34 / 286
第五章 空間の魔法使いヤツハ(仮)
地下水路
しおりを挟む
ある昼下がり。
サシオンからの依頼をこなすため、配達の帰りのついでに、裏通りで街の人たちから話を聞く。
誰に話を聞こうかと物色していると……ちびっ子どもに絡まれた。
「ヤツハ~、ま~た仕事さぼってんの~?」
「サボってねぇよ!」
「ヤツハおねえちゃん、知らないよ。あとでピケちゃんから怒られても」
「だから、サボってないって」
この子たちは子守りの依頼で出会った子どもたち。
仕事抜きにしても、たまに遊んでやっているから、街で出会うと高確率で絡まれる。
口の悪い男の子の頭をグリグリ押さえながら、自分の変化と成長に驚く。
(子どもは苦手だったのになぁ。すっかり、付き合い方がわかってしまった)
子どもたちは思った以上にたくましく、多少の無茶をしても平然と受け入れる。
もちろん、ケガをさせるようなことは絶対にしない。
中には繊細な子もいるので、そういう子には言葉優しく接する。
もっとも、この子にそんな必要はないけど……。
(ふふ、昔の俺もこんな感じだったっけ? いや、そうでもないか?)
ここまでやんちゃではなかった気がするけど、なんとなく男の子に親近感を覚える。
男の子は、頭を押さえられながらも負けじと声を出す。
「ヤツハ~、暇なら遊ぼうぜ」
「こう見えても暇じゃないんだよ。また、今度な」
「おねえちゃん、ちょっとだけでも~」
女の子は少し目を潤ませてせがんでくる。まだ幼いというのに、なんという魔性。
さて、どうしようか……と、思っていると、通りがかりのおばさんが助け舟を出してくれた。
「こ~ら、あんたたちっ。お仕事の邪魔をしない。ヤツハちゃん、困ってるでしょ」
「ちぇ~、仕方がないな。今回は見逃してやるよ」
「あ~あ、一緒に遊びたかったのに」
子どもたちは諦めて、どこかへ歩いていく。
その子どもたちにおばさんは、ちょっと気になる注意をする。
「あんたたち、人気のないところで遊んじゃ駄目よ。最近は怖い人たちがいるんだから。知らない人に攫われるよ」
「「は~い」」
子どもたちは返事をして、広場の方へ向かっていった。
俺は今の注意について尋ねる。
「今の、何です? 怖い人たちとか人に攫われるとか?」
「それがね、数か月前から王都周辺で人さらいが頻発しているんですって。さすがに王都内では起きてないけど、一応ね。ヤツハちゃんも気をつけなさいよ」
「ええ~、ひどい話だな。気をつけときます。どうもです」
おばさんに頭を下げて、聞き込みを再開。
しばらく適当に歩いていると、あるおじいちゃんの姿が目に止まった。
そのおじいちゃんは毎日同じ場所でパイプを吹かせながら、通りの邪魔にならない縁石に座り、街を眺めている。
いつもなら特に話しかけることもなく通り過ぎていく。
だけど、今日は聞き込みのこともあり、それにおじいちゃんが何となく話しかけやすい雰囲気を纏っていたので、話しかけてみることにした。
「こんにちは、おじいちゃん」
「うん? おや、こんにちは。ヤツハちゃん、だったかな?」
「え、知ってるんだ」
「この東地区では有名人だからね。お嬢ちゃんのことを知らない人間なんていないだろう、ほっほっほ」
おじいちゃんは顎にたくわえた真っ白なお髭を撫でながら笑う。
「それでお嬢ちゃん。わしに何ようかな?」
「あ、えっと、おじいちゃんはいつもここに座って街を眺めているから、何をしてるのかなって?」
「なんだ、そんなことか。わしはみんなを見てるのさ」
「みんなを?」
「見なさい。いろんな人たちがいるだろう。みんな、それぞれ色の違う人生を歩んでいる。多くの色が重なり合う風景は、とてもとても綺麗で楽しく、面白い」
「はぁ、わかるようなわからないような」
「お嬢ちゃんもいつか分かる時がくる。今はがむしゃらに走り続けなさい。わしも若い頃はがむしゃらだったからのぉ」
「昔は何を?」
「色々さ。配達をしたり、野良仕事をしたり、魔物を狩ったり、商売をしたりね。最後は王都の水路の整備に落ち着いたよ」
「水路?」
白髭のおじいちゃんはパイプを咥え、ゆっくり一服を挟み、実に興味深い話をしてくれた。
「ふ~。王都の地下には地下水路があってね、上水道と下水道が張り巡らされていて、巨大な迷路のようになっているんだよ」
「へぇ~。あの、下水道の意味は分かるけど、上水道ってどんなところで役に立ってるの?」
上水道と言えば、生活用水。つまりは飲料に適した水だ。
日本ならば、各家庭の蛇口に届けられて、ちょいと捻れば水がいくらでも手に入る。
しかし、王都『サンオン』には蛇口なんて存在しない。
だから、上水道がどんな役目をしているのか気になった。
おじいちゃんは軽く笑い声をあげて答えてくれる。
「ふぉっふぉっ、な~に、いつも使っておるじゃろ。井戸だよ。あちこちにある井戸水は上水道から届けられて、井戸の下にある貯水槽に溜まっておるのさ」
「ええ~、あれって湧き水じゃなかったのっ!?」
「ああ。王都の地下には整備された川がいくつも流れておる。川の水はとっても清らかで、その水は上水道を通って、各地区、各場所に届いておるのじゃよ」
「地下に整備された川かぁ。すっごい話。じゃあ、おじいちゃんはその地下水路の整備をしてたから、王都の地下道はお手の物って感じなんだ」
「いやいや、さっきも言ったが、王都の下は巨大な迷路。わしが分かるのは自分の仕事をしていた場所だけじゃよ」
「じゃあ、どこまで広くて、どこに繋がっているかわからない場所もあるんだ」
「そうさね。噂によると城の内部に繋がっている道もあると言われてるねぇ」
「城、か」
城といえば、秘密の隠し通路。定番中の定番。
何の証拠もないが、城にはいざという時の脱出路が用意してあるような気がする。
地下が巨大な迷路になっているのならば、脱出路としては打ってつけだし。
それにしても、地下中を張り巡らしている上下水道とは――正直恐れ入った。
ここサンオンは日本と比べて、あまり整備されていないように感じていたので。
とはいえ、街にある家の様式や馬車程度の乗り物から、そんな設備があるような文明レベルを感じない。
上下水道の設備は彼らの持つ技術水準を上回ってる気がする。
となると、この設備は城や城壁と同じく、女神様とやらの贈り物なのかも。それとも、とんでもない天才が過去にいたのか?
俺は上下水道のことを深く考える。
すると、意識が空を飛び、真っ暗な空間に浮かぶ、箪笥と引き出しの光景が現れる。
引き出しを開け、水道の歴史に触れて、その歴史の古さに驚いた。
なんと、下水道は紀元前三千年頃の古代インドの都市、モヘンジョ=ダロに存在していた!
たしかに学校で習った覚えがある。
実際、引き出しの中では、ボーっと世界史の授業を受けている俺の姿が映っている。
教卓の前で先生が、教科書には載っていない水道にまつわる話をしている。
教科書ではインダス文明のモヘンジョ=ダロだけが記載されているが、それよりも古い、紀元前五千年頃のメソポタミア文明のバビロンなどでも下水道があったと。
先生は眠そうな生徒のことなんか気にもせず、饒舌に語っている。
先生、ごめん。あの時はぜんっぜん興味なかった。
話は日本の下水の話や上水の歴史へと移る。
日本では、し尿を農作物の肥料として利用していたので、あまり川に流すようなことはなかった。
それによって、下水道設備の整備が遅れた原因になっている。
しかし、下水道の概念は弥生時代には存在しており、排水路などが整備されていた。
奈良時代には平城京に大規模な排水路が整備されて、安土桃山時代の大阪城の城下町には、『太閤下水』と呼ばれる下水道が整備されおり、現在でも一部が使われている。
上水道も古代ローマには存在しているし、日本においても十六世紀半ばに、小田原城下の飲用に小田原早川上水が整備されている。
また、ポンプなどがない江戸時代には、高低差のみで水を運ぶ給水システムを作り上げていた。
これには高度な測量技術が必要と。
……俺は、昔の文明を舐めていた。
サンオンの地下施設がどうなっているか知らないけど、上下水道は大昔の文明でも作れるものらしい。
ならば、この世界にだってできるはずだ。
俺はおじいちゃんに話を聞かせて頂いたことへの礼を述べる。
「すっごい、面白かったです。ありがとうございました」
「いやいや、たいしたことないよ。わしも若いころの自分の娘と話をしている気分で楽しかったよ」
「はは、娘ですか。娘さんは王都に?」
「ああ。気がつけば孫も生まれていてね、月日とはあっという間だねぇ」
「お孫さんかぁ。お年は?」
「もう五才になるね。英雄祭では一緒に祭りを回る予定じゃよ」
「そうですか。ふふ、それは楽しみですね……では、そろそろ、失礼します」
「よかったら、また遊びにおいで。次くるときは、何かお菓子でも用意しておくから」
「お菓子かぁ。それは嬉しいなぁ。じゃあ、またね、おじいちゃん」
「ああ」
おじいちゃんと別れて、裏通りを歩きつつ途中にある屋台で、たくさんの具が入ったピロシキみたいなパンを一つ購入。
屋台のおじさんは可愛いお嬢さんにおまけだよ、と言って、パンをもう一つおまけしてくれた。
――美しさとは罪だ。
俺のような少女がおじさんをいとも簡単に魅了させてしまうなんて……っと、いかんいかん。中身が男であることを忘れては。
パンを片手に裏通りの奥へと歩いていく。
事前に得ているサシオンからの情報と最近の聞き込みで、違法賭博場の場所はわかっている。
だから、そこを目指す。
賭博場は裏通りの目立たない片隅にある食事処。
一見、何の変哲もないお店。
だがそれは、朝から夕方までの話。
日が沈むと、店の奥は賭博場に変わるらしい。
店の大きさを測るために、パンをかじりながら周囲を歩く。
食事処の奥は賭博場だからか、縦長で奥行きがある。
裏には小さな出入り口があった。
ここは違法賭博場。出入り口は目に見えるところだけではないと思うけど。
しかし、ここでパンを食べ終えた。
これ以上、ウロチョロするのは良くない。
賭博場から離れ、宿屋サンシュメへ帰る。
午後からはフォレの剣のしごきが待っている。
はぁ~、随分と働き者になったな、俺は……。
サシオンからの依頼をこなすため、配達の帰りのついでに、裏通りで街の人たちから話を聞く。
誰に話を聞こうかと物色していると……ちびっ子どもに絡まれた。
「ヤツハ~、ま~た仕事さぼってんの~?」
「サボってねぇよ!」
「ヤツハおねえちゃん、知らないよ。あとでピケちゃんから怒られても」
「だから、サボってないって」
この子たちは子守りの依頼で出会った子どもたち。
仕事抜きにしても、たまに遊んでやっているから、街で出会うと高確率で絡まれる。
口の悪い男の子の頭をグリグリ押さえながら、自分の変化と成長に驚く。
(子どもは苦手だったのになぁ。すっかり、付き合い方がわかってしまった)
子どもたちは思った以上にたくましく、多少の無茶をしても平然と受け入れる。
もちろん、ケガをさせるようなことは絶対にしない。
中には繊細な子もいるので、そういう子には言葉優しく接する。
もっとも、この子にそんな必要はないけど……。
(ふふ、昔の俺もこんな感じだったっけ? いや、そうでもないか?)
ここまでやんちゃではなかった気がするけど、なんとなく男の子に親近感を覚える。
男の子は、頭を押さえられながらも負けじと声を出す。
「ヤツハ~、暇なら遊ぼうぜ」
「こう見えても暇じゃないんだよ。また、今度な」
「おねえちゃん、ちょっとだけでも~」
女の子は少し目を潤ませてせがんでくる。まだ幼いというのに、なんという魔性。
さて、どうしようか……と、思っていると、通りがかりのおばさんが助け舟を出してくれた。
「こ~ら、あんたたちっ。お仕事の邪魔をしない。ヤツハちゃん、困ってるでしょ」
「ちぇ~、仕方がないな。今回は見逃してやるよ」
「あ~あ、一緒に遊びたかったのに」
子どもたちは諦めて、どこかへ歩いていく。
その子どもたちにおばさんは、ちょっと気になる注意をする。
「あんたたち、人気のないところで遊んじゃ駄目よ。最近は怖い人たちがいるんだから。知らない人に攫われるよ」
「「は~い」」
子どもたちは返事をして、広場の方へ向かっていった。
俺は今の注意について尋ねる。
「今の、何です? 怖い人たちとか人に攫われるとか?」
「それがね、数か月前から王都周辺で人さらいが頻発しているんですって。さすがに王都内では起きてないけど、一応ね。ヤツハちゃんも気をつけなさいよ」
「ええ~、ひどい話だな。気をつけときます。どうもです」
おばさんに頭を下げて、聞き込みを再開。
しばらく適当に歩いていると、あるおじいちゃんの姿が目に止まった。
そのおじいちゃんは毎日同じ場所でパイプを吹かせながら、通りの邪魔にならない縁石に座り、街を眺めている。
いつもなら特に話しかけることもなく通り過ぎていく。
だけど、今日は聞き込みのこともあり、それにおじいちゃんが何となく話しかけやすい雰囲気を纏っていたので、話しかけてみることにした。
「こんにちは、おじいちゃん」
「うん? おや、こんにちは。ヤツハちゃん、だったかな?」
「え、知ってるんだ」
「この東地区では有名人だからね。お嬢ちゃんのことを知らない人間なんていないだろう、ほっほっほ」
おじいちゃんは顎にたくわえた真っ白なお髭を撫でながら笑う。
「それでお嬢ちゃん。わしに何ようかな?」
「あ、えっと、おじいちゃんはいつもここに座って街を眺めているから、何をしてるのかなって?」
「なんだ、そんなことか。わしはみんなを見てるのさ」
「みんなを?」
「見なさい。いろんな人たちがいるだろう。みんな、それぞれ色の違う人生を歩んでいる。多くの色が重なり合う風景は、とてもとても綺麗で楽しく、面白い」
「はぁ、わかるようなわからないような」
「お嬢ちゃんもいつか分かる時がくる。今はがむしゃらに走り続けなさい。わしも若い頃はがむしゃらだったからのぉ」
「昔は何を?」
「色々さ。配達をしたり、野良仕事をしたり、魔物を狩ったり、商売をしたりね。最後は王都の水路の整備に落ち着いたよ」
「水路?」
白髭のおじいちゃんはパイプを咥え、ゆっくり一服を挟み、実に興味深い話をしてくれた。
「ふ~。王都の地下には地下水路があってね、上水道と下水道が張り巡らされていて、巨大な迷路のようになっているんだよ」
「へぇ~。あの、下水道の意味は分かるけど、上水道ってどんなところで役に立ってるの?」
上水道と言えば、生活用水。つまりは飲料に適した水だ。
日本ならば、各家庭の蛇口に届けられて、ちょいと捻れば水がいくらでも手に入る。
しかし、王都『サンオン』には蛇口なんて存在しない。
だから、上水道がどんな役目をしているのか気になった。
おじいちゃんは軽く笑い声をあげて答えてくれる。
「ふぉっふぉっ、な~に、いつも使っておるじゃろ。井戸だよ。あちこちにある井戸水は上水道から届けられて、井戸の下にある貯水槽に溜まっておるのさ」
「ええ~、あれって湧き水じゃなかったのっ!?」
「ああ。王都の地下には整備された川がいくつも流れておる。川の水はとっても清らかで、その水は上水道を通って、各地区、各場所に届いておるのじゃよ」
「地下に整備された川かぁ。すっごい話。じゃあ、おじいちゃんはその地下水路の整備をしてたから、王都の地下道はお手の物って感じなんだ」
「いやいや、さっきも言ったが、王都の下は巨大な迷路。わしが分かるのは自分の仕事をしていた場所だけじゃよ」
「じゃあ、どこまで広くて、どこに繋がっているかわからない場所もあるんだ」
「そうさね。噂によると城の内部に繋がっている道もあると言われてるねぇ」
「城、か」
城といえば、秘密の隠し通路。定番中の定番。
何の証拠もないが、城にはいざという時の脱出路が用意してあるような気がする。
地下が巨大な迷路になっているのならば、脱出路としては打ってつけだし。
それにしても、地下中を張り巡らしている上下水道とは――正直恐れ入った。
ここサンオンは日本と比べて、あまり整備されていないように感じていたので。
とはいえ、街にある家の様式や馬車程度の乗り物から、そんな設備があるような文明レベルを感じない。
上下水道の設備は彼らの持つ技術水準を上回ってる気がする。
となると、この設備は城や城壁と同じく、女神様とやらの贈り物なのかも。それとも、とんでもない天才が過去にいたのか?
俺は上下水道のことを深く考える。
すると、意識が空を飛び、真っ暗な空間に浮かぶ、箪笥と引き出しの光景が現れる。
引き出しを開け、水道の歴史に触れて、その歴史の古さに驚いた。
なんと、下水道は紀元前三千年頃の古代インドの都市、モヘンジョ=ダロに存在していた!
たしかに学校で習った覚えがある。
実際、引き出しの中では、ボーっと世界史の授業を受けている俺の姿が映っている。
教卓の前で先生が、教科書には載っていない水道にまつわる話をしている。
教科書ではインダス文明のモヘンジョ=ダロだけが記載されているが、それよりも古い、紀元前五千年頃のメソポタミア文明のバビロンなどでも下水道があったと。
先生は眠そうな生徒のことなんか気にもせず、饒舌に語っている。
先生、ごめん。あの時はぜんっぜん興味なかった。
話は日本の下水の話や上水の歴史へと移る。
日本では、し尿を農作物の肥料として利用していたので、あまり川に流すようなことはなかった。
それによって、下水道設備の整備が遅れた原因になっている。
しかし、下水道の概念は弥生時代には存在しており、排水路などが整備されていた。
奈良時代には平城京に大規模な排水路が整備されて、安土桃山時代の大阪城の城下町には、『太閤下水』と呼ばれる下水道が整備されおり、現在でも一部が使われている。
上水道も古代ローマには存在しているし、日本においても十六世紀半ばに、小田原城下の飲用に小田原早川上水が整備されている。
また、ポンプなどがない江戸時代には、高低差のみで水を運ぶ給水システムを作り上げていた。
これには高度な測量技術が必要と。
……俺は、昔の文明を舐めていた。
サンオンの地下施設がどうなっているか知らないけど、上下水道は大昔の文明でも作れるものらしい。
ならば、この世界にだってできるはずだ。
俺はおじいちゃんに話を聞かせて頂いたことへの礼を述べる。
「すっごい、面白かったです。ありがとうございました」
「いやいや、たいしたことないよ。わしも若いころの自分の娘と話をしている気分で楽しかったよ」
「はは、娘ですか。娘さんは王都に?」
「ああ。気がつけば孫も生まれていてね、月日とはあっという間だねぇ」
「お孫さんかぁ。お年は?」
「もう五才になるね。英雄祭では一緒に祭りを回る予定じゃよ」
「そうですか。ふふ、それは楽しみですね……では、そろそろ、失礼します」
「よかったら、また遊びにおいで。次くるときは、何かお菓子でも用意しておくから」
「お菓子かぁ。それは嬉しいなぁ。じゃあ、またね、おじいちゃん」
「ああ」
おじいちゃんと別れて、裏通りを歩きつつ途中にある屋台で、たくさんの具が入ったピロシキみたいなパンを一つ購入。
屋台のおじさんは可愛いお嬢さんにおまけだよ、と言って、パンをもう一つおまけしてくれた。
――美しさとは罪だ。
俺のような少女がおじさんをいとも簡単に魅了させてしまうなんて……っと、いかんいかん。中身が男であることを忘れては。
パンを片手に裏通りの奥へと歩いていく。
事前に得ているサシオンからの情報と最近の聞き込みで、違法賭博場の場所はわかっている。
だから、そこを目指す。
賭博場は裏通りの目立たない片隅にある食事処。
一見、何の変哲もないお店。
だがそれは、朝から夕方までの話。
日が沈むと、店の奥は賭博場に変わるらしい。
店の大きさを測るために、パンをかじりながら周囲を歩く。
食事処の奥は賭博場だからか、縦長で奥行きがある。
裏には小さな出入り口があった。
ここは違法賭博場。出入り口は目に見えるところだけではないと思うけど。
しかし、ここでパンを食べ終えた。
これ以上、ウロチョロするのは良くない。
賭博場から離れ、宿屋サンシュメへ帰る。
午後からはフォレの剣のしごきが待っている。
はぁ~、随分と働き者になったな、俺は……。
0
あなたにおすすめの小説
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる