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第二章 子どもたちの目指す道
第57話 歩む情熱ある者よ、共に行こう!
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アデルの声は俺の心に響き、過去の俺の想いを揺さぶる。
若い頃はただ、世界を知りたかった。冒険をしたかった。
アデルを通して、過去の情景が浮かぶ。何も考えず、アホで馬鹿で、ただひたすら前を見ていた少年時代の自分。
そんな自分の姿に寂しさが募る。
(もう、俺には叶わない夢。託すとは違うが、アデルの歩む道を俺は見守るとしよう)
俺はもう四十五。
二十年も経てば、墓の下。
夢を抱ける年齢ではない。
アスティも俺の手から離れようとしている。
残りの人生は、終わるための準備。
俺にできることは、子どもたちが歩む道を後ろで見守るだけだ。
そういう思いを抱き、アデルへ声をかけよう。
俺が夢見た旅を彼が果たしてくれることを願い、ただ一言「頑張れ」と……そう思った矢先、俺はアデルの言葉に心を打たれた――――いや、殴り飛ばされた。
「それじゃ、これからおじさんは旅に出たりするの?」
「――え?」
「だって、アスティは勇者を目指すわけじゃん。自分で道を見つけたんだからおじさんが面倒を見てやる必要もないだろうし」
「あ、いや、それは……」
「だったら、おじさんは自由ってことじゃん! これからは昔できなかった冒険ができるってことだろ」
「――――っ!?」
「へへ、そうなったら、同じ冒険家だね」
俺は言葉を詰まらせて、何も生み出せなかった。
アデルは両手をぐっと握り締めたかと思うと、それを解き、俺に手を振った。
「ありがとう、おじさん! 俺の道を見つけられそうだよ! それじゃね、おじさん。よ~し、それじゃ、世界のことをもっと知るために、何をしないといけないか考えないと」
そう言葉を残して、アデルはこの場から去った。
一人残された俺はぼそりと声を漏らす。
「自由……冒険……俺が……可能なのか?」
俺はこれからのことを考える。
アスティの母親探し・妹探し。異界の侵略者。大きすぎるアスティの夢とフローラの夢。
それらの問題の対処や娘たちへの支えはまだ必要。
だが、そのすべてが解決したら?
「俺は……過去に置いてきたはずの夢を……目指せるのか?」
片手で顔の半分を覆い、奇妙な笑いを生む。
「フフフ……ははは、ハッハッハッ!」
肩が震えた。目尻に涙が滲む。
これほどまでに感情をむき出しにして笑ったのはいつぶりだろうか。
「終わりを考えるだと? 俺が? ――ちがうな。俺はまだ、生きてるんだ」
もう二十年しかない。だから、終わりを考えよう?
俺はもう大人だ。理知的であるべきだ。
勇者として模範であるべきだ。
父親として、娘に恥じぬ男でなければならぬ。
これらは全て正しい。正しいが……俺ではない!
俺はもっと、バカだったはず。
「……はぁ、今日は子どもたちに教えられてばかりだな。教え……そこが誤りだった」
俺は子どもたちに教える立場だと思っていた。
まだまだお尻に殻がくっついた雛鳥が迷わぬよう、危険な目に遭わないよう親鳥として守ってやるべきだと思っていた。
――だが、違った。
ガイウスの言うとおり、旅に出た瞬間から子どもたちは俺の手を離れ、自分の道を歩み始めていたんだ。
ひよっこたちが俺の後を追ってきたわけじゃない。
俺が旅立つ背中を見守り、僅かな支えのために俺が子どもたちの後を追っているだけだったんだ。
「教えるだけじゃない。教わることもある。親と子の関係だが、対等な仲間であり、学び合える存在でもあった。それを俺は理解できてなかった。フフフ、あの子たちは俺が思っているよりも早く、ずっと遠くを歩み始めているのかもな」
子どもたちは前へ前へと進んでいく。
俺はどんどん置いていかれる。
そうだ、バカな自分を思い出したが、責務を知った俺はそう簡単には―――
――それは、君らしくないな――
不意に聞こえた、少年の声。
その声はよく覚えている、魂に刻んである。
俺は瞳を何もない場所へ動かす。
そこに浮かぶは、過去の情景。
友ゼルムと語り合った夜の光景。
焚き火を囲み、少年時代の俺は彼に尋ねた。
「俺もお前のようにちゃんとした方がいいのかなぁ?」
「うん、何の話だ?」
「いやさ、お前って礼儀正しいし、しっかりしてるじゃん。十四の俺と一歳しか違わないのに」
「それは、君らしくないな」
「なにが?」
「そんな悩みを抱くなんて、君らしくない。ジルドラン、君は自由であるべきだ。自由である君が一番、君を輝かせる」
「そうは言っても、いつもお前に迷惑をかけてばかりだし」
「私のことなど気にするな。いや、誰のことも気にするな。君は君だけのことを考えろ」
「それって……傍若無人ってやつじゃねぇの?」
「クスッ、そうとも言うな」
「――おい!」
彼は焚き木に一本の枝をくべて、実に楽しそうに語る。
「だけど、それが君の魅力。自由に翼をはためかせて、飛ぶ。それがジルドラン、君だ。だから、決して誰かのために生きようとかするんじゃないぞ。そんなことすれば、君は自分を見失ってしまう。誰よりも自由で、強く、輝き、魅了する。それが君なんだ」
――――
情景は掻き消えて、無機質な北壁の石組みが瞳に宿る。
「なぜ、いまさら、こんな思い出が蘇る?」
ガイウスは言った。俺は役割を演じ、無理をしてきた。
友ゼルムは言った。誰かのために生きることで自分を見失うと。
それでも二人には、俺はこう伝える。
ゼルムのために勇者として生きてきたことに後悔はない。
アスティのために父親として生きてきたことに後悔はない。
だが、アデルはこう言った。俺はもう自由だと……。
「らしくない生き方。らしくない人生。それらが終わった……俺は俺らしく、自由に生きられる。ふふ、ふふふははははは、なんて誘惑だ! 衝動だ! ここから先、俺が俺らしく生きる人生を歩める」
しかし、そのようなことを行えば、元勇者としての俺に期待する者たちを裏切ることになるだろう。
父親としての俺を頼るアスティを悲しませることになるだろう。
だが――
――君らしくない――
「勇者に対する期待など勝手にさせておけ。アスティはもう一人で道を歩み始めた。親としてやることはもうほとんどない。そしてそれは時を追うごとに小さくなり、俺は自由になっていく。そうだ、俺はもう役割を演じることを終えた。これからの俺は勇者でもない父親でもない――――ただの男だ!」
友のために生き、娘のために生きた。
この想いに誇りを抱けど、誇りの中に埋もれてしまった自分がいる。
それを今、ここで思い出した。掘り起こしてしまった。
この衝動には、抗いようもない……。
――そうだ、君らしくない。ただ相手を認め、道を譲るなんて――
「その通りだよ、ゼルム。子どもたちが道を歩み、俺は置いて行かれる――だと? バカな、ならば追いかけろ! いや、追い越せ! 俺の力は、父は、こんなものではない! 俺にはまだ歩む力が残っている! だってのに、立ち止まるなよ、このバカやろう!!」
顔に笑みが浮かぶ。
それは勇者としてではなく、父親としてでもなく、実に自己中心的な考えを持った己自身の歪んだ笑み。
「へ、俺は少し無理をしすぎた。残りの人生くらい俺らしく、テキトーに生きてもいいだろう。俺も子離れをして、アスティも親離れが必要だ。俺は変わるぞ、アスティ……」
自分への想い、娘への想いが入り混じり、歪んだ笑みと子を思う微笑みが溶け込み合う、奇妙な艶笑が浮かんだ。
そうして、新たな自分を手にして、俺は新たな一歩を踏み出す。
――――と、したところで
「あ、ジルドラン様、ここにいらっしゃいましたか」
「ん、エルダー。どうしたんだ?」
「はい、午後の演説についての話を……」
「演説?」
「あの、住民の皆さんに理想の世界について。いろいろありましたが、フローラさんの目指すものにジルドラン様も納得されているようですし、そういうことで演説をお願いします」
「え、いまから?」
「はい、もう、皆さん集まって、今か今かと待ちわびてますよ」
「いや、俺はもう、そういうのは……」
「では、参りましょう。さぁ、さぁ」
「おい待て、人の背中を押すな。ってか、お前、細身の割には意外と力強いな」
エルダーは遠慮なしにぐいぐい背中を押して、俺を演説会場へ運んでいく。
俺の意識はたしかに変わった――――しかし、積み上げてきたものがなくなるわけじゃない。演じ続けてきた責務が残っている。
「はぁ、真の自由を得るのは大変そうだな」
「ジルドラン様、急ぎましょう!」
「あ~、ハイハイ」
こうして、一つの旅が終わった。
子どもたちは自分たちの道を見つけ、俺もまた新たな道を模索し始める。
その道はどれも前途多難であり、歩みには痛みを伴うものばかりだろう。
だが、夢とはそのようなものだ。
痛み、苦しみ、泣き、心を引き裂かれようとも、己を信じ、頂を目指して歩み続ける。
そのような辛酸をなめても、到達できる保証はない。
だが、歩まねば、辿り着けない。
だから、歩む。
歩み、手にする。
自分が目指した夢を……。
―――――※ここからはあとがきです。
以上、終幕。
この章は、親子の愛と成長に焦点を合わせた話であったため、冒険を期待した方々にとっては肩透かしであったこと、大変申し訳ございません。
続きに関しては、機会があればということで。
なお続く場合は、三章に入る前に第58話を追加する予定です。
内容は人間族の王城内の話と、魔族の王カルミアの話。
アスティとジルドランの存在を知った彼らが早速動き始めます。
二章と三章に挟まる章間では、歴史研究家がアスティが行ったことについて気づき始めます。
裏設定になりますが、ジルドランがいる時代=地球では紀元前2500年くらい。
章間の時代は、西暦2700年くらいです。本編には全く関係ない設定ですが、章間には少しだけ関係しています。また、本編中に地球人が登場するなんてことはありません。彼らはピラミッドの建設に忙しいでしょうから。
あとは起承転結の転にあたる三章の内容ですが、
アスティに秘められた能力。ケルベロスと謎の少女との出会い(本編とあんま関係ない)。
ジルドラン、故郷へ帰る。神を殺す。
アスティの敵、叡智と呼ばれる存在に触れる。悪魔との出会い。姉妹との再会。
といったラインナップです。
アスティに味方する神と悪魔と、敵である叡智との邂逅がメインになると思います。
余裕があれば、勇者ジルドランシリーズを書いている小説家の出会いも。
小説家の見た目は地味でぽっちゃりとしてますが、全身からエロスを醸し出すエロスの権化です。男が目にしたら抱かずにはいられないと感じさせる女性。
で、四章は異界の侵略者の話で終わり。
四章が終えるとアスティニアの章と変わりますが、あんまり長くない。数話で終わる予定。
大団円を迎えたあとは、おまけで章間に登場してきた歴史研究家のその後の話。(世界観クラッシャーになるけど書く)
これらはあくまで予定なので、たぶん書き記した通りにはならないです。
アスティの十五年成長期も、当初の予定では数話で終わらせるつもりだったことを考えると。
私の予定→一万文字くらいで終わるだろ→実際は十万文字かかります。ってことがよくあるので。
プロット、人物相関図を一切書かないからこうなってしまう。
この作品に限らず、全作品脳内プロットなので。
ではでは、ここまでお付き合いしてくださった読者の皆様、ありがとう!!
若い頃はただ、世界を知りたかった。冒険をしたかった。
アデルを通して、過去の情景が浮かぶ。何も考えず、アホで馬鹿で、ただひたすら前を見ていた少年時代の自分。
そんな自分の姿に寂しさが募る。
(もう、俺には叶わない夢。託すとは違うが、アデルの歩む道を俺は見守るとしよう)
俺はもう四十五。
二十年も経てば、墓の下。
夢を抱ける年齢ではない。
アスティも俺の手から離れようとしている。
残りの人生は、終わるための準備。
俺にできることは、子どもたちが歩む道を後ろで見守るだけだ。
そういう思いを抱き、アデルへ声をかけよう。
俺が夢見た旅を彼が果たしてくれることを願い、ただ一言「頑張れ」と……そう思った矢先、俺はアデルの言葉に心を打たれた――――いや、殴り飛ばされた。
「それじゃ、これからおじさんは旅に出たりするの?」
「――え?」
「だって、アスティは勇者を目指すわけじゃん。自分で道を見つけたんだからおじさんが面倒を見てやる必要もないだろうし」
「あ、いや、それは……」
「だったら、おじさんは自由ってことじゃん! これからは昔できなかった冒険ができるってことだろ」
「――――っ!?」
「へへ、そうなったら、同じ冒険家だね」
俺は言葉を詰まらせて、何も生み出せなかった。
アデルは両手をぐっと握り締めたかと思うと、それを解き、俺に手を振った。
「ありがとう、おじさん! 俺の道を見つけられそうだよ! それじゃね、おじさん。よ~し、それじゃ、世界のことをもっと知るために、何をしないといけないか考えないと」
そう言葉を残して、アデルはこの場から去った。
一人残された俺はぼそりと声を漏らす。
「自由……冒険……俺が……可能なのか?」
俺はこれからのことを考える。
アスティの母親探し・妹探し。異界の侵略者。大きすぎるアスティの夢とフローラの夢。
それらの問題の対処や娘たちへの支えはまだ必要。
だが、そのすべてが解決したら?
「俺は……過去に置いてきたはずの夢を……目指せるのか?」
片手で顔の半分を覆い、奇妙な笑いを生む。
「フフフ……ははは、ハッハッハッ!」
肩が震えた。目尻に涙が滲む。
これほどまでに感情をむき出しにして笑ったのはいつぶりだろうか。
「終わりを考えるだと? 俺が? ――ちがうな。俺はまだ、生きてるんだ」
もう二十年しかない。だから、終わりを考えよう?
俺はもう大人だ。理知的であるべきだ。
勇者として模範であるべきだ。
父親として、娘に恥じぬ男でなければならぬ。
これらは全て正しい。正しいが……俺ではない!
俺はもっと、バカだったはず。
「……はぁ、今日は子どもたちに教えられてばかりだな。教え……そこが誤りだった」
俺は子どもたちに教える立場だと思っていた。
まだまだお尻に殻がくっついた雛鳥が迷わぬよう、危険な目に遭わないよう親鳥として守ってやるべきだと思っていた。
――だが、違った。
ガイウスの言うとおり、旅に出た瞬間から子どもたちは俺の手を離れ、自分の道を歩み始めていたんだ。
ひよっこたちが俺の後を追ってきたわけじゃない。
俺が旅立つ背中を見守り、僅かな支えのために俺が子どもたちの後を追っているだけだったんだ。
「教えるだけじゃない。教わることもある。親と子の関係だが、対等な仲間であり、学び合える存在でもあった。それを俺は理解できてなかった。フフフ、あの子たちは俺が思っているよりも早く、ずっと遠くを歩み始めているのかもな」
子どもたちは前へ前へと進んでいく。
俺はどんどん置いていかれる。
そうだ、バカな自分を思い出したが、責務を知った俺はそう簡単には―――
――それは、君らしくないな――
不意に聞こえた、少年の声。
その声はよく覚えている、魂に刻んである。
俺は瞳を何もない場所へ動かす。
そこに浮かぶは、過去の情景。
友ゼルムと語り合った夜の光景。
焚き火を囲み、少年時代の俺は彼に尋ねた。
「俺もお前のようにちゃんとした方がいいのかなぁ?」
「うん、何の話だ?」
「いやさ、お前って礼儀正しいし、しっかりしてるじゃん。十四の俺と一歳しか違わないのに」
「それは、君らしくないな」
「なにが?」
「そんな悩みを抱くなんて、君らしくない。ジルドラン、君は自由であるべきだ。自由である君が一番、君を輝かせる」
「そうは言っても、いつもお前に迷惑をかけてばかりだし」
「私のことなど気にするな。いや、誰のことも気にするな。君は君だけのことを考えろ」
「それって……傍若無人ってやつじゃねぇの?」
「クスッ、そうとも言うな」
「――おい!」
彼は焚き木に一本の枝をくべて、実に楽しそうに語る。
「だけど、それが君の魅力。自由に翼をはためかせて、飛ぶ。それがジルドラン、君だ。だから、決して誰かのために生きようとかするんじゃないぞ。そんなことすれば、君は自分を見失ってしまう。誰よりも自由で、強く、輝き、魅了する。それが君なんだ」
――――
情景は掻き消えて、無機質な北壁の石組みが瞳に宿る。
「なぜ、いまさら、こんな思い出が蘇る?」
ガイウスは言った。俺は役割を演じ、無理をしてきた。
友ゼルムは言った。誰かのために生きることで自分を見失うと。
それでも二人には、俺はこう伝える。
ゼルムのために勇者として生きてきたことに後悔はない。
アスティのために父親として生きてきたことに後悔はない。
だが、アデルはこう言った。俺はもう自由だと……。
「らしくない生き方。らしくない人生。それらが終わった……俺は俺らしく、自由に生きられる。ふふ、ふふふははははは、なんて誘惑だ! 衝動だ! ここから先、俺が俺らしく生きる人生を歩める」
しかし、そのようなことを行えば、元勇者としての俺に期待する者たちを裏切ることになるだろう。
父親としての俺を頼るアスティを悲しませることになるだろう。
だが――
――君らしくない――
「勇者に対する期待など勝手にさせておけ。アスティはもう一人で道を歩み始めた。親としてやることはもうほとんどない。そしてそれは時を追うごとに小さくなり、俺は自由になっていく。そうだ、俺はもう役割を演じることを終えた。これからの俺は勇者でもない父親でもない――――ただの男だ!」
友のために生き、娘のために生きた。
この想いに誇りを抱けど、誇りの中に埋もれてしまった自分がいる。
それを今、ここで思い出した。掘り起こしてしまった。
この衝動には、抗いようもない……。
――そうだ、君らしくない。ただ相手を認め、道を譲るなんて――
「その通りだよ、ゼルム。子どもたちが道を歩み、俺は置いて行かれる――だと? バカな、ならば追いかけろ! いや、追い越せ! 俺の力は、父は、こんなものではない! 俺にはまだ歩む力が残っている! だってのに、立ち止まるなよ、このバカやろう!!」
顔に笑みが浮かぶ。
それは勇者としてではなく、父親としてでもなく、実に自己中心的な考えを持った己自身の歪んだ笑み。
「へ、俺は少し無理をしすぎた。残りの人生くらい俺らしく、テキトーに生きてもいいだろう。俺も子離れをして、アスティも親離れが必要だ。俺は変わるぞ、アスティ……」
自分への想い、娘への想いが入り混じり、歪んだ笑みと子を思う微笑みが溶け込み合う、奇妙な艶笑が浮かんだ。
そうして、新たな自分を手にして、俺は新たな一歩を踏み出す。
――――と、したところで
「あ、ジルドラン様、ここにいらっしゃいましたか」
「ん、エルダー。どうしたんだ?」
「はい、午後の演説についての話を……」
「演説?」
「あの、住民の皆さんに理想の世界について。いろいろありましたが、フローラさんの目指すものにジルドラン様も納得されているようですし、そういうことで演説をお願いします」
「え、いまから?」
「はい、もう、皆さん集まって、今か今かと待ちわびてますよ」
「いや、俺はもう、そういうのは……」
「では、参りましょう。さぁ、さぁ」
「おい待て、人の背中を押すな。ってか、お前、細身の割には意外と力強いな」
エルダーは遠慮なしにぐいぐい背中を押して、俺を演説会場へ運んでいく。
俺の意識はたしかに変わった――――しかし、積み上げてきたものがなくなるわけじゃない。演じ続けてきた責務が残っている。
「はぁ、真の自由を得るのは大変そうだな」
「ジルドラン様、急ぎましょう!」
「あ~、ハイハイ」
こうして、一つの旅が終わった。
子どもたちは自分たちの道を見つけ、俺もまた新たな道を模索し始める。
その道はどれも前途多難であり、歩みには痛みを伴うものばかりだろう。
だが、夢とはそのようなものだ。
痛み、苦しみ、泣き、心を引き裂かれようとも、己を信じ、頂を目指して歩み続ける。
そのような辛酸をなめても、到達できる保証はない。
だが、歩まねば、辿り着けない。
だから、歩む。
歩み、手にする。
自分が目指した夢を……。
―――――※ここからはあとがきです。
以上、終幕。
この章は、親子の愛と成長に焦点を合わせた話であったため、冒険を期待した方々にとっては肩透かしであったこと、大変申し訳ございません。
続きに関しては、機会があればということで。
なお続く場合は、三章に入る前に第58話を追加する予定です。
内容は人間族の王城内の話と、魔族の王カルミアの話。
アスティとジルドランの存在を知った彼らが早速動き始めます。
二章と三章に挟まる章間では、歴史研究家がアスティが行ったことについて気づき始めます。
裏設定になりますが、ジルドランがいる時代=地球では紀元前2500年くらい。
章間の時代は、西暦2700年くらいです。本編には全く関係ない設定ですが、章間には少しだけ関係しています。また、本編中に地球人が登場するなんてことはありません。彼らはピラミッドの建設に忙しいでしょうから。
あとは起承転結の転にあたる三章の内容ですが、
アスティに秘められた能力。ケルベロスと謎の少女との出会い(本編とあんま関係ない)。
ジルドラン、故郷へ帰る。神を殺す。
アスティの敵、叡智と呼ばれる存在に触れる。悪魔との出会い。姉妹との再会。
といったラインナップです。
アスティに味方する神と悪魔と、敵である叡智との邂逅がメインになると思います。
余裕があれば、勇者ジルドランシリーズを書いている小説家の出会いも。
小説家の見た目は地味でぽっちゃりとしてますが、全身からエロスを醸し出すエロスの権化です。男が目にしたら抱かずにはいられないと感じさせる女性。
で、四章は異界の侵略者の話で終わり。
四章が終えるとアスティニアの章と変わりますが、あんまり長くない。数話で終わる予定。
大団円を迎えたあとは、おまけで章間に登場してきた歴史研究家のその後の話。(世界観クラッシャーになるけど書く)
これらはあくまで予定なので、たぶん書き記した通りにはならないです。
アスティの十五年成長期も、当初の予定では数話で終わらせるつもりだったことを考えると。
私の予定→一万文字くらいで終わるだろ→実際は十万文字かかります。ってことがよくあるので。
プロット、人物相関図を一切書かないからこうなってしまう。
この作品に限らず、全作品脳内プロットなので。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ご感想ありがとうございます。
二章について、雰囲気の変化やテンポの違いを感じられたとのこと、ご指摘いただき感謝します。
二章では、物語全体の中でも少し趣向を変え、主人公の内面や心情を掘り下げる方向性で描いていました。
そのため、一章にあった軽快さや会話中心のテンポを楽しみにされていた方には、違和感として映ってしまったかもしれません。
物語の雰囲気が大きく変わることは意図した部分でもありましたが、読者の方の率直なご意見はとても励みになります。
読んでくださり、本当にありがとうございました。
旅の途中の筈なのにデルビヨでの話に時間というか話数を取られ過ぎな感じ。
ご感想ありがとうございます。
デルビヨでの時が長く感じられたとのお言葉、旅の流れにおける一幕の重みを確かに受け止めました。
この町でジルドランとアスティが刻み、フローラが灯した希望は、第二の章の終幕として心に響くものと信じます。
ご期待に沿えぬ点もあったかと存じますが、物語の道をそっと見守っていただければ幸いです。
負傷者と死傷者の書き方はおかしいです。死傷者は死者や負傷者をまとめた意味。この場合負傷者と死者では?
ご指摘ありがとうございます。
確かに「死傷者」は「死者と負傷者を合わせた語」なので、「負傷者と死傷者」と並べるのは意味が重複しており不適切でした。
今後は正確な用語の使い方にも気を配っていきたいと思います。
ご指摘、誠に感謝いたします。