マヨマヨ~迷々の旅人~

雪野湯

文字の大きさ
194 / 286
第二十二章 歩む先は深い霧に包まれる

笠鷺とヤツハとウード

しおりを挟む
「それで、私に何用なの?」

 ウードは身体をしなやかに傾け、艶笑えんしょうを浮かべる。
 それはヤツハに似た姿でありながら、まったく別の女性……。
 
 美しさを凛と置く可憐な花々も、彼女の純然たる美貌の前では花びらを逸らすだろう。
 雨露に濡れる蜘蛛の巣のような夜空の星々も、彼女の嫣然えんぜんを目にすれば雲に姿を隠すだろう。

 
 まさに魔性……人を美に狂わせる存在。

 
 俺は彼女に問う。
「ウード、俺は誰だ?」
「誰って、いきなりあなたは何を言っているの?」

「問いに答えて欲しいんだけど、ま、いっか。俺は笠鷺燎かささぎりょうだ。おそらく、もうほとんどヤツハを感じていない」
「え?」
「え、じゃねぇよ。その原因はお前にあるんだぜ」

 この言葉を受けて、ウードは身体をゆらりと振り、艶っぽい所作を見せつつ両腕を組んで、これからの話に臨む姿勢を見せた。
 男ならば、いや女であっても、彼女の動作の一つ一つに情欲を駆り立てられるであろう。
 かくいう俺も、少しだけウードの姿に魅入ってしまった。


 それを小さな笑いで掻き消して、言葉を紡ぐ。

「フフ……まず、お前が抑えている俺の心の一部を返してもらおうか」
「心の一部? それは罪悪感のこと?」
「そう、いまの俺なら受け止められるはずだ」

「そうかしら? あなたの受けた殺人への罪意識は深いもの。下手をすれば、心が壊れるわよ」
「大丈夫だ。たぶんな」
「たぶん……心強い言葉ね。わかった。だけど、いま壊れたら困るので危険だと思ったら止めるから」
「好きにしろ」

 ウードは不承不承をありありと見せながら、柔らかな双丘の中心より、黒く蠢く闇の球を生んだ。
 俺はソレに近づき、覗き込む。
  
 以前は少し覗いただけで、罪悪感が心を満たし、罪の意識に押しつぶされそうになった。
 だけど、今は……。

「はぁ~、あんまいい気分じゃないな。でも、問題ない」
 
 
 闇に彩られた球に両手を突っ込み、自身の胸に取り込む。
 情景が浮かぶ――盗賊の顎先を蹴り、殺してしまった情景が……。
 首の骨の折れる音が何度も鼓膜を震わせる。
 
 殺人への罪悪感、恐怖、後悔。
 
 それらは心をむしばみ、身体から力を奪う。
 喉を焼く感覚がせり上がってくる。
 
 ヤツハならばここで耐えられなくなり、闇を身から追い出し、吐瀉物をまき散らしたであろう。
 だけど、笠鷺燎はそれを受け入れる。
 
 そう、俺はそういう男だった……。
 
 闇を受け入れ、ウードへと顔を向ける。
 平然と佇む俺に、彼女は珍しく驚いた表情を見せた。


「どういうこと? あなたは殺人への後悔に打ち震えていたはず」
「それはヤツハだったからだ。元の俺は、お前に近しい感性を持っている」
「ん?」

「ウード。お前はいつから自意識を俺の中に宿した?」

「それは狭間の世界よ。私とあなたの魂は生まれ変わりという鎖でつながっている。おそらく、想像を反映する世界で、あなたの魂の中に潜む私の意識が具現されたんだと思う」
「なるほど……それで、はっきりと自分を意識したのは?」

「アクタへ訪れてすぐ。理由は、地蔵菩薩が贈った過去の知識を眠らせる箪笥の世界。その引き出しの一つに私の記憶が眠っていた。その記憶と微かに具現された私の意識が結び付き、私は私として、あなたの傍に立った」

「あ~、なるほどねぇ。遥か前に忘れ去ったはずの記憶を呼び起こす世界。そいつが前世の記憶まで呼び起こしてしまったわけだ」

「で、それがどうしたの?」
「ってことは、お前は俺がどうやって死んだか詳しく知らないわけだ?」
「そうなるわね。とはいえ、引き出しを使い断片的に見ている。刺されて死んだということはね」

「刺した奴がどうなったかは知っているのか?」
「いえ」
「そうか……」

 
 俺は自分の右手の親指を見つめる。
 そこにはあるはずのない、ぬらりとした液体が光る。
 
「俺は腹部を刺された。だけど……この親指を使い、殺人鬼野郎の目を抉ってやった!」
「えっ?」
「いくら刺されたとはいえ、とんでもない行動だよな。しかも、とっさにやれるなんて。だけどあの時は、死の恐怖よりも怒りが心を満たし、報復することで頭がいっぱいだった。そして、そのことについて、後悔は微塵もない!」

 
 目を抉り穿った親指をウードに見せつける。
 彼女は親指を瞳に宿し、笑う。


「フフ、そう。たしかに、私に近い感性を持っているのかも。前世と生まれ変わり。当然と言えば当然ね。私も自分に仇為す存在を決して許さなかった。自分で言うのもなんだけど、その報復は苛烈だった」

「そうか……だけど、俺とお前とでは異なる点がある」
「それは?」
「お前は本当の意味で自分のことしか考えていない。だけど、俺には他者を思いやる心がある」

 
 近藤――彼を見捨てることができず、助けた。
 ウードならば、絶対に彼を助けなかった。
 これがウードと俺の決定的な違いっ。

 そして、その心はヤツハとなった自分を通して、笠鷺燎にさらなる優しさをもたらした。
 俺がヤツハであれ、笠鷺燎であれ、仲間を思う気持ちは変わりはしない。

 しかし、ウードは人を思う優しさに嘲笑を浮かべる。
 彼女には仲間や友という存在がいなかったのだろう……。

 だが、それは彼女が歩んだ道。いや、歩み終えた道。
 道は途絶え、戻ることはできない。

 
 俺は話を核心へと近づけていく。

「俺はお前と同じく、自身に仇なす存在を許さない。そして、そんな奴に優しさを持ったりはしない。そのはずなのに、首の骨を折ってしまった盗賊の死を後悔し、恐れた。なぜだと思う?」

「もったいつけないで答えを言いなさいよ」
「ふぅ、せっかちなやつ。まぁいい。答えは……俺が女の体になってしまったからだ」

 一歩、彼女に近づき、両手をだらりと下げて体を見せつける。
 その両手で体全身をなぞり、そして右手の人差し指を頭へと持ってきた。

「男から女へ。言葉にすれば単純。だが、大きな違いがある。身体はもちろん、特に脳。男性の脳と女性の脳とでは構造が異なる。この変化に心はついていけなかった」


 俺はウードへ、俺自身に起こっていることを話していく。

 ずっと、男としての身体と脳を持ち、男の思考で生きてきた。
 だが、前触れもなく女になった。
 その衝撃を受けた心の負荷はどれほどのものだったかは計り知れない。

 ヤツハとなった俺は長年男として生きてきた思考と、女性としての心を手に入れた。
 女性となったばかりの脳……つまり、生まれたばかりの心は純粋であったのであろう。
 殺人という罪悪感に耐えられなかった。
 
 その重さと衝撃は強烈。
 だからこそ、心が壊れてしまわないように、ウードが自身の力を注ぎ込み罪悪感を抑えた。


 しかし、時が経つにつれて、ヤツハの心に笠鷺燎しての心が戻りつつあった。
 その狭間に揺れる心。

 女の身でありながら、女性が好きなのか、男性が好きなのか……。
 そんな中で、俺はフォレに恋心を抱く。
 
 それは、ヤツハの心。
 
 ヤツハはフォレに惹かれていた。
 だから、笠鷺の心を取り戻しつつあった俺でも、彼を忌避感なく受け止めることができた。

 その笠鷺の心が大きく戻るきっかけとなったのは――黒騎士との戦い。
 そこから繋がる、ウードとの協力。
 彼女に歩み寄ったため、心の一部を侵食された。
 奪われた心は、俺の中に宿っていたヤツハの心。
 
 これらの事柄に気づいたのは、トーラスイディオムとの戦いでの共闘の際だ。
 あの時、俺の中でヤツハの思いが小さくなり、笠鷺としての意識が強くなるのを感じた。



「これは仮説だが、ヤツハの心は俺とお前の魂の橋渡しをしているんだと思う」
「どういうこと?」

 俺は一度、俺とウードに指を向けて、次にその中間を指さした。

「俺とお前の間にヤツハがいる。俺たちは彼女の腕をもって引っ張り合っているのさ。この身体の主導権を得るために」

 ウードは顎に手を置き、視線を静かに目に見えぬヤツハの影に向ける。
 そして、小さく呟く。
「……続けて」


「お前が心を侵食するたびに、ヤツハの心は俺から離れ、お前に近づく。それによって、俺はより一層、笠鷺としての心を取り戻す。同時にそれは、身体の乗っ取りが進んでいることの証明」

「なるほど、その仮説が正しいとするなら、ある疑問が解消されるわね」
「ん、それは?」

「あなたの魔力よ。以前よりもあなたの身体を侵食しているはずなのに、まったく衰える様子がない。おそらくだけど、ヤツハの心とやらを媒介にして私と繋がっているからだわ」

「ああ、言われてみれば……俺の主導権を奪われつつあるんだから、力は衰えるはずだもんな」
「面倒な話ね。それに今ので、あなたの魂を奪っているはずだったのにあなたが持つ力を私が使えない理由がわかった」
「ん、そんな力が?」
「ふぅ、そうね……」

 ウードは少し言い淀むが、肩を軽く竦め、この程度ならいいかとわかりやすい態度を取り、話を続けた。


「あなたの宿す黄金の力。あれは私には使えない。あの力はあなたの力」
「え、そうなんだ?」
「おかげさまで亜空間転送は私には叶わないわね。それでも、世界に穴を開けること、っ」


 彼女は途中で言葉を切った。
 それはしゃべり過ぎたという態度に見える。

 俺はそれに鋭く切り込む。

「亜空間魔法は使えるんだな。それを俺に知られると、何かまずいことでも?」
「さぁ。ふふ、あるとしたら、何だと思う?」
「こいつっ」

 俺に感づかれたとわかるや否や、からかうような口調を見せる。
 そこから実は大したことではないのか、ただの余裕なのか、それとも何か大きな不都合があり誤魔化しているのかわからない。

 
 ウードは一度視線を平原に向けて俺に戻し、小さく息を落とす。

「もし、これらの仮説が正しいなら、この身体の本来の持ち主は女性となった、笠鷺燎であるヤツハのもの。ヤツハの心にどれだけ近づけられるかで、主導権が得られるわけね」

「たぶんな。もっとも、ヤツハの心は生まれたばかりで大した自我もなく、俺かお前に組み込まれることでヤツハの思いを感じることのできる……そんな不完全な存在なんだろうけど」
「そう……それは少々厄介ね」


 ウードはそっと胸に手を添える。
 添えた中にあるのはヤツハの心。
 そしてそれは、彼女にとって最大の懸念となるかもしれない心。
 ヤツハの誰かを思う、とても純粋な心……。
 
 情けないことに俺は、そんなヤツハの心に縋るしかない。
 この戦争の最中か、その後のどちらかで、俺はウードに全てを奪われるだろう。
 そうなったら、ウードを止められる存在はヤツハしかいなくなる。

 心を閉ざし、小さく呟く。
(満足に意思表示もできない、幼いヤツハの心に頼るしかないなんてっ)
 残酷な役目を押し付けることになる。
 でも、ウードを止められるのはヤツハしかいない。
 
 俺はその思いを悟られぬように、いつもの自分に戻り、ウードへ軽口を叩く。
 

「はは、ヤツハのフォレに対する思いが強いと、お前もあいつに惚れるかもな」

「私がフォレを愛してやまない女になると? フフ、子どもの恋心に振り回せられるほど幼くはないわよ、私は」

「幼くないか……どうだ、そろそろお前が何者か話してみては?」
「そうね。鈍いあなたを待っていて答えが出なさそうだし。もしかして、私が聡明だと感じたのは、ヤツハの思考だったのかしら?」
「うっさいわ。で、誰なんだ、お前は?」

 
 ウードは人差し指と中指でそっと唇を押さえて、軽く悩む様子を見せた。
 そこから軽い笑いを落とし、くだらない最後の茶番を口にして、俺はそれに呆れて吼える。

「私が何者なのか? クスッ、ヒントをあげるわ」
「またそれかよっ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...