銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第二十二章  銀眼は彼に応え扉を開く

初耳です

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――砦前


 サレートは腐れた肉に包まれる化け物たちを勇者と同じだと言う。
 父が行った研究と同じだと言う。
 皆はサレートが何を言っているのか理解できないといった様子を見せる。
 そのような中で私は動揺を隠し、極めて冷静に言葉を返した。

「君が何を言っているのか、理解に苦しむな」
「フフフフ、隠しても無駄無駄。ドハ研究所の勇者増産計画のことは知っているんだよ。それにあなたが関わっていたこともね」

 反応を忘れていた仲間たちは一斉に瞳をこちらへ寄せた。
 少し前の私なら、ここで動揺を隠しきれなかったかもしれない。
 しかし、すでに覚悟はできている。
 だからといって、こんな奴にべらべら喋られたくはないが……話すなら自らの口で仲間たちに伝えたい。


「なるほど、色々詳しいようだが、それ以上はやめてもらおうか」
「ふふ、それは機密だからかい?」
「いや違う。それらのことは私から皆に話すつもりだからだ。だから、お前は黙ってろ!」

 瞳に力が宿る。
 銀眼は想いに応え、白光を纏う。
 それを目にしたサレートは子どものようにキャッキャとはしゃぎ始めた。

「あははは、それが銀眼の力かい? でもでも、勇者の力と比べるとなんて弱々しい。ケント様は失敗作だと聞き及んでいたけど、そのようだね」
「聞き及んでいた? その物言い、全てを知っているわけではないな」

「う~ん、残念なことにね。僕が知っているのはアーガメイト様が人間を改良して勇者を産み出そうとした。そして、あなたは失敗作として生まれた。失敗作のあなただったが、勇者の完成に何らかの形で貢献した。だからこそ、のアーガメイト様に認められ養子になることができた!」

 彼は自分の頭を叩きつけるように平手で覆う。
「ああ~、天才の称号をほしいままにしたアステ=ゼ=アーガメイト。彼の生命科学の知識は断片でも震え立つような芸術だった。僕もそんな芸術を生み出したい。そして超えたい。そう思い作り上げたのが、このテロールたちさ!」


 サレートは女性の顔と身体を持ち、胴体にいくつもの男の顔が張り付いた化け物を前に置いて、下らぬ妄想を語っている。

 盗賊たちはその妄想の犠牲になった。
 彼らに盗賊としての罪あれど、これほどの罰を受ける必要はなかっただろう。
 私は腐れた肉体に包まれる彼らにさっと視線を振って、サレートに戻す。


「彼らが父の研究を超えた存在で、父の研究の一端だと?」
「そうだよ。完璧な、存在だ。勇者たちを、大きく超えた、存在。それを僕が、生み出したんだ。人の命を、鎖のように繋ぎ、一つに、すること。それにより、絶大な力を、得た。アーガメイト様の研究のように、そして……アーガメイト様の研究を、超えた」

 おぼろのような怪しげな韻を踏む言葉を漏らし、自分を抱きしめて酔い続けるサレート=ケイキ。
 私は呆れと不快さに大きく息を吐く。
 そこにフィナが小さく問いかけてくる。


「今の話、本当なの? アーガメイトが人体実験を行っていたって。そして、あんたもそれに」
「いや、初耳だ」
「え?」
「どうやら彼は、父の初期の研究論文を鵜呑みにして暴走したようだ」
「「へ?」」

 この言葉、フィナとサレートの声が重なって生まれたもの。
 私は両手を腰に当てて、研究の一端を披露する。


「たしかに父はスカルペル人の肉体を改良し、地球から訪れた勇者のような力を得られないかと研究していたが、結局のところ個々の才がものをいい、あまり役に立たないとして途中で放棄しているんだ。サレート」
「う、嘘だねっ。それじゃ、あの勇者たちは一体何なんだ!?」
「そんなものお前に話してやる義理はない。私のことを含め、それらは仲間だけに話す。お前は謎を知ることなく、ここで、死ねっ」


 私は素早くホルスターから銃を抜き取り、彼の足を狙い発砲する。
 だが、女性の体を持つ存在がサレートを庇い、銃弾を肉体で受け止めた。
 肉体からは腐れた血が流れ落ちたが、女性は平然としている。

「おおお、テロール。さすがだよっ。あはははは、ふふふふふふ、かかかっかかあかかか。まぁいい。アーガメイト様の研究がなんであったにせよ。僕が至った……人を超えし存在を産み出せた。だけど、足りない。あとはエクアさんの才能が埋まり、完璧に至る」

「エクア、彼は何を?」
「わかりません。なぜか、私の才能とやらが、あの方々を完璧にするらしいですけど」
「そうか。所詮、狂人の戯言。知る必要もない。ギウ、フィナ、盗賊たちを土へ還してやれ」
「ギウギウ」
「おっけ。いくら盗賊でもこれはあんまりだしね」
「俺も行くぜ!」


 怪我を負った親父が小さなナイフを片手に前へ出てきた。
 それをカインが引き留める。

「親父さん、安静にしていてください!」
「大丈夫だって、先生。なぁ、旦那、頼むよ。俺はまだやれる」

 彼の足元はおぼつかなく、ナイフを持つ手は小刻みに震えている。とてもじゃないが戦闘に参加させることはできない。
「駄目だ」
「旦那!」
「君にはカインとエクアを守る役目がある。君はエクアに恩があるのだろ。ならば、その想いを全うしろっ」
「旦那……わかりました。二人には指一本触れさせません!」


 エクアとカインの命を親父に預け、その二人は親父の治療に専念する。
 私は銃を取り、フィナは穂先に黄金の魔法石のついた鞭を。ギウは魔族を塵へ帰すことのできる銛を。


「サレート、大人しく降伏しろ。君の芸術とやらがいかに強かろうと、私たち相手では力不足だ」
「さぁ、それはどうでしょうかねぇ。テロール!」

 サレートの前に立っていた妄想の産物がギウに襲い掛かった。
 七つの拳を振るい、五つの足で蹴りを見舞う。
 十二の拳と蹴りは衝撃によって地面を削り、音によってくうぜさせる。

 ギウは十二の狂気を銛と手足を使い受け流すが、勢いに押され後ろへ数歩下がった。
 すぐさま銛を構え直し、あの桃色の魔族との戦いでさえ見せたことのない殺気を纏う。
 それは仲間である私たちの肌さえも粟立たせ、恐怖に息が詰まるもの。


――強敵!


 テロールと呼ばれた女性らしき存在は、桃色の魔族よりも危険な存在のようだ。
 たまらずフィナが加勢に入る。
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