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第二十二章 銀眼は彼に応え扉を開く
訪問客
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一日後――
私は父のアドバイス通りイラに相談するため、マッキンドーの森に訪れていた。
その際、キャビットの長であるマフィンに挨拶をしておきたかったが、あいにく息子のスコティと一緒に戦争前からとんと見かけなくなった盗賊たちの動向を調査するため森を離れていた。
そのため、彼らの代わりにカオマニーが代表として応対してくれた。
彼女は相も変わらず白い宝石の通り名に負けぬ美しい白の毛並みを見せて、新緑の魔導士服と緑の三角帽子を着用し、先端が丸みを帯びた魔導杖を手にして、腰には商人を思わせる算盤をぶら下げていた。
カオマニーは私の姿を愛らしい猫の瞳で捉えると三角帽子を脱ぐ。
簡単な挨拶を交えつつ、私たちはマフィンの家の前――魔導の力によって生み出された命宿るキノコ型の家、『べェックマッシュルーム』の前で会話を重ねる。
ベェの部分は舌を弾くように発音するが、かなり難しい。
「ようこそニャ、ケント様。お会いできてとっても嬉しいニャっ」
「ふふ、久しぶりだな。壮健そうで何よりだ」
「ケント様こそ。それで今日はどのようなご用向きなのかニャ?」
「今日はイラに用事があってな。それで訪れた」
「はぁ~、何ニャ~」
カオマニーは両猫耳をへたりと下げて、とても残念そうな声を漏らす。
「どうしたんだ?」
「ケント様がイラにご執心と思うと、寂しいニャ」
「いやいや、別にご執心というわけではない。相談したいことがあるだけだ。だいたい、私がイラに興味を持ってなぜ君が……ん?」
彼女は妙にキラキラと光る青と金の瞳をこちらへ向けてくる。
その光に宿るのは……私の勘違いでなければ、好意……。
(まさかな。彼女とは良く知った仲でもないのにそのような感情を持たれる所以は……)
そう思いつつも、私はゆっくりと視線を彼女からずらす。
しかし、視線の先にはもう一つの目があった。
それは『ベェックマッシュルーム』の屋根に張り付いた巨大な一つの猫目。
おっきな猫の瞳は私をじろりと睨み、なぜか目の周辺を紅潮させている。
「そういえば、以前訪れた時もこの家に好意を持たれていたような……」
「そんニャっ。まったく、ベェック! 抜け駆けは禁止ニャよ!」
カオマニーはべェックに視線をぶつけ、べェックもカオマニーに視線をぶつける。
彼らの視線はぶつかり合い、火花を散らしているように見えるが……私は二人の間に割って入る。
「待ってくれ、君たち。どうやら、私は二人に良く思われているようだが、そのような機会はなかっただろう。なぜだ?」
「べェックの方はよくわからにゃいけど、私はケント様の秘密を宿した感じが気に入っているニャよ。それに初めて会った時も、好感度が高いと伝えたニャ」
「たしかにそれには覚えがあるが、あれはそういう類のものではないと思っていた」
「それで知って、私をどう思うニャ?」
「どう思うって……あっ」
――ジロリ
上から正面からと、じりじりと焼けつくような視線たちは私の返事を待っているようだ。
「そうだな……今のところ、私はパートナーについて考えたこともない。気持ちは嬉しいが、受け取るわけには」
「にゃにゃ、今のところは……つまり、いつかはそれを考える日が来るニャねっ」
――ジロリ
太陽の如き情熱的な二つの視線。このままでは身も心も焦げついてしまう。
「うぐ、言葉選びを誤ったか。とにかく、今日は大事な用事がある。二人とも、また機会があればっ」
私はシュタッと手を上げて、その場から逃げ去った――。
――マッキンドーの森・川の前
川の水量は以前訪れた時と同様に、轟音と轟音がぶつかり合うような響きを森に轟かせていた。
その川の前で、私は息を切らせつつ額の汗を袖口で拭う。
「ふぅ~、参った。まさか、知らないところで好意を持たれていたとは。気持ちは嬉しいが、そのようなことを考えている暇もないし、二人には何ら特別な思いを抱いていないからな」
「ふふふ~、それならそうと~、ちゃ~んと、言ってあげた方がいいわよ~」
大蛇のようなうねりを上げる川から、水衣を纏ったイラがふわりと浮かび上がり現れた。
森に浮かぶ蛍のような光子が水の滴りに反射し、衣は水のドレスを彷彿とさせる姿でイラを包む。
「イラか。君はあの二人が私に対して……」
「ええ~、知ってるわよ~。カオマニーちゃんは影のある男性が大好物だから~」
「それはまた面妖な趣味だな。しかし、ベェックマッシュルームの方はなぜ?」
「それは~、あなたのことを~、身近な存在だと思っているからよ~」
「え?」
イラは妖艶な笑みを浮かべ、瞳を柔らかに揺らす。
そして……。
「アステちゃんに~、私に相談するように言われて~、ここに来たんでしょう~」
「なぜそれを?」
「ふふふふ~、さぁ、なぜでしょう? なぜだかわからないけどぉ、私は知っている~。クスッ」
心に熱を与える笑みは、優しくくすぐるものへと変化する。
彼女は『なぜ』に答えるつもりはないようだ。
「あなたが何者かいまいちわかりかねるが、父のアドバイスに従うと、あなたは私の存在を確固たるものにできる人物を知っていると」
「そうね~、あの人以上にぃ、あなたの存在を保証してくれる人はいないでしょうねぇ」
「その物言い。あなたは私の正体を知っているので?」
「さぁ? 知っていても~知らなくても~、あなたにとっては些細なことよ~。あなたにとって~、大事なのはぁ――仲間に伝える勇気を抱くことでしょっ」
イラはおっとりした口調ではなく、はっきりとした言葉で私の心を打った。
「……ああ、その通りだ。紹介してくれるか、イラ。臆病な私に、一歩進む勇気をくれる方を」
「ええ、もちろんよ~。その人は~アルリナに住んでいるの~」
「アルリナに?」
「そう、アルリナにねぇ。その人に会いたいなら~、そうねぇ……波止場で釣りでもしてみるといいわよ~」
「釣り? なぜ、釣りなんだ? 釣りをしているだけじゃ、私がどこの誰で何を相談しに来た相手かもわからないだろう?」
「さぁ、どうでしょう~? ケント様、アステちゃんを信じて~、私の言葉を信じてみて~」
柔らかな口調。優しげな瞳。しなやかに揺らめく身体。
嘘か実か掴みどころのないイラの雰囲気。
だが、私は父を信じている。だからっ――
「わかった。疑いという心を捨て去り、委ねてみよう。イラ、ありがとう」
「どういたしましてぇ~」
イラに別れの挨拶を交わし、私はアルリナへ向かう。
一方、その頃トーワでは――
領主代行のフィナが書類に埋もれ悲鳴を上げていた。
「うきゃぁぁぁぁああぁ、めんどくさいぃぃぃぃ!!」
「落ち着いてください、フィナさん」
「だって、だって、エクアっ。これ、無駄が多すぎるぅぅぅぅ!」
フィナは机の上に群がる書類を突き飛ばそうとして思い留まる。
それを行えば、余計な仕事が増えるからだ。
代わりに拳をビルのように連なる書類の頭に押し込める。
「目を通すのは別にいい。処理するのだって大したことじゃない。だけど、いちいちいちいち、なんで書類にサインをしなきゃなんないのっ!」
「サインがないといろんな決まり事を発行できませんから」
「ああ、もうっ。そういうの無しで簡略化できる方法を考えないと。ケントが戻ってきたら、それについて話さなきゃ!」
彼女は文句をぶちまけつつも、書類に目を通し、次々に処理していく。
これらは自由に旅をする実践派の錬金術士にとって非常に不慣れな作業であるはずなのだが、彼女の事務処理速度は常人では追いつかぬもの。
エクアはその姿に感嘆の声を漏らした。
「凄いですね、フィナさん。とても事務作業が初めてとは思えません」
「そう? 最初は手間取ったけど、書類は要点のみに目を通しておけばいいから結構簡単よ。サインのせいで手首が痛いけど……ケントはいつもこんなことやってんの?」
「そうですね、化粧品の商品化に当たった際は今よりも仕事は多かったです。ここ最近はカリスさんたちがトーワの住人になったので、井戸の増設やトイレの増設に開墾の場所指定と許可や戸籍の整理などで慢性的にお忙しいですが」
「はぁ~、領主なんてやるもんじゃないよねぇ。ってか、優秀な助手なり、執事なりが必要じゃない?」
「助手ならフィナさんがなってあげれば?」
「冗談っ。そんなことしたら研究の時間が無くなっちゃうじゃん。ちなみに、ケントは今の私よりも仕事が早いの?」
「ええ、まぁ。お仕事の合間にトーワの領内を見回ったりしてますし」
「そ、そうなの。意外にやり手なんだ。考えてみれば、私の急な呼び出しにも平気な様子でツラを出してたし」
「ケント様は慣れだと言ってましたよ」
「慣れねぇ。こんなもの慣れるほど関わりたくないなぁ。とりあえず、机に乗ってる分を片したら、休憩しよっか」
「はい、そうですね」
――コンコン
執務室内にノックの音が響く。
この音に反応して、フィナの眉間に皺が生まれる。
「げっ、仕事追加の予感……」
「なんでしょうね? どうぞ~、お入りくださ~い」
「すまねぇな、嬢ちゃんら。忙しいところ。実は客が、おっと?」
親父が扉を開けて、顔を突き出す。
すると、その彼を押しのけるように、一人の男が執務室へと飛び込んできた。
「いや~、久しぶりだねっ。エクアさん! アグリス以来だ!」
「えっ? あ、あなたはっ! サレート=ケイキ先生!?」
私は父のアドバイス通りイラに相談するため、マッキンドーの森に訪れていた。
その際、キャビットの長であるマフィンに挨拶をしておきたかったが、あいにく息子のスコティと一緒に戦争前からとんと見かけなくなった盗賊たちの動向を調査するため森を離れていた。
そのため、彼らの代わりにカオマニーが代表として応対してくれた。
彼女は相も変わらず白い宝石の通り名に負けぬ美しい白の毛並みを見せて、新緑の魔導士服と緑の三角帽子を着用し、先端が丸みを帯びた魔導杖を手にして、腰には商人を思わせる算盤をぶら下げていた。
カオマニーは私の姿を愛らしい猫の瞳で捉えると三角帽子を脱ぐ。
簡単な挨拶を交えつつ、私たちはマフィンの家の前――魔導の力によって生み出された命宿るキノコ型の家、『べェックマッシュルーム』の前で会話を重ねる。
ベェの部分は舌を弾くように発音するが、かなり難しい。
「ようこそニャ、ケント様。お会いできてとっても嬉しいニャっ」
「ふふ、久しぶりだな。壮健そうで何よりだ」
「ケント様こそ。それで今日はどのようなご用向きなのかニャ?」
「今日はイラに用事があってな。それで訪れた」
「はぁ~、何ニャ~」
カオマニーは両猫耳をへたりと下げて、とても残念そうな声を漏らす。
「どうしたんだ?」
「ケント様がイラにご執心と思うと、寂しいニャ」
「いやいや、別にご執心というわけではない。相談したいことがあるだけだ。だいたい、私がイラに興味を持ってなぜ君が……ん?」
彼女は妙にキラキラと光る青と金の瞳をこちらへ向けてくる。
その光に宿るのは……私の勘違いでなければ、好意……。
(まさかな。彼女とは良く知った仲でもないのにそのような感情を持たれる所以は……)
そう思いつつも、私はゆっくりと視線を彼女からずらす。
しかし、視線の先にはもう一つの目があった。
それは『ベェックマッシュルーム』の屋根に張り付いた巨大な一つの猫目。
おっきな猫の瞳は私をじろりと睨み、なぜか目の周辺を紅潮させている。
「そういえば、以前訪れた時もこの家に好意を持たれていたような……」
「そんニャっ。まったく、ベェック! 抜け駆けは禁止ニャよ!」
カオマニーはべェックに視線をぶつけ、べェックもカオマニーに視線をぶつける。
彼らの視線はぶつかり合い、火花を散らしているように見えるが……私は二人の間に割って入る。
「待ってくれ、君たち。どうやら、私は二人に良く思われているようだが、そのような機会はなかっただろう。なぜだ?」
「べェックの方はよくわからにゃいけど、私はケント様の秘密を宿した感じが気に入っているニャよ。それに初めて会った時も、好感度が高いと伝えたニャ」
「たしかにそれには覚えがあるが、あれはそういう類のものではないと思っていた」
「それで知って、私をどう思うニャ?」
「どう思うって……あっ」
――ジロリ
上から正面からと、じりじりと焼けつくような視線たちは私の返事を待っているようだ。
「そうだな……今のところ、私はパートナーについて考えたこともない。気持ちは嬉しいが、受け取るわけには」
「にゃにゃ、今のところは……つまり、いつかはそれを考える日が来るニャねっ」
――ジロリ
太陽の如き情熱的な二つの視線。このままでは身も心も焦げついてしまう。
「うぐ、言葉選びを誤ったか。とにかく、今日は大事な用事がある。二人とも、また機会があればっ」
私はシュタッと手を上げて、その場から逃げ去った――。
――マッキンドーの森・川の前
川の水量は以前訪れた時と同様に、轟音と轟音がぶつかり合うような響きを森に轟かせていた。
その川の前で、私は息を切らせつつ額の汗を袖口で拭う。
「ふぅ~、参った。まさか、知らないところで好意を持たれていたとは。気持ちは嬉しいが、そのようなことを考えている暇もないし、二人には何ら特別な思いを抱いていないからな」
「ふふふ~、それならそうと~、ちゃ~んと、言ってあげた方がいいわよ~」
大蛇のようなうねりを上げる川から、水衣を纏ったイラがふわりと浮かび上がり現れた。
森に浮かぶ蛍のような光子が水の滴りに反射し、衣は水のドレスを彷彿とさせる姿でイラを包む。
「イラか。君はあの二人が私に対して……」
「ええ~、知ってるわよ~。カオマニーちゃんは影のある男性が大好物だから~」
「それはまた面妖な趣味だな。しかし、ベェックマッシュルームの方はなぜ?」
「それは~、あなたのことを~、身近な存在だと思っているからよ~」
「え?」
イラは妖艶な笑みを浮かべ、瞳を柔らかに揺らす。
そして……。
「アステちゃんに~、私に相談するように言われて~、ここに来たんでしょう~」
「なぜそれを?」
「ふふふふ~、さぁ、なぜでしょう? なぜだかわからないけどぉ、私は知っている~。クスッ」
心に熱を与える笑みは、優しくくすぐるものへと変化する。
彼女は『なぜ』に答えるつもりはないようだ。
「あなたが何者かいまいちわかりかねるが、父のアドバイスに従うと、あなたは私の存在を確固たるものにできる人物を知っていると」
「そうね~、あの人以上にぃ、あなたの存在を保証してくれる人はいないでしょうねぇ」
「その物言い。あなたは私の正体を知っているので?」
「さぁ? 知っていても~知らなくても~、あなたにとっては些細なことよ~。あなたにとって~、大事なのはぁ――仲間に伝える勇気を抱くことでしょっ」
イラはおっとりした口調ではなく、はっきりとした言葉で私の心を打った。
「……ああ、その通りだ。紹介してくれるか、イラ。臆病な私に、一歩進む勇気をくれる方を」
「ええ、もちろんよ~。その人は~アルリナに住んでいるの~」
「アルリナに?」
「そう、アルリナにねぇ。その人に会いたいなら~、そうねぇ……波止場で釣りでもしてみるといいわよ~」
「釣り? なぜ、釣りなんだ? 釣りをしているだけじゃ、私がどこの誰で何を相談しに来た相手かもわからないだろう?」
「さぁ、どうでしょう~? ケント様、アステちゃんを信じて~、私の言葉を信じてみて~」
柔らかな口調。優しげな瞳。しなやかに揺らめく身体。
嘘か実か掴みどころのないイラの雰囲気。
だが、私は父を信じている。だからっ――
「わかった。疑いという心を捨て去り、委ねてみよう。イラ、ありがとう」
「どういたしましてぇ~」
イラに別れの挨拶を交わし、私はアルリナへ向かう。
一方、その頃トーワでは――
領主代行のフィナが書類に埋もれ悲鳴を上げていた。
「うきゃぁぁぁぁああぁ、めんどくさいぃぃぃぃ!!」
「落ち着いてください、フィナさん」
「だって、だって、エクアっ。これ、無駄が多すぎるぅぅぅぅ!」
フィナは机の上に群がる書類を突き飛ばそうとして思い留まる。
それを行えば、余計な仕事が増えるからだ。
代わりに拳をビルのように連なる書類の頭に押し込める。
「目を通すのは別にいい。処理するのだって大したことじゃない。だけど、いちいちいちいち、なんで書類にサインをしなきゃなんないのっ!」
「サインがないといろんな決まり事を発行できませんから」
「ああ、もうっ。そういうの無しで簡略化できる方法を考えないと。ケントが戻ってきたら、それについて話さなきゃ!」
彼女は文句をぶちまけつつも、書類に目を通し、次々に処理していく。
これらは自由に旅をする実践派の錬金術士にとって非常に不慣れな作業であるはずなのだが、彼女の事務処理速度は常人では追いつかぬもの。
エクアはその姿に感嘆の声を漏らした。
「凄いですね、フィナさん。とても事務作業が初めてとは思えません」
「そう? 最初は手間取ったけど、書類は要点のみに目を通しておけばいいから結構簡単よ。サインのせいで手首が痛いけど……ケントはいつもこんなことやってんの?」
「そうですね、化粧品の商品化に当たった際は今よりも仕事は多かったです。ここ最近はカリスさんたちがトーワの住人になったので、井戸の増設やトイレの増設に開墾の場所指定と許可や戸籍の整理などで慢性的にお忙しいですが」
「はぁ~、領主なんてやるもんじゃないよねぇ。ってか、優秀な助手なり、執事なりが必要じゃない?」
「助手ならフィナさんがなってあげれば?」
「冗談っ。そんなことしたら研究の時間が無くなっちゃうじゃん。ちなみに、ケントは今の私よりも仕事が早いの?」
「ええ、まぁ。お仕事の合間にトーワの領内を見回ったりしてますし」
「そ、そうなの。意外にやり手なんだ。考えてみれば、私の急な呼び出しにも平気な様子でツラを出してたし」
「ケント様は慣れだと言ってましたよ」
「慣れねぇ。こんなもの慣れるほど関わりたくないなぁ。とりあえず、机に乗ってる分を片したら、休憩しよっか」
「はい、そうですね」
――コンコン
執務室内にノックの音が響く。
この音に反応して、フィナの眉間に皺が生まれる。
「げっ、仕事追加の予感……」
「なんでしょうね? どうぞ~、お入りくださ~い」
「すまねぇな、嬢ちゃんら。忙しいところ。実は客が、おっと?」
親父が扉を開けて、顔を突き出す。
すると、その彼を押しのけるように、一人の男が執務室へと飛び込んできた。
「いや~、久しぶりだねっ。エクアさん! アグリス以来だ!」
「えっ? あ、あなたはっ! サレート=ケイキ先生!?」
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