの。髪は長く、白髪と薄いサファイア色の髪が交差している。
 老婆は私を瞳に宿した途端、持っていた桶を地面に落とした。
 そして、驚きの声を跳ね上げる。

「ケ、ケントっ? ど、どうして!? 嘘!?」
「ん、どこかでお会いしましたかな?」

 私は驚く老婆をよく観察する。
 手や顔に深い皺が刻まれた老婆は、くすんだ赤色の外套を纏い、上下には落ち着いたブラウンの服を着用しているが……肩から腰に掛けて、見覚えのあるたいをしていた。
 帯には色とりどりの試験管が納められてある。
 あれは……フィナがいつも着用していた試験管型属性爆弾だ!


 私は瞳を激しく動かし、老婆の顔をじっくり観察する。
 紫の溶け込む青い瞳に、白髪は混ざっているが元は蒼髪だったと思われる髪。
 彼女を目にしながら、ありえないと思いつつ尋ねる。

「まさかと思うが……フィナか?」
「え、ええ、そうだけど……どうしてあんたがこんなところにいるのっ? それもあの時の姿のままで!?」
「あの時の姿のまま?」

「あ、あんたはあの時、遺跡の探索中に浄化されてっ。どういうこと? 私は幻を見ているの? それとも、ぼけてしまったの?」
「遺跡の探索中に浄化? それはまさか、あのバイオハザードの研究室での出来事か?」
「そ、そうよ、あんたは研究室に閉じ込められ、私は助けることができなくて、あんたをっ!」
「待て! 落ち着いてくれっ。こっちは何となく事情が飲み込めてきた。とりあえず、私の話を聞いてくれないか?」
「え? ええ、わかった。聞かせてちょうだい」


 私は未来からの手紙によって研究所から生還できたこと・転送装置の不具合によって、ここへ飛ばされたことを話す。
 年老いたフィナはそれを受け取り、一端の落ち着きを見せた。

「そう、なんだ。そっか、私たちは成功したのね!」
「その言葉。やはり君が、私に手紙をくれたフィナなんだな?」

 フィナはこくりと頷く。
「ええ、そうよ。そう、私たちがあんたを……六十年の歳月は無駄じゃなかったっ。エクアを犠牲にしたことはむだじゃ……」

 彼女は途中で言葉を詰まらせ、大粒の涙を零し始めた。
 その彼女を私は無言で支える。
 それでも、呼吸を荒くして涙を止めることのできない彼女を落ち着かせるために、ひとまず家の中へとお邪魔し、休ませることにした。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...