銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第二十三章 ケント=ハドリー

兄と弟の年齢

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「ごほん、あの、いいかな? アステ様の真意はもうわからない。だから今はわからないことよりも、私と兄さんの説明を続けた方がいいんじゃないかな?」

「……ああ、レイの言うとおりだ。えっと、どこまで話したか?」
「私たちが地球人の末裔のクローンで、体内に強化と滅びのナノマシンを宿していることと、兄さんがホムンクルスで強化のナノマシンのみを宿しているところまでだよ」
「そうだったな。では、話を続けよう」


 私は今から十二年ほど前に実験体としてドハ研究所で目覚めた。
 素体年齢は十歳。
 私は生まれながらにして十歳だったわけだ。


 ここでフィナが声を上げて、エクアもそれに続く。
「それじゃ、あんたって実年齢は十二歳なのっ?」
「え、私と同じ年齢?」

「まぁ、生まれてから世界で過ごした時間はエクアと変わらないか。私の活動期間は十二年。内三年は研究所の世界しか知らない。世界の広さを知った時間は九年ほどだ」
「そうだったんですか」
「ただ、私の場合、普通の少年少女と違い、予め基本的な知識を得た状態で活動を開始したので、知識もそうだが精神面も見た目相応だったと思う。だから、今の私を十二歳の少年として扱うのはおかしな話になる」


 と、説明するが、フィナは大人の振舞いを見せ続けてきた私の姿に納得のできない様子で、腕組みをしながら斜め見でジトリと睨みつけてきた。
 

「それでも私より年下なのは間違いないじゃん。まったく、大人ぶって説教とかしてたくせに……今度から私のことをお姉ちゃんって呼びなさいよ」
「……呼ばれたいのか? フィナお姉ちゃん」

 私は眉を折りながらそう呼ぶ。彼女は全身をぶるりと振るわせて、前言を撤回した。

「あ、ごめん、気持ち悪いからやめて」
「だろう……少なくとも私はこの十二年間、君以上に大人たちに触れて、歪んだ組織や政界を経験しているので、もはや少年の欠片なんてどこにも残っていないと思うぞ」
「子ども時代がほとんどないなんて、なんか寂しい話ね」
「私は特に寂しいと感じることはないが……ついでだ、レイやアイリが私を兄と呼ぶ理由にも触れておこう。レイ」

 レイに顔を向ける。彼は軽く微笑んで理由を披露し、それをフィナが受け取る。


「私たちの方が先に創られたけど、兄さんの方が活動年数が長いから兄さんと呼ぶようになったんだ」
「なるほどね。だからアイリが二十五歳なのに二十二のケントを兄呼びしたわけだ。二人とも、活動期間は?」

「私を含め、勇者と呼ばれる七人はみんな九年ほど。肉体年齢は初期設定により差異があるけど。私は十五、アイリは十六だった。それで、九年経ったので、それぞれ二十四に二十五というわけだよ」
「そういうわけか……」


 フィナは顎の下に手を置いてこくりと頷き、私へ視線を振る。
 話の続きを求めているようだ。
 彼女の催促に応え、さらに話は深く沈んでいく。


「では、一気に勇者であるレイたちがポットから出て、父がドハ研究所を破壊するまで話を進めよう」
 

――ケントが目覚めてから……。


 ともかく、私は目覚めた。
 
 目覚めたばかりの私はアステ=ゼ=アーガメイトを見て、脳に宿る知識からすぐに彼が私の創造主だと気づき、挨拶を交わした。


「初めまして、アステ=ゼ=アーガメイト様」
「ふむ、知識のインストールはうまくいったようだ。素体番号θシータ、今後お前は……そうだな、ケント=ハドリーとでも名乗るがいい」


 こうして、私は父によって名を授けられた。 
 この実験の成功に、父もその部下である研究員たちも大いに喜んだ。
 だが、すぐにそれは落胆に染まる。

 なぜならば、私に宿った強化のナノマシンがあまりにも微弱なものだったからだ。
 この時点で父は私に興味をなくし、私はしばらく他の研究員の下で経過観察を受けることになる。


 ある時、たまたま父と研究員の会話が耳に入った。
「アレに名を授けたのは尚早しょうそうだったか……未熟だったばかりに……」


 この声を聞いて、私は役立たずとして処分されるのではないかと怯えた。
 そこで私は自分の有用性を証明しようと、ドハ研究所のことを学ぶことにした。
 その時に知ったのが、私には近しい存在がいること――それはクローンである勇者たちの存在だ。

 私とは違い無から生まれたわけではないが、彼らもまた普通とは違う存在。スカルペル人とは違い体内にナノマシンを宿している。
 私は彼らに惹かれた。
 そして思った。もし、彼らを安全に目覚めさせることができれば、自分の有用性を認めてもらい、処分されずに済むのではないのだろうか?


 私は彼らの命を奪おうとしている滅びのナノマシンのことだけを学び、それに必要な知識だけを吸収していく。
 錬金や魔導に関する知識はさっぱりなのに、どういうわけかナノマシンに関する知識とは相性がよく、水を吸うスポンジのように知識が脳漿に宿っていった。


 そうして生み出した数式を誇らしげに父へ見せた時のことは、今もはっきりと覚えている。


「アステ様、この数式を使えば滅びのナノマシンよりも早くレスターを吸着できて起動させずに済み、活性化を阻害できます」
「見せてみろ……ふむ、これはお前ひとりで考えたのか?」
「はいっ」
「……なるほど。見事だ……これはスカルペルの知識ではないな」
「え?」
「気にするな」


 この会話――あの時は疑問だったが、今思えば、あの時からセアたちがいる情報世界とリンクしていたのかもしれない。
 彼らが持つ知恵を無意識に借り、私は滅びのナノマシンを回避する数式を産み出した。
 父はそれに気づいていたのかも……。

 だがここで、フィナが私の考えを否定する。
「それはないと思う。何かしらに気づいたのかもしれなけど、たぶん、あんたが生み出した数式はセアたちの知識とは無関係」
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