32 / 45
第32話 無謀な行動に移動
しおりを挟む
――小部屋・台座前
台座の上には、先史文明の文字が刻まれたガラス片と腕輪。
腕輪は装飾のない、ただの金属のわっか。
それが無造作に置かれてある。
俺が腕輪を手に取ると、レックスが甲高い声を上げた。
「地味な腕だなぁ」
「ひゃっ!? おま、不用意に触るんじゃねぇよ!!」
「なんで?」
「なんでってなぁ、トラップでもあったらどうすんだ!?」
「ああ、ダンジョン探索だとよくあるやつだね。お宝を手に入れると天井が降りてきたり、壁から水が出てきてたり」
「わかってんなら元に戻せ!」
「いや、大丈夫だろ。なんか起きるなら今ので起きてるだろうし。それにしてもこの腕輪、なんだろ? おんや、動く箇所がある?」
継ぎ目もない腕輪だったが、一部捻ると動く箇所があった。
そこを動かしてみると留め金みたいなものが外れて、わっかの一部に空白の部分が生まれた。
「ふ~ん、この状態で手首に嵌めるのかな? カチッとな」
「だ~か~ら~、不用意に扱うんじゃねえって言ってるだろうが!!」
「うっさいな、大丈夫だって! 見ての通り――――いつっ!?」
「おい、アルムス?」
「腕輪の内側、嵌めた部分から針みたいのが飛び出して。がぁっ!?」
「お兄ちゃん!?」
「見て、アルムスの手首を!?」
腕輪の部分から血が滴り落ちて、その血がまるで蛇のように手首にまとわりつく。
「なん、だ、これ?」
「だから言わんこっちゃねぇ! 今、こじ開けて外してやるからな!!」
レックスが腰元につけていたナイフを取り出す姿が見える。
「レ、クス――」
ここで、俺の意識は完全に消え失せた……。
――――台座前
アルムスは気を失い、台座の上に前のめりに倒れ込んだ。
それをオリカとノヴァが支えて、上体を起こし、レックスがナイフを使い腕輪を外そうと試みた――その時、小部屋内に奇妙な声が走る。
――キリヤヴァリヤ、アシツヴァナ、ラディ、アヴァタ、ウトサハ、カランナ――
ノヴァが周囲を警戒しつつ疑問を口にし、その答えをレックスが示す。
「なに、この声? いったいどこから?」
「小部屋の天井からだ。この言葉は先史文明で使われていた言語。中身はよくわからんが、『半端に終えたなんかをもう一回やる』みたいを言ってやがる! にしても、この腕輪、全然外れる気配がないぞ!!」
――アヴァカサヤ、ヴァサ、ダマンナ。カラナヤ、キリマタ、スダナム、ヴィマ――
新たな声を聞いて、オリカがレックスに尋ねる。
「今のは?」
「空間がどうとか移動がどうとか。くっそ、面倒くせーな。なにがしゃべってるのか知らねぇが、俺たちの言葉を使いやがれ!!」
『了解です』
天井からレックスたちが使っている言語が響く。
三人は驚きのあまり、一瞬思考を止めたが、すぐにレックスが言葉を返した。
「よくわからんが言葉が通じるなら話が早い。いったい何をしようとしていやがる? この腕輪はどうやったら外れる?」
「中断されていたプロセスを再起動しています。腕輪はプロセス完了まで外せません。エネルギーチャージ率75%」
「そのプロセスってのはなんだ!?」
「かつて、目的達成のために情報交換および助言を行った世界への転移です。79%」
「は?」
ノヴァが激情を込めて天井に向かって叫ぶ。
「そんな話はどうでもいい!! お兄ちゃんは無事なの。元に戻せないの!?」
「生体の維持に支障はありません。ですが、個としての意識回復はプロセス終了まで不可能です。85%」
「どうして!?」
「一致率63%のため、最低限の権限しか付与されていないからです。87%」
「一致? 何と一致しているの?」
「アルムス」
「え?」
「鍵となっている素体はアルムスとの一致率が63%のため、情報の開示及び権限が最低限なのです。93%」
「アルムス……お兄ちゃんの名前? いったいどういうこと!? そのアルムスと言うのは、お兄ちゃんの名前と何か関係あるの?」
「質問の意味が理解できません」
「意味ができないってなによ! ふざけたことを――」
「落ち着いてノヴァちゃん! ねぇ、あなた、私たちの知るアルムスとあなたの言うアルムスに一体どのような関係があるの?」
「同一素体です」
「もう、それじゃ意味が全然……わかった、こう尋ねるわ。アルムスとは、何?」
「それは――デヴィヤネ・ソルダドゥヴァです」
「デヴィヤネ……?」
「エネルギーチャージ率100%。空間の閉鎖を開始。移動に備えてください」
「移動って! 待って、え~と、デヴィヤネ・ソルダドゥヴァとは何?」
「神兵です。移動開始」
小部屋に響いていた声が閉じると、レックス・ノヴァ・オリカは体に浮遊感を覚える。次に視界が揺らぎ、それが落ち着くと、彼らは皆、寒風吹き荒ぶ、真っ白な世界に立っていた。
台座の上には、先史文明の文字が刻まれたガラス片と腕輪。
腕輪は装飾のない、ただの金属のわっか。
それが無造作に置かれてある。
俺が腕輪を手に取ると、レックスが甲高い声を上げた。
「地味な腕だなぁ」
「ひゃっ!? おま、不用意に触るんじゃねぇよ!!」
「なんで?」
「なんでってなぁ、トラップでもあったらどうすんだ!?」
「ああ、ダンジョン探索だとよくあるやつだね。お宝を手に入れると天井が降りてきたり、壁から水が出てきてたり」
「わかってんなら元に戻せ!」
「いや、大丈夫だろ。なんか起きるなら今ので起きてるだろうし。それにしてもこの腕輪、なんだろ? おんや、動く箇所がある?」
継ぎ目もない腕輪だったが、一部捻ると動く箇所があった。
そこを動かしてみると留め金みたいなものが外れて、わっかの一部に空白の部分が生まれた。
「ふ~ん、この状態で手首に嵌めるのかな? カチッとな」
「だ~か~ら~、不用意に扱うんじゃねえって言ってるだろうが!!」
「うっさいな、大丈夫だって! 見ての通り――――いつっ!?」
「おい、アルムス?」
「腕輪の内側、嵌めた部分から針みたいのが飛び出して。がぁっ!?」
「お兄ちゃん!?」
「見て、アルムスの手首を!?」
腕輪の部分から血が滴り落ちて、その血がまるで蛇のように手首にまとわりつく。
「なん、だ、これ?」
「だから言わんこっちゃねぇ! 今、こじ開けて外してやるからな!!」
レックスが腰元につけていたナイフを取り出す姿が見える。
「レ、クス――」
ここで、俺の意識は完全に消え失せた……。
――――台座前
アルムスは気を失い、台座の上に前のめりに倒れ込んだ。
それをオリカとノヴァが支えて、上体を起こし、レックスがナイフを使い腕輪を外そうと試みた――その時、小部屋内に奇妙な声が走る。
――キリヤヴァリヤ、アシツヴァナ、ラディ、アヴァタ、ウトサハ、カランナ――
ノヴァが周囲を警戒しつつ疑問を口にし、その答えをレックスが示す。
「なに、この声? いったいどこから?」
「小部屋の天井からだ。この言葉は先史文明で使われていた言語。中身はよくわからんが、『半端に終えたなんかをもう一回やる』みたいを言ってやがる! にしても、この腕輪、全然外れる気配がないぞ!!」
――アヴァカサヤ、ヴァサ、ダマンナ。カラナヤ、キリマタ、スダナム、ヴィマ――
新たな声を聞いて、オリカがレックスに尋ねる。
「今のは?」
「空間がどうとか移動がどうとか。くっそ、面倒くせーな。なにがしゃべってるのか知らねぇが、俺たちの言葉を使いやがれ!!」
『了解です』
天井からレックスたちが使っている言語が響く。
三人は驚きのあまり、一瞬思考を止めたが、すぐにレックスが言葉を返した。
「よくわからんが言葉が通じるなら話が早い。いったい何をしようとしていやがる? この腕輪はどうやったら外れる?」
「中断されていたプロセスを再起動しています。腕輪はプロセス完了まで外せません。エネルギーチャージ率75%」
「そのプロセスってのはなんだ!?」
「かつて、目的達成のために情報交換および助言を行った世界への転移です。79%」
「は?」
ノヴァが激情を込めて天井に向かって叫ぶ。
「そんな話はどうでもいい!! お兄ちゃんは無事なの。元に戻せないの!?」
「生体の維持に支障はありません。ですが、個としての意識回復はプロセス終了まで不可能です。85%」
「どうして!?」
「一致率63%のため、最低限の権限しか付与されていないからです。87%」
「一致? 何と一致しているの?」
「アルムス」
「え?」
「鍵となっている素体はアルムスとの一致率が63%のため、情報の開示及び権限が最低限なのです。93%」
「アルムス……お兄ちゃんの名前? いったいどういうこと!? そのアルムスと言うのは、お兄ちゃんの名前と何か関係あるの?」
「質問の意味が理解できません」
「意味ができないってなによ! ふざけたことを――」
「落ち着いてノヴァちゃん! ねぇ、あなた、私たちの知るアルムスとあなたの言うアルムスに一体どのような関係があるの?」
「同一素体です」
「もう、それじゃ意味が全然……わかった、こう尋ねるわ。アルムスとは、何?」
「それは――デヴィヤネ・ソルダドゥヴァです」
「デヴィヤネ……?」
「エネルギーチャージ率100%。空間の閉鎖を開始。移動に備えてください」
「移動って! 待って、え~と、デヴィヤネ・ソルダドゥヴァとは何?」
「神兵です。移動開始」
小部屋に響いていた声が閉じると、レックス・ノヴァ・オリカは体に浮遊感を覚える。次に視界が揺らぎ、それが落ち着くと、彼らは皆、寒風吹き荒ぶ、真っ白な世界に立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる