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第二十二章 銀眼は彼に応え扉を開く
騎士を嘲笑う
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――城内
ギウはフィナへサレートに対する懸念を伝えに行こうとしていた。
その途中、エクアと出くわす。
「あ、ギウさん」
エクアは大きな茶色の肩掛けカバンを掛けていた。
どこかへ行くのかとギウは尋ねる。
「ぎうう?」
「はい、サレート=ケイキ先生の下で絵画の勉強を」
「ぎう……ぎうぎうぎう?」
ギウは両手で四角眼鏡の形を表す。
「はい、そうです。ギウさんはもうお会いになっているんですか?」
「ギウ」
「あ、お城のすぐ外で待っていたからですね。それでは、あまり先生を待たせるわけにはいけませんので、失礼します。今は人手もありますから大丈夫でしょうけど、何かありましたらすぐに連絡をくださいね。連絡先はアルリナの宿『アドソン』です」
「……ギウ」
エクアはぺこりと頭を下げ、ギウは小さく返事をする。
彼女が玄関口へ向かったのを見届け、彼は急ぎ、三階の執務室へ向かった。
――執務室
執務室ではフィナと親父がサレートに関する会話を行っていた。
「親父、あいつが胡散臭いって? それは見た目や態度だけ?」
「いや、中身もなんか嫌な感じがするな」
「そっか……エクアには悪いけど、念のため、二人のあとをつけてくれる。本当にアルリナの宿を借りてるのかどうか」
「わかったぜ、フィナの嬢ちゃん」
ここにギウが訪れる。
「ギウギウっ」
「え、ギウ? どうしたの?」
フィナはギウの妙な焦り声に驚きながらも声を返した。
彼は執務室に入るや否や、サレートのことをこう訴える。
「ギウウ、ギウ!」
「え、危険だって? ギウはあいつを危険だと感じたの?」
「ギウッ」
「そうなんだ……根拠となるものはあるの?」
「ぎう~……」
「そう、直感ってわけね。ふぅ、どうしようか?」
エクアはサレートの下で芸術を学べることを喜んでいる。
しかし、ギウと親父は彼を危険だと訴える。だがそれは直感で何ら根拠のないもの……。
そこでフィナが出した決断は……。
「エクアの楽しみを奪うのも忍びない。でも、あんたたちの直感も無視できない。親父はさっき言った通り、あとをつけて宿の確認を。ギウは」
彼女はポシェットから追跡用魔法石の指輪を取り出す。
「これをエクアにはわからないようにどこかに忍ばせることできる?」
「ギウッ!」
ギウはドンと銀の横っ腹を叩く。
「ふふ、それじゃ、お願いね」
「ギウウ」
「え?」
ギウはフィナに近づき、手を伸ばす。
「やだ、ギウ。くすぐったい、はははは、やめてって、身体まさぐらないでよっ」
「ギウ」
ひとしきりフィナの体をまさぐり、彼は何かを手に持ち離れた。
それを目にしたフィナと親父は大きく息を漏らす。
「ええ~、そこまで警戒する?」
「まぁ、怪しい奴だから。念には念を入れていいかもしれねぇな」
「ギウギウ」
ギウはフィナから追跡用魔法石の指輪を受け取り、エクアの元へ向かう。
その際、カインの診療所に立ち寄っていた。
――トーワ城・第一の防壁
まだ、サレートとエクアはトーワ領内にいた。
そこにギウが一冊の本を振りながらやってくる。
「ギウギウ~」
「あれ、ギウさん? どうしたんですか?」
「ギウギウ」
「これって、カイン先生の医学書?」
「ギウ」
「あ、トーワから離れている間もお勉強できるようにですか。ありがとうございます。カイン先生にもそう伝えてください」
エクアは医学書を納めるためにカバンを開く。
その時、ギウは目にも止まらぬ速さで追跡用魔法石の指輪をカバンの中に忍ばせ、さらにもう一つ、フィナをくすぐりゲットしたモノを忍ばせた。
「それじゃ、ギウさん」
「ぎ~う~」
ギウは手を振ってエクアを送り出す。エクアもそれに応える。
前に立つサレートはエクアが受け取った本について尋ねてきた。
「エクアさん、今の本は?」
「医学書です。私は癒しの術が得意でして、それに父が医者でしたので医学の方も勉強しているんですよ」
「癒しの術に医学。いや、才気溢れる人物はあらゆることに精通するのものだ。僕は芸術に錬金術。エクアさんは芸術に医学というわけだね!」
「そんな、どちらもまだまだですけどね」
「ならば、僕との出会いから始まり、芸術の才を切り開こうじゃないか!」
「はいっ!」
芸術に気炎を上げる二人の若き芸術家。
それをこっそり親父が見守っていた。
――港町アルリナ
エクアはサレートが操る馬の後ろに乗って、夕暮れ前のアルリナへとやってきた。
そして、港そばにある宿『アドソン』へ、チェックイン。
親父は一連の流れを気取られぬように距離を取り見張っていた。
「動きに怪しいところはなし。宿も『アドソン』……今のところは何にもねぇな。変人ってだけで、危険はなさそうだが……いや、エクアの嬢ちゃんには大きな借りがある。油断せずに見張ってねぇと」
エクアは親父がどうしても救いたかったカリスたちを説得してくれた。
親父が夢として抱いていた思いを現実のものとし叶えてくれた。
絶対に、忘れることのできない恩義がある。
だから彼は、何があってもエクアを守ると誓った。
砂漠に落ちた針の一本さえ見逃さぬ眼と、そよ風に揺れる花の音さえも捉える耳でエクアの騎士として彼女を守る。
だが、そんな彼の目と耳を嘲笑うかのように、エクアはアルリナから姿を消してしまうのであった……。
ギウはフィナへサレートに対する懸念を伝えに行こうとしていた。
その途中、エクアと出くわす。
「あ、ギウさん」
エクアは大きな茶色の肩掛けカバンを掛けていた。
どこかへ行くのかとギウは尋ねる。
「ぎうう?」
「はい、サレート=ケイキ先生の下で絵画の勉強を」
「ぎう……ぎうぎうぎう?」
ギウは両手で四角眼鏡の形を表す。
「はい、そうです。ギウさんはもうお会いになっているんですか?」
「ギウ」
「あ、お城のすぐ外で待っていたからですね。それでは、あまり先生を待たせるわけにはいけませんので、失礼します。今は人手もありますから大丈夫でしょうけど、何かありましたらすぐに連絡をくださいね。連絡先はアルリナの宿『アドソン』です」
「……ギウ」
エクアはぺこりと頭を下げ、ギウは小さく返事をする。
彼女が玄関口へ向かったのを見届け、彼は急ぎ、三階の執務室へ向かった。
――執務室
執務室ではフィナと親父がサレートに関する会話を行っていた。
「親父、あいつが胡散臭いって? それは見た目や態度だけ?」
「いや、中身もなんか嫌な感じがするな」
「そっか……エクアには悪いけど、念のため、二人のあとをつけてくれる。本当にアルリナの宿を借りてるのかどうか」
「わかったぜ、フィナの嬢ちゃん」
ここにギウが訪れる。
「ギウギウっ」
「え、ギウ? どうしたの?」
フィナはギウの妙な焦り声に驚きながらも声を返した。
彼は執務室に入るや否や、サレートのことをこう訴える。
「ギウウ、ギウ!」
「え、危険だって? ギウはあいつを危険だと感じたの?」
「ギウッ」
「そうなんだ……根拠となるものはあるの?」
「ぎう~……」
「そう、直感ってわけね。ふぅ、どうしようか?」
エクアはサレートの下で芸術を学べることを喜んでいる。
しかし、ギウと親父は彼を危険だと訴える。だがそれは直感で何ら根拠のないもの……。
そこでフィナが出した決断は……。
「エクアの楽しみを奪うのも忍びない。でも、あんたたちの直感も無視できない。親父はさっき言った通り、あとをつけて宿の確認を。ギウは」
彼女はポシェットから追跡用魔法石の指輪を取り出す。
「これをエクアにはわからないようにどこかに忍ばせることできる?」
「ギウッ!」
ギウはドンと銀の横っ腹を叩く。
「ふふ、それじゃ、お願いね」
「ギウウ」
「え?」
ギウはフィナに近づき、手を伸ばす。
「やだ、ギウ。くすぐったい、はははは、やめてって、身体まさぐらないでよっ」
「ギウ」
ひとしきりフィナの体をまさぐり、彼は何かを手に持ち離れた。
それを目にしたフィナと親父は大きく息を漏らす。
「ええ~、そこまで警戒する?」
「まぁ、怪しい奴だから。念には念を入れていいかもしれねぇな」
「ギウギウ」
ギウはフィナから追跡用魔法石の指輪を受け取り、エクアの元へ向かう。
その際、カインの診療所に立ち寄っていた。
――トーワ城・第一の防壁
まだ、サレートとエクアはトーワ領内にいた。
そこにギウが一冊の本を振りながらやってくる。
「ギウギウ~」
「あれ、ギウさん? どうしたんですか?」
「ギウギウ」
「これって、カイン先生の医学書?」
「ギウ」
「あ、トーワから離れている間もお勉強できるようにですか。ありがとうございます。カイン先生にもそう伝えてください」
エクアは医学書を納めるためにカバンを開く。
その時、ギウは目にも止まらぬ速さで追跡用魔法石の指輪をカバンの中に忍ばせ、さらにもう一つ、フィナをくすぐりゲットしたモノを忍ばせた。
「それじゃ、ギウさん」
「ぎ~う~」
ギウは手を振ってエクアを送り出す。エクアもそれに応える。
前に立つサレートはエクアが受け取った本について尋ねてきた。
「エクアさん、今の本は?」
「医学書です。私は癒しの術が得意でして、それに父が医者でしたので医学の方も勉強しているんですよ」
「癒しの術に医学。いや、才気溢れる人物はあらゆることに精通するのものだ。僕は芸術に錬金術。エクアさんは芸術に医学というわけだね!」
「そんな、どちらもまだまだですけどね」
「ならば、僕との出会いから始まり、芸術の才を切り開こうじゃないか!」
「はいっ!」
芸術に気炎を上げる二人の若き芸術家。
それをこっそり親父が見守っていた。
――港町アルリナ
エクアはサレートが操る馬の後ろに乗って、夕暮れ前のアルリナへとやってきた。
そして、港そばにある宿『アドソン』へ、チェックイン。
親父は一連の流れを気取られぬように距離を取り見張っていた。
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エクアは親父がどうしても救いたかったカリスたちを説得してくれた。
親父が夢として抱いていた思いを現実のものとし叶えてくれた。
絶対に、忘れることのできない恩義がある。
だから彼は、何があってもエクアを守ると誓った。
砂漠に落ちた針の一本さえ見逃さぬ眼と、そよ風に揺れる花の音さえも捉える耳でエクアの騎士として彼女を守る。
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