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第二十一章 世界旅行
父の後継
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「理論派はとっくの昔に放射線を防ぐ方法を見出している。第一、光の魔法で放射線を防ぐなど、お前のような小娘で思いつくことを我らが気づかぬと思っていたのか?」
「このっ。いや、嘘ね! はったりよっ! あんたたちは鉛の防護服で防いでいるってケントから聞いたよ!」
「それはヴァンナスの目があるからな」
「ヴァンナスの目?」
「別れの間際にケントにも言ったが、我々理論派はヴァンナスに仕えているわけではない。利用しやすい存在だから与しているだけ。つまりは、全ての情報を渡していないということだ」
「陛下も他のお偉いさんも知らないってこと?」
「その通り。ネオ陛下もジクマも知らぬこと。これは理論派のごく限られた者たちが知ること。放射線以外にも、色々なことを含めてな」
「それって、ヴァンナスを裏切っているんじゃ?」
「だから言っただろう。ただのパートナーにすぎないと。このスカルペルで知識を管理しているのはヴァンナスではない。彼らは管理していると思い込んでいるだけ。真に管理しているのは我々だ」
父はそう言葉を落として、ゆっくりとコーヒーを味わっている。
世界はヴァンナスを中心に回っているように見えているが、その実は理論派と呼ばれる錬金術士たちによって管理されていると父は話す。
私はそれについて、ある疑問を口にする。
「陛下やジクマ閣下は気づいておられないのですか?」
「無論、気づいている。だが、彼らとて理論派を敵に回すことはできない。知識を失うことになるからな。もっとも、我々も大事なパトロンを失うわけにはいかぬから敵に回せないわけだが」
「なんと言いましょうか……私が思っている以上にヴァンナスと理論派は密接ではないのですね」
「これは裏の裏の裏の話だからな。知らなくて当然。実際にはこちらも一枚岩ではなく、ヴァンナスに寄り添う一派も存在しているが」
「それは、私から父の財を取り上げたアーガメイト一族の誰かですね」
「ふふ、頭が回るようになっているな。もっとも、主流派である私が重要情報を秘匿としていたため、そいつらは大したことを知らんだろうが。それでも私亡き後、ヴァンナスと何かを企んでいるだろう」
「それについてはアイリから聞きました。レイたちに見つからぬよう何かをしていると」
「そうだろうな。予測はつくが、答えは自分で探せ。私はお前を甘やかすつもりはない」
「はい」
「よろしい。では、甘やかすつもりはないを言った矢先に、少々甘いところを見せることになるが」
「それは?」
「アルバート」
父が何かの名を呼ぶ。
すると、執務机の下からぼよんと灰色の球体が飛び跳ねて机の上に乗った。
その球体は初めてこの部屋に訪れた時、私の後頭部にぶつかった柔らかな球体だ。
「それは、この施設の基本機構」
「そうだ。名はアルバートというらしい。少々、機構を弄らねばならぬから呼んだ。アルバート、展開」
父の声に応え、アルバートと呼ばれた球体は小さな光となって飛び散った。
光は星のように部屋中に散らばり、私たちを取り囲んでいる。
「これは?」
「この球体は施設の回路。それに手を加えようとしているところだ」
ここでフィナの声が割って入る。
「回路? それはおかしい。この施設の回路は水晶と光の線の組み合わせでできているんだもの」
「それはお前の知力に合わせ、そう表しているだけだ」
「うん?」
「本来のこいつの姿は私も知らん。だが、私なら水晶からさらに数段進んだ回路を見つめることができるということだ」
「ぐぐぐぐ、なんか、一々嫌味な親父だな~。ケント、あんたの親父、最悪だよ!」
「ふふ、さすがは父さん」
「その返しおかしいでしょ! かぁ~ああああ、もう!」
フィナのイライラは限界を突破したようで、全身をわなわなと震わせて怒り心頭に発する。
それをエクアと親父が宥めている。
「フィナさん、落ち着いてください。さっきから感情的になりすぎですよ」
「そうだぜ。元々、感情の起伏が激しくて扱いづらいけどよ、今回はずっと湯気を出しっぱなしじゃねぇか」
「だって、ケントの親父がムカつくんだもん。事あるごとに人を見下しやがって! ってか、親父。しれっと私を悪く言うな!」
「親父親父言われると、どっちの親父かわかりゃしねぇな」
「わかるでしょ!」
フィナは二人に対しても熱い蒸気を飛ばしている。
おそらく、自分の知を超える相手に出会い、また、反論もままならないという体験を生まれて初めて味わい、感情の制御を失っているのだろう。
そんなことを知ってか知らずか……いや、明らかに知っているが完全に無視して、父は何かの作業を続けている。
部屋に散らばった星の瞬きを父は無言で見つめ、そこから転送装置に視線を振った。
「よし、セキュリティを設けて座標を固定した」
「父さん?」
「この転送装置は非常に危険だ。数多の次元へ転移が可能であり、その先で何が起こるかわからない。さらには使用のたびに膨大なエネルギーを失ってしまう。何度も使えば、あっという間にこの施設のエネルギーを食い尽くしてしまうからな」
「そうなんですか?」
「うむ。だから、使用制限を設けた。共鳴転送に変更はないが、座標をトーワ・トロッカー・マッキンドー・アルリナ・アグリスに固定し、転送装置の出入口を設けた。全て、お前たちが訪れた場所だな」
「つまり、これからは転送装置を介して、一瞬でそれらの場所への行き来が可能というわけですね」
「ふふ、もう数日掛けて移動するという無駄がなくなるということだ。時間は有限。効率よく使用せねばな」
「父さん、ありがとうございます!」
「……ふふ、我ながら甘い」
父は微かな笑いを漏らし、スッと表情を淡白なものに戻してフィナを見つめた。
「転送装置のシステムには私がセキュリティを設けた。自在に操りたければ、施設の謎を解くことだ」
「一々面倒な真似を、あんたは私の先生か!」
「私を師と仰ぎたいならば最低限の才を見せることだな」
「誰が仰ぎたいなんて言った! だいたい、そこまでのことができるなら、あんたはこの施設のことをかなり把握してるってことでしょ。回りくどいことをしないで全部教えなさいよ!」
「たしかに、私はこの施設のことをお前以上に知っている。この部屋の窓の向こうにいる男の危険性も知っている。殺し方も抑え方も知っている」
「水球の男のことね。あんたが危険だと考えるほどの存在なら、そうなんでしょう。なら、それこそ私たちに伝えないと。どうして教えてくれないのっ?」
「すでに私は存在しないからだ」
「え?」
「私は亡霊のような存在。本来ならば、これさえも余計な世話だと思っている。未来は生きた人間が勝ち取るもの。私のような亡霊が口を出してはならぬ」
「その結果、世界を、ケントを失うことになっても?」
「そうなってでもだ……フィナ=ス=テイロー。テイローの名を継ぐ者に問う」
「なに?」
「お前は、亡霊に未来を預けたいか? 今ある存在こそが未来を創り出す権利があると思わぬのか?」
「それは……」
「先に続く道は希望か絶望か。それは今あるお前たちが紡ぐこと。決して亡霊などの力に頼ってはならぬ」
「…………っ」
フィナは無言で下唇を噛んだ――かつて、彼女はこう言った。
『それにさ、いつかは必ず、ここへ誰かが訪れる。そして、力を手に入れようとする。解放しようとする。あんたはその誰かに未来を委ねたい? 私はごめんよっ!』
フィナはどこまでも知識を追うと覚悟を決めた。
それは己自身の力で未来を切り開くという誓い……。
父は無言に身を包むフィナへ、厳しい言葉を贈る。
「お前は質問が過ぎる。謎に対して即座に質問をぶつけるのではなく、まずは思考せよ。誰かに聞いた答えなど無価値。己で考え至ってこそ、価値ある答えとなる。知を探求する者にとって、思考なき質問は恥と知れっ」
この言葉にフィナは小さく、本当に小さく首を縦に振って応えた。
その動作は注意深く見ていないとわからないほどのもの。
だが、そうであってもフィナは父の言葉をたしかに受け取ったのだ。
そんな父とフィナのやり取りを見ていた私の心の中では複雑な感情を巻き起こる。
(父さんは、そう簡単に誰かにアドバイスをするような方ではない。特に知識に関しては。それをするということは、フィナ……君は父に期待されるだけの才を持っているんだな。それが羨ましくて、悔しいよ……)
「このっ。いや、嘘ね! はったりよっ! あんたたちは鉛の防護服で防いでいるってケントから聞いたよ!」
「それはヴァンナスの目があるからな」
「ヴァンナスの目?」
「別れの間際にケントにも言ったが、我々理論派はヴァンナスに仕えているわけではない。利用しやすい存在だから与しているだけ。つまりは、全ての情報を渡していないということだ」
「陛下も他のお偉いさんも知らないってこと?」
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「それって、ヴァンナスを裏切っているんじゃ?」
「だから言っただろう。ただのパートナーにすぎないと。このスカルペルで知識を管理しているのはヴァンナスではない。彼らは管理していると思い込んでいるだけ。真に管理しているのは我々だ」
父はそう言葉を落として、ゆっくりとコーヒーを味わっている。
世界はヴァンナスを中心に回っているように見えているが、その実は理論派と呼ばれる錬金術士たちによって管理されていると父は話す。
私はそれについて、ある疑問を口にする。
「陛下やジクマ閣下は気づいておられないのですか?」
「無論、気づいている。だが、彼らとて理論派を敵に回すことはできない。知識を失うことになるからな。もっとも、我々も大事なパトロンを失うわけにはいかぬから敵に回せないわけだが」
「なんと言いましょうか……私が思っている以上にヴァンナスと理論派は密接ではないのですね」
「これは裏の裏の裏の話だからな。知らなくて当然。実際にはこちらも一枚岩ではなく、ヴァンナスに寄り添う一派も存在しているが」
「それは、私から父の財を取り上げたアーガメイト一族の誰かですね」
「ふふ、頭が回るようになっているな。もっとも、主流派である私が重要情報を秘匿としていたため、そいつらは大したことを知らんだろうが。それでも私亡き後、ヴァンナスと何かを企んでいるだろう」
「それについてはアイリから聞きました。レイたちに見つからぬよう何かをしていると」
「そうだろうな。予測はつくが、答えは自分で探せ。私はお前を甘やかすつもりはない」
「はい」
「よろしい。では、甘やかすつもりはないを言った矢先に、少々甘いところを見せることになるが」
「それは?」
「アルバート」
父が何かの名を呼ぶ。
すると、執務机の下からぼよんと灰色の球体が飛び跳ねて机の上に乗った。
その球体は初めてこの部屋に訪れた時、私の後頭部にぶつかった柔らかな球体だ。
「それは、この施設の基本機構」
「そうだ。名はアルバートというらしい。少々、機構を弄らねばならぬから呼んだ。アルバート、展開」
父の声に応え、アルバートと呼ばれた球体は小さな光となって飛び散った。
光は星のように部屋中に散らばり、私たちを取り囲んでいる。
「これは?」
「この球体は施設の回路。それに手を加えようとしているところだ」
ここでフィナの声が割って入る。
「回路? それはおかしい。この施設の回路は水晶と光の線の組み合わせでできているんだもの」
「それはお前の知力に合わせ、そう表しているだけだ」
「うん?」
「本来のこいつの姿は私も知らん。だが、私なら水晶からさらに数段進んだ回路を見つめることができるということだ」
「ぐぐぐぐ、なんか、一々嫌味な親父だな~。ケント、あんたの親父、最悪だよ!」
「ふふ、さすがは父さん」
「その返しおかしいでしょ! かぁ~ああああ、もう!」
フィナのイライラは限界を突破したようで、全身をわなわなと震わせて怒り心頭に発する。
それをエクアと親父が宥めている。
「フィナさん、落ち着いてください。さっきから感情的になりすぎですよ」
「そうだぜ。元々、感情の起伏が激しくて扱いづらいけどよ、今回はずっと湯気を出しっぱなしじゃねぇか」
「だって、ケントの親父がムカつくんだもん。事あるごとに人を見下しやがって! ってか、親父。しれっと私を悪く言うな!」
「親父親父言われると、どっちの親父かわかりゃしねぇな」
「わかるでしょ!」
フィナは二人に対しても熱い蒸気を飛ばしている。
おそらく、自分の知を超える相手に出会い、また、反論もままならないという体験を生まれて初めて味わい、感情の制御を失っているのだろう。
そんなことを知ってか知らずか……いや、明らかに知っているが完全に無視して、父は何かの作業を続けている。
部屋に散らばった星の瞬きを父は無言で見つめ、そこから転送装置に視線を振った。
「よし、セキュリティを設けて座標を固定した」
「父さん?」
「この転送装置は非常に危険だ。数多の次元へ転移が可能であり、その先で何が起こるかわからない。さらには使用のたびに膨大なエネルギーを失ってしまう。何度も使えば、あっという間にこの施設のエネルギーを食い尽くしてしまうからな」
「そうなんですか?」
「うむ。だから、使用制限を設けた。共鳴転送に変更はないが、座標をトーワ・トロッカー・マッキンドー・アルリナ・アグリスに固定し、転送装置の出入口を設けた。全て、お前たちが訪れた場所だな」
「つまり、これからは転送装置を介して、一瞬でそれらの場所への行き来が可能というわけですね」
「ふふ、もう数日掛けて移動するという無駄がなくなるということだ。時間は有限。効率よく使用せねばな」
「父さん、ありがとうございます!」
「……ふふ、我ながら甘い」
父は微かな笑いを漏らし、スッと表情を淡白なものに戻してフィナを見つめた。
「転送装置のシステムには私がセキュリティを設けた。自在に操りたければ、施設の謎を解くことだ」
「一々面倒な真似を、あんたは私の先生か!」
「私を師と仰ぎたいならば最低限の才を見せることだな」
「誰が仰ぎたいなんて言った! だいたい、そこまでのことができるなら、あんたはこの施設のことをかなり把握してるってことでしょ。回りくどいことをしないで全部教えなさいよ!」
「たしかに、私はこの施設のことをお前以上に知っている。この部屋の窓の向こうにいる男の危険性も知っている。殺し方も抑え方も知っている」
「水球の男のことね。あんたが危険だと考えるほどの存在なら、そうなんでしょう。なら、それこそ私たちに伝えないと。どうして教えてくれないのっ?」
「すでに私は存在しないからだ」
「え?」
「私は亡霊のような存在。本来ならば、これさえも余計な世話だと思っている。未来は生きた人間が勝ち取るもの。私のような亡霊が口を出してはならぬ」
「その結果、世界を、ケントを失うことになっても?」
「そうなってでもだ……フィナ=ス=テイロー。テイローの名を継ぐ者に問う」
「なに?」
「お前は、亡霊に未来を預けたいか? 今ある存在こそが未来を創り出す権利があると思わぬのか?」
「それは……」
「先に続く道は希望か絶望か。それは今あるお前たちが紡ぐこと。決して亡霊などの力に頼ってはならぬ」
「…………っ」
フィナは無言で下唇を噛んだ――かつて、彼女はこう言った。
『それにさ、いつかは必ず、ここへ誰かが訪れる。そして、力を手に入れようとする。解放しようとする。あんたはその誰かに未来を委ねたい? 私はごめんよっ!』
フィナはどこまでも知識を追うと覚悟を決めた。
それは己自身の力で未来を切り開くという誓い……。
父は無言に身を包むフィナへ、厳しい言葉を贈る。
「お前は質問が過ぎる。謎に対して即座に質問をぶつけるのではなく、まずは思考せよ。誰かに聞いた答えなど無価値。己で考え至ってこそ、価値ある答えとなる。知を探求する者にとって、思考なき質問は恥と知れっ」
この言葉にフィナは小さく、本当に小さく首を縦に振って応えた。
その動作は注意深く見ていないとわからないほどのもの。
だが、そうであってもフィナは父の言葉をたしかに受け取ったのだ。
そんな父とフィナのやり取りを見ていた私の心の中では複雑な感情を巻き起こる。
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