2 / 32
第一章 賢者様を血の海に沈める
天敵・貴族のお嬢様
しおりを挟む
――三日後・アトリア学園・広場
学園には魔法の練習や運動などが行えるでっかい広場があります。
広場は土が剝き出しの場所と、芝生の生えた場所の二種類。
今日は芝生の生えた広場で賢者様と魔導生による模擬戦が行われます。
すでに、大勢の生徒が大きな円を描くように集まっていました。
その円の中心に、真っ青な導師服に身を包む、賢者セラウィク=セレトゥイテニス様がいます。
舌を噛んじゃいそうな名前ですね。
身長は私の想像よりも高く180cmくらいはありそう。
それに三十二歳の男性と聞いていましたが、そうは見えないくらいに若々しく丸顔で愛嬌のある感じです。
いま彼は、短めの紫色の髪を風に揺らしながら先生たちと会話を行っています。
時折、自身の脇に浮かぶ魔道具である透明な水晶へ紅紫の瞳を向けながら、先生と模擬戦の際の結界の話をしているようです。
私は彼を獲物を見る猫の目で睨みつけます。
「フフフ、あの人が私を退学から救う生贄ですね……」
「生贄って。ミコン、見事くじ引きで模擬戦の枠を勝ち取ったのはいいけど、何かセラウィク様に結果をお渡しできるような対策は講じてるの?」
隣に立つレンちゃんが問い掛けてきました。
ですので、堂々と胸を張り私は答えを返します。
「もちろんです! ジャーン、おばあちゃんのひみつど~ぐ~」
私は間延びする特徴的な猫声を出しながら、おばあちゃんの道具を見せつけます。
「おばあちゃん秘蔵の杖に、秘蔵の指輪に、秘蔵の五芒星のアクセです。全て青色に統一された、必殺の三種の神器! これで、賢者様もいちころです!」
「いやだから……ま、いっか。よくわからないけど、そんなに凄い道具なんだ?」
「はい! おばあちゃんは最高の錬金術士にして魔法使いですから。この道具を使えば、今の私では到底不可能な、禁忌級の超々々極大破壊呪文が使えるはずです!」
「随分と自信ありげだけど、そんな危険な魔法使っても大丈夫?」
この問いに、尻尾で?の形を表しながら声を返します。
「さあ~? 話で聞いたことがあるだけ実際使ったことないので何とも。なにせ、村では許可なしに使っちゃダメと言われてる魔法ですし」
「ええ!?」
「でも、相手は世界最高の魔法使いの賢者様。だからたぶん、正面から食らっても大丈夫でしょ」
「いい加減だなぁ」
「それよりも、おばあちゃんの道具類を勝手に持ち出してきたことがバレたら殺される……そっちの方が心配です」
「勝手にって。凄くいけないことなんじゃ……?」
「はい。でも……もう、過ぎ去ったことです。後悔しても仕方ありません!」
「いや、杖を持つ手が震えているけど?」
その通り、おばあちゃんにバレた時のことを考えると恐怖で体の震えが止まりません。
ですが、ここはぷにぷに村から遠く離れた『アルナイル王国』の魔導学園都市アダラ。
バレたところで、怒られるようなことはありません。
……が、里帰りのことを考えると遺伝子に刻まれてた恐怖が肌を震えさせます。
そこに、くそうざったい笑い声が降ってきました。
そのせいで、恐怖に震えていた肌に鳥肌が浮かびます。
「お~ほっほっほ、みっともない。田舎の野良猫が哀れにも緊張で震えているようですわね」
「この、腐れた豆が糸引くように粘っこい笑い声は! ネティア=ミア=シャンプレイン!!」
きったない笑い声が響いた方へ振り返ります。
そこにいたのは、穢れた心の色模様を表した真っ黒なドレスに身を包む、金髪のロングヘアの女。
背は私よりちょっと高いくらいで、目は人の生き血を吸ったような赤色。
赤の瞳と黒の服のため、見た目はまるで吸血鬼みたい。
この吸血鬼はレンちゃんと同じ四大貴族の一人で、魔法の大家として有名なシャンプレイン家の長女。
「そして、貴族意識が高くて庶民を差別するう〇こな女。際立った特徴のないテンプレートな嫌味なお嬢様。そんな設定のくせにお胸は寂しい。それでも顔はお嬢様っぽく……まぁ、そこそこ? だけど、性格が悪いから男性が寄り付かない。これでは一生独り身決定ですね。そう、寂しい老後が約束された――」
「そこぉ! 声に出てますわよ!!」
「ええ、わざと出してますからね」
「ふん、相変わらず品性下劣だこと。これだから礼儀知らずの庶民は」
「はんっ、何が礼儀ですか? 人様に礼儀を問うなら自分こそ学園指定の学生服を着たらどうです? わがまま言って、毒毒ムカデの繭みたいな服を着てるくせに」
「この服はあの名高いラクマルティア製のドレス型魔導服ですわよ! そう、このドレスは漆黒の闇夜。そこに浮かぶ美しき月の女神を表したこの私、ねてぃ――」
「あ、はい。説明はいらないです」
「このっ」
「それで、何の用ですか? 新聞なら間に合ってますよ」
こう、言葉を返すとネティアの周りにいた取り巻きが囀りを始めました。
「ちょっと、ネティア様になんて言い草なの!?」
「そうよ、庶民の分際で!」
「ほんっと、田舎娘って礼儀知らずよね~」
「うるさいですよ、古臭いテンプレ取り巻きABC」
「「「誰がABCよ!!」」」
「それじゃ、甲乙丙」
「「「もっと駄目!!」」」
声をそろえて甲高い声を上げる三人娘。
彼女たちはネティアの忠実なる僕。
三人を相手にしても埒が明かないのでネティアに話しかけます。
「改めて尋ねますけど、何の用ですか?」
「ふんっ、ミコン。あなた、運良くくじ引きで模擬戦の代表に選ばれたそうですね」
「ええ、そうですけど、何か?」
「本当に運なのかしら? どうせ、不正でも行ったんでしょう。まったく庶民という存在は悪賢いですわね」
「…………」
「あら、言い返さないの? いつものあなたなら間髪入れず噛みつくはずなのに……まさか、あなた! 本当に!?」
「な、何を馬鹿なことを!! 下らない妄想を語るものだから呆れて声が止まっただけです」
私はレモンイエローの瞳を明後日の方向に向けて軽く口笛を吹きます。
それをネティアは深紅の瞳でジトリと睨みつけるように観察しています。
何とか話題をずらさないと。
そう思った矢先、レンちゃんが話題を変える助け舟を出してくれました。
「相変わらずミコンに辛辣だね、ネティア」
「レンさんこそ、こんな下劣な庶民といつまで一緒にいるつもりですか? 早く部屋を変えていただくよう、先生方に申し出ては?」
「ネティア、ミコンは私の大切な友人だ。これ以上の侮辱は許さないよ」
レンちゃんは怒気の籠る鋭い眼光をエメラルド色の瞳に宿し、ネティアを睨みつけます。
その怒りの表情は恐ろしくも、他者を魅了する美を宿すもの。
取り巻きABCはその美に見惚れてしまい、息を止めてレンちゃんを見つめています。
だけど、ネティアは違います。
鋭い光を柔らかく受け流し、さらに侮蔑を繰り出します。
「友人ねぇ……貴族と庶民の間にそのようなもの存在するわけがありませんわ」
「実際にここにある」
「それはあなたが、ミコンを愛玩動物のように見ているだけなのでは?」
「ネティア!」
レンちゃんの怒声。これには美に囚われていたはずのABCも身を竦めました。
でもやはり、同じ大貴族であるネティアには通じません。
むしろ、余裕の笑みを浮かべてこう返します。
「ふふ、庶民なんてものは貴族の下で盲目に従うべき存在です。そうだというのに、アトリア学園は庶民を受け入れるなんて。庶民に学など無用の長物。そのような者たちと共に同じ学び舎で息を吸い、机を並べるなど。吐き気を催す毎日が続き息苦しいですわね」
「どうやら、君とは分かり合えないようだ」
「そうは思いませんわ」
「なんだって?」
「あなたは貴族。いずれ、庶民との違いを知り、私の言葉に理解を示すようになりますわ」
そう言って、ネティアは口角の端を醜くねじ上げました。
負けじとレンちゃんは言葉を重ねようとしましたが、それを私が割って入ります。
「いや、一生理解なんて――」
「レンちゃん、もうやめましょう。貴族の肩書きだけが頼りの非モテ系女子には理解できないでしょうから」
「誰が非モテ系ですか! サロンでは多くの男性から――」
「それはネティアの魅力に惹かれてですか? それとも、四大名門シャンプレインの名に惹かれてですか?」
「――っ!? 両方よ……」
「フフ、思ったよりタフですね。で、用がないならそろそろどこかに行ってもらえますか? 庶民の私と話していると吐き気が催すんでしょ。そうだ、我慢できないなら盛大にぶちまけたらどうです? 貴族様は美味しいものを食べてるから芝生の栄養になるでしょうし」
「なんて下品な。ですが、そうですわね。これ以上ここに居たら体調を崩して模擬戦でセラウィク様に力を見せつけられませんから」
ネティアは踵を返して、去っていきます。
ですが性根の腐った吸血鬼は捨て台詞を忘れません。
「なんであれ、あなたも模擬戦に参加されるのでしょう。たしか、花形となる私の後に。成績下位のあなたがセラウィク様を失望させるところを、じっくりと拝見させていただくとしますわ。ふふふ」
彼女の笑い声の余韻に交わり、取り巻きABCが私に何かしらの嫌味を言って立ち去っていきました。
ま、三人娘の声など文字に起こすほどでもないのでどうでもいいですけど。
私は穢れた瞳を浄化するために、天使のように美しいレンちゃんの姿をすっぽり取り入れます。
「同じ貴族なのにあそこまで違うものなんですね」
「シャンプレイン家は他の貴族と比べその家柄も古く、家名と血筋に強い誇りを持っているからね」
「でも、レンちゃんのところだって」
「バルカ家は剣士の家柄。そのため、学問を修めて王宮に仕えることの多いシャンプレイン家とは違い、多くの兵士と過ごすことが多い。だから、民衆との距離が近く、理解も深いんだよ」
「なるほど、ネティアは井の中の蛙というわけですね。せいぜい、貴族の名に縋ってぴょこぴょこ跳ねてればいいと思います」
「ふふふ。だけど、魔法使いとしての腕はたしかだよ。魔導学の学年成績一位は本物。彼女以上にアピールする自信はあるかい?」
「もちろん! 必ずや、ネティアもろとも賢者様を消し去って見せます!」
「いやだから…………うん、頑張ってね」
学園には魔法の練習や運動などが行えるでっかい広場があります。
広場は土が剝き出しの場所と、芝生の生えた場所の二種類。
今日は芝生の生えた広場で賢者様と魔導生による模擬戦が行われます。
すでに、大勢の生徒が大きな円を描くように集まっていました。
その円の中心に、真っ青な導師服に身を包む、賢者セラウィク=セレトゥイテニス様がいます。
舌を噛んじゃいそうな名前ですね。
身長は私の想像よりも高く180cmくらいはありそう。
それに三十二歳の男性と聞いていましたが、そうは見えないくらいに若々しく丸顔で愛嬌のある感じです。
いま彼は、短めの紫色の髪を風に揺らしながら先生たちと会話を行っています。
時折、自身の脇に浮かぶ魔道具である透明な水晶へ紅紫の瞳を向けながら、先生と模擬戦の際の結界の話をしているようです。
私は彼を獲物を見る猫の目で睨みつけます。
「フフフ、あの人が私を退学から救う生贄ですね……」
「生贄って。ミコン、見事くじ引きで模擬戦の枠を勝ち取ったのはいいけど、何かセラウィク様に結果をお渡しできるような対策は講じてるの?」
隣に立つレンちゃんが問い掛けてきました。
ですので、堂々と胸を張り私は答えを返します。
「もちろんです! ジャーン、おばあちゃんのひみつど~ぐ~」
私は間延びする特徴的な猫声を出しながら、おばあちゃんの道具を見せつけます。
「おばあちゃん秘蔵の杖に、秘蔵の指輪に、秘蔵の五芒星のアクセです。全て青色に統一された、必殺の三種の神器! これで、賢者様もいちころです!」
「いやだから……ま、いっか。よくわからないけど、そんなに凄い道具なんだ?」
「はい! おばあちゃんは最高の錬金術士にして魔法使いですから。この道具を使えば、今の私では到底不可能な、禁忌級の超々々極大破壊呪文が使えるはずです!」
「随分と自信ありげだけど、そんな危険な魔法使っても大丈夫?」
この問いに、尻尾で?の形を表しながら声を返します。
「さあ~? 話で聞いたことがあるだけ実際使ったことないので何とも。なにせ、村では許可なしに使っちゃダメと言われてる魔法ですし」
「ええ!?」
「でも、相手は世界最高の魔法使いの賢者様。だからたぶん、正面から食らっても大丈夫でしょ」
「いい加減だなぁ」
「それよりも、おばあちゃんの道具類を勝手に持ち出してきたことがバレたら殺される……そっちの方が心配です」
「勝手にって。凄くいけないことなんじゃ……?」
「はい。でも……もう、過ぎ去ったことです。後悔しても仕方ありません!」
「いや、杖を持つ手が震えているけど?」
その通り、おばあちゃんにバレた時のことを考えると恐怖で体の震えが止まりません。
ですが、ここはぷにぷに村から遠く離れた『アルナイル王国』の魔導学園都市アダラ。
バレたところで、怒られるようなことはありません。
……が、里帰りのことを考えると遺伝子に刻まれてた恐怖が肌を震えさせます。
そこに、くそうざったい笑い声が降ってきました。
そのせいで、恐怖に震えていた肌に鳥肌が浮かびます。
「お~ほっほっほ、みっともない。田舎の野良猫が哀れにも緊張で震えているようですわね」
「この、腐れた豆が糸引くように粘っこい笑い声は! ネティア=ミア=シャンプレイン!!」
きったない笑い声が響いた方へ振り返ります。
そこにいたのは、穢れた心の色模様を表した真っ黒なドレスに身を包む、金髪のロングヘアの女。
背は私よりちょっと高いくらいで、目は人の生き血を吸ったような赤色。
赤の瞳と黒の服のため、見た目はまるで吸血鬼みたい。
この吸血鬼はレンちゃんと同じ四大貴族の一人で、魔法の大家として有名なシャンプレイン家の長女。
「そして、貴族意識が高くて庶民を差別するう〇こな女。際立った特徴のないテンプレートな嫌味なお嬢様。そんな設定のくせにお胸は寂しい。それでも顔はお嬢様っぽく……まぁ、そこそこ? だけど、性格が悪いから男性が寄り付かない。これでは一生独り身決定ですね。そう、寂しい老後が約束された――」
「そこぉ! 声に出てますわよ!!」
「ええ、わざと出してますからね」
「ふん、相変わらず品性下劣だこと。これだから礼儀知らずの庶民は」
「はんっ、何が礼儀ですか? 人様に礼儀を問うなら自分こそ学園指定の学生服を着たらどうです? わがまま言って、毒毒ムカデの繭みたいな服を着てるくせに」
「この服はあの名高いラクマルティア製のドレス型魔導服ですわよ! そう、このドレスは漆黒の闇夜。そこに浮かぶ美しき月の女神を表したこの私、ねてぃ――」
「あ、はい。説明はいらないです」
「このっ」
「それで、何の用ですか? 新聞なら間に合ってますよ」
こう、言葉を返すとネティアの周りにいた取り巻きが囀りを始めました。
「ちょっと、ネティア様になんて言い草なの!?」
「そうよ、庶民の分際で!」
「ほんっと、田舎娘って礼儀知らずよね~」
「うるさいですよ、古臭いテンプレ取り巻きABC」
「「「誰がABCよ!!」」」
「それじゃ、甲乙丙」
「「「もっと駄目!!」」」
声をそろえて甲高い声を上げる三人娘。
彼女たちはネティアの忠実なる僕。
三人を相手にしても埒が明かないのでネティアに話しかけます。
「改めて尋ねますけど、何の用ですか?」
「ふんっ、ミコン。あなた、運良くくじ引きで模擬戦の代表に選ばれたそうですね」
「ええ、そうですけど、何か?」
「本当に運なのかしら? どうせ、不正でも行ったんでしょう。まったく庶民という存在は悪賢いですわね」
「…………」
「あら、言い返さないの? いつものあなたなら間髪入れず噛みつくはずなのに……まさか、あなた! 本当に!?」
「な、何を馬鹿なことを!! 下らない妄想を語るものだから呆れて声が止まっただけです」
私はレモンイエローの瞳を明後日の方向に向けて軽く口笛を吹きます。
それをネティアは深紅の瞳でジトリと睨みつけるように観察しています。
何とか話題をずらさないと。
そう思った矢先、レンちゃんが話題を変える助け舟を出してくれました。
「相変わらずミコンに辛辣だね、ネティア」
「レンさんこそ、こんな下劣な庶民といつまで一緒にいるつもりですか? 早く部屋を変えていただくよう、先生方に申し出ては?」
「ネティア、ミコンは私の大切な友人だ。これ以上の侮辱は許さないよ」
レンちゃんは怒気の籠る鋭い眼光をエメラルド色の瞳に宿し、ネティアを睨みつけます。
その怒りの表情は恐ろしくも、他者を魅了する美を宿すもの。
取り巻きABCはその美に見惚れてしまい、息を止めてレンちゃんを見つめています。
だけど、ネティアは違います。
鋭い光を柔らかく受け流し、さらに侮蔑を繰り出します。
「友人ねぇ……貴族と庶民の間にそのようなもの存在するわけがありませんわ」
「実際にここにある」
「それはあなたが、ミコンを愛玩動物のように見ているだけなのでは?」
「ネティア!」
レンちゃんの怒声。これには美に囚われていたはずのABCも身を竦めました。
でもやはり、同じ大貴族であるネティアには通じません。
むしろ、余裕の笑みを浮かべてこう返します。
「ふふ、庶民なんてものは貴族の下で盲目に従うべき存在です。そうだというのに、アトリア学園は庶民を受け入れるなんて。庶民に学など無用の長物。そのような者たちと共に同じ学び舎で息を吸い、机を並べるなど。吐き気を催す毎日が続き息苦しいですわね」
「どうやら、君とは分かり合えないようだ」
「そうは思いませんわ」
「なんだって?」
「あなたは貴族。いずれ、庶民との違いを知り、私の言葉に理解を示すようになりますわ」
そう言って、ネティアは口角の端を醜くねじ上げました。
負けじとレンちゃんは言葉を重ねようとしましたが、それを私が割って入ります。
「いや、一生理解なんて――」
「レンちゃん、もうやめましょう。貴族の肩書きだけが頼りの非モテ系女子には理解できないでしょうから」
「誰が非モテ系ですか! サロンでは多くの男性から――」
「それはネティアの魅力に惹かれてですか? それとも、四大名門シャンプレインの名に惹かれてですか?」
「――っ!? 両方よ……」
「フフ、思ったよりタフですね。で、用がないならそろそろどこかに行ってもらえますか? 庶民の私と話していると吐き気が催すんでしょ。そうだ、我慢できないなら盛大にぶちまけたらどうです? 貴族様は美味しいものを食べてるから芝生の栄養になるでしょうし」
「なんて下品な。ですが、そうですわね。これ以上ここに居たら体調を崩して模擬戦でセラウィク様に力を見せつけられませんから」
ネティアは踵を返して、去っていきます。
ですが性根の腐った吸血鬼は捨て台詞を忘れません。
「なんであれ、あなたも模擬戦に参加されるのでしょう。たしか、花形となる私の後に。成績下位のあなたがセラウィク様を失望させるところを、じっくりと拝見させていただくとしますわ。ふふふ」
彼女の笑い声の余韻に交わり、取り巻きABCが私に何かしらの嫌味を言って立ち去っていきました。
ま、三人娘の声など文字に起こすほどでもないのでどうでもいいですけど。
私は穢れた瞳を浄化するために、天使のように美しいレンちゃんの姿をすっぽり取り入れます。
「同じ貴族なのにあそこまで違うものなんですね」
「シャンプレイン家は他の貴族と比べその家柄も古く、家名と血筋に強い誇りを持っているからね」
「でも、レンちゃんのところだって」
「バルカ家は剣士の家柄。そのため、学問を修めて王宮に仕えることの多いシャンプレイン家とは違い、多くの兵士と過ごすことが多い。だから、民衆との距離が近く、理解も深いんだよ」
「なるほど、ネティアは井の中の蛙というわけですね。せいぜい、貴族の名に縋ってぴょこぴょこ跳ねてればいいと思います」
「ふふふ。だけど、魔法使いとしての腕はたしかだよ。魔導学の学年成績一位は本物。彼女以上にアピールする自信はあるかい?」
「もちろん! 必ずや、ネティアもろとも賢者様を消し去って見せます!」
「いやだから…………うん、頑張ってね」
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる