光の方を向いて

白石 幸知

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プロローグ 嘘の、起点。

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 それは、俺が中学に入る直前の、冬のある一日だった。晩ご飯を食べるのに、リビングに向かい、たまたまついていたテレビからそのニュースは流れてきた。
「続いてのニュースです。本日、札幌市四葉区で、小学生の男の子と女の子が車に轢かれる事故が発生しました。二人とも救急車により病院に搬送されましたが、女の子はまもなく死亡が確認されました。また、男の子は頭を強く打ち、重体です。警察は車を運転していた──」

 その瞬間、チャンネルが自動で切り替わった。見たいバラエティ番組があり、それの視聴予約を入れていたからだろう。一緒にテレビを見ていた俺の母親は、
「あらあら……かわいそうに、恵一も車には気を付けるのよ。冬道は危ないから」
 と俺に注意を促す。

「うん、わかってるよ」
 そのときの俺は、今のニュースを気にも留めなかった。そのときの俺は、目前に控えた中学入学で頭がいっぱいになっていたから。

 入学してから、ずっと席に空きがあるなとは思っていた。入学直後の座席は、出席番号順になる。俺の前の座席に座るはずの生徒が来ないと、ずっとそこは空いたままだった。
 ようやくその空席が埋まったのは、ゴールデンウィークも明けた五月半ばの頃だった。

 俺の前の座席の、高崎陽平は五月の半ばになってようやく、中学校に初の登校をした。当然そのころにはクラス内の人間関係は出来上がっていて、彼はその完成した教室の雰囲気の余りものになりかけていた。
 俺は、そんな彼に声を掛けた。何故かって?

 ……自分の犯した「罪」を、償うために。

 もしこれが物語なら、主人公は俺ではない。こんな薄汚れた人間は、主人公には相応しくない。

 この物語は、嘘と優しさが交差する物語である。
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