僕の周りの人達には秘密がある

第7章 時の思い出

従者の想い

｢気を…バ…も…。お…ない。｣
その影は、何かを言っているようだった。でも僕にはその程度しか聞き取ることが出来なかった。視界が歪んでいる。歪む視界の先には、影が2つあった。




｢…朝か…。｣
僕は病室のベットで伸びをして、カーテンを開けた。
｢退院が今日だったかな？｣
今日は退院の日。未咲紀が告白した5日後である。










｢未咲紀ちゃん。1度帰りなさい。流石に2日も付きっきりじゃあ倒れちゃうわよ？｣
僕の病室には、未咲紀と母さんがいた。
｢でも、霊也が助けてくれなかったら私…だから傍にいたいんです。罪滅ぼし…じゃないけど…。なんて言えば…。｣
未咲紀はどうしてもここにいたいようだ。でも、
｢未咲紀。1回帰って。未咲紀が倒れたらそれこそ本末転倒だ。僕の博打が無駄になってしまう。だからさ、1回家に帰ってゆっくりと休んで。これは僕のお願い、そして従者の願い。きっと館のメイドさん達もお前のことが1番心配なんだ。みんなの願いも背負った想いが今の僕の言葉だ。…最高の僕の主は聞いてくれるか？｣
僕がそう言うと、
｢…そうだね。館にはメイド達を待たせてるし…。せっかく霊也が助けてくれたのに疲労で倒れて死んだら元も子も無いもんね。…わかった。一回帰るわ。また明日来るわ。｣
未咲紀はニコッと笑って病室を後にした。
｢…にしても、｣
母さんが椅子に座り僕を見て言った。
｢霊也は本当に不幸体質ね。事故とか事件に巻き込まれ易すぎるわ。｣
そう、僕は不幸体質で、未咲紀や隼歌達と会う前からよく事故に巻き込まれていた。その度に入院している。
｢でもそれでも生きてるのは本当に何なのかしらね。｣
それは僕も疑問に思ったことがある。何十、何百もの事件事故に巻き込まれて毎回致死量の血を流したり怪我をしたりするのに死なないのだ。
｢…神様はいるのかもね。｣
僕がふと口にすると、母さんはニヤッと笑って、
｢…確かに、霊也を見ていると本当に神様はいるのかもと思うわね。｣

これが告白から2日後のことである。








｢霊也！迎えに来たわよ！｣
僕が身支度を整えていると、未咲紀が病室に入ってきた。
｢未咲紀か。ありがとう。そろそろ準備できるから外で待ってて。｣
僕がそう言うと、
｢わかったわ｣
と言って未咲紀は部屋を出た。


病院から出た僕は未咲紀と一緒に歩いていた。
｢…霊也？｣
未咲紀は僕の腕を掴んで言った。
｢…返答は…どうなの？｣
返答…告白か。
｢…悪いが…〝今は〟僕が未咲紀を恋愛対象として見ることが出来そうにないんだ。｣
｢…そっか。｣
あからさまにテンションが落ちる未咲紀を横目に、僕は言った。
｢主様と付き合うなんて図々しいにも程があるだろ？未咲紀を僕は主と思ってる。それ以上でも…｣
僕は一瞬言葉が詰まった。未咲紀は不思議そうにこっちを見ていた。
｢…それ以上かもしれない。それ以下なんてことは無い…。僕も未咲紀が好きだからね。｣
その言葉を聞いた未咲紀は顔が赤くなった。あからさまに照れている様子を見て、可愛いと思わずにはいられなかった。
｢…その言葉を聞いて自信がついたわ。主様だろうがなんだろうが霊也に相応しい女になってみせるわ！そうすればきっと、｣




｢振り向いてくれるでしょ？｣